雑誌
朝日新聞が騙された無資格医師の
「呆れた履歴」

手に負えぬ患者には「救急車を呼べ」。
自称東大卒の素人が助成金目当てで医療行為を
石巻市社会福祉協議会に提出された「医師国家資格認定証」とするカード。コピーすると「厚生労働省」の透かし文字が浮き上がる巧妙なつくり

「あの男はいかにも怪しいと思ってましたよ。『自分は東大卒だ』なんて自慢してたけど、見なれない症状の患者が来ると、すぐパソコンに向かって何やら調べ始めるんです。で、手に負えないと判断したら、周りの人に『ただちに救急車を呼んでくれ』と言って、あとは何も説明しないんです」(ボランティアの男性)

 無償で医療行為に励む〝被災地のブラックジャック〟は、実は単なる銭ゲバのとんだ食わせ者だった。

 ことの発端は8月10日、朝日新聞朝刊の「ひと」欄で「被災地で『ボランティアの専属医』を務める米田きよしさん」なる男性が紹介されたことだ。内容を要約すると、男性はボランティア参加者が生活する宮城県石巻市内のテント村に3月中旬から住み着き、以来250人以上を診察。カナダの大学病院に所属する小児救命救急医で「国境なき医師団」にも所属経験があり、派遣医としてルワンダで活躍。休暇で帰国中に東日本大震災に遭遇し、被災地入りしたという。

 結果から言うと、朝日はこの男性が記者に語った嘘八百を鵜呑みにし、確認不十分のまま記事を掲載していた。

 その2日後の12日付の紙面で朝日は、米田きよしと名乗る男性は医師免許を持っていない無資格の医師だったとして「おわび記事」を掲載。職歴にも、複数の虚偽があったことを認めている。

「男性は6月に石巻市社会福祉協議会へ『医師国家資格認定証』のコピー(上)を提出していますが、そんな認定証はそもそも存在しないのです。日本国内には医師であることを証明する書類は厚生労働省が発行する『医師免許証』しかありません。彼が提出した〝でっちあげ〟の認定証は、大阪市の住民基本台帳カードを変造したものでした。そうとは知らない自治体は、彼を医師と信じてマスコミに紹介していた。朝日もまんまと騙されたわけです」(全国紙社会部記者)

 朝日だけではない。4月には『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系)が〝善意のボランティア医師〟として男性へのインタビューを放送。7月には『スッキリ!!』(同)にも登場し、「ボランティアの参加者は、どうしても自分の容量を超えて頑張ってしまうので注意が必要」などと、ぬけぬけと語っていたのだ。

ボランティアの女性たちと(6月13日撮影。石巻市復興を考える市民の会提供)

 このように自治体やメディアを翻弄した〝ニセ医師〟だが、朝日に記事が掲載される6日前の8月4日、診療に使用していたキャンピングカーを残し、忽然と姿を消してしまった。一体「米田きよし」なる人物は何者なのか。彼をよく知る大阪市内の会社経営者が明かす。

「奴の名字は確かに米田ですが、下の名前は偽名です。現在42歳で結婚と離婚を3回ずつ繰り返しています。彼の経歴で特筆すべきは、3度目の結婚をした翌年の '06 年に詐欺容疑で滋賀県警に逮捕されていること。出会い系サイトで知り合った複数の女性に『自分はパイロットをしている。結婚を前提に交際しよう』と近づいた後に、『交通事故の弁償費用でカネが必要だ』と騙り、計420万円を詐取しています。裁判では懲役3年の実刑判決を受け、収監されました」

 逮捕直前まで住んでいたアパート(滋賀県高島市)の大家が証言する。
「旦那が逮捕された後に奥さんに聞いた話だと、彼は日本航空のバッジや給与明細まで自作して、パイロットであることを信じ込ませていたそうです」

パイロットから医師へ〝転身〟

 '09年、刑期を終えて釈放された米田は、飛田新地(大阪市)の遊郭で働いていたM子という女性と同棲を始める。いわゆる〝ヒモ〟としての生活だったが、やがて再び彼は、別の女性を相手に結婚詐欺に手を染めた。しかも今度はパイロットではなく、医師を装うのだ。

米田が寝起きして、医療行為を行っていたキャンピングカー。今は置き去りに[PHOTO]三好健志

「米田は『今は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の派遣医です』と言って、私の友人に近づきました。彼女の親にも『結婚したい』と挨拶に行っています。すっかり信用してしまった彼女は『医療行為に使うキャンピングカーの購入資金を盗まれた』という見え見えのウソに騙されて、300万円を貸してしまったんです。すると米田は、当然のごとく姿を消しました」(被害女性の友人)

 今回、米田はなぜ被災地に赴き、真似事とはいえ本当に医療行為を始めたのか。その理由もまた、やはりカネだった。

「米田は『WF(ワールドフュージョン)』なる民間ボランティア団体の代表を名乗り、M子と一緒に石巻に入りました。その目的は、公益財団法人から助成金を引き出すこと。既に7月には『日本財団』から首尾よく100万円を受領しています」(米田をよく知るボランティア関係者)

 さらに各地方の医師会などからも助成金を引き出そうと目論んだ米田だが、ここで誤算が生じた。

「8月初旬、米田は現地での女性トラブルが原因でM子と大ゲンカをしているんですが、その際にM子に暴行を加えてしまったんです。激怒した彼女は石巻署に被害届を提出。さらに米田のしてきたことの一部始終を喋ったのです。今、県警は、医師法違反容疑と詐欺容疑で米田の行方を追っています」(前出・記者)

 一部の新聞報道によると「近いうちに出頭する」と述べているという米田。これもまた騙りなのか、それともさすがに観念してお縄を頂戴するつもりなのか。

「フライデー」2011年9月2日号より

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