盛り上がるハズがない! 不人気候補者たちの「民主党世も末代表選バトル」
野田財務相、馬淵前国交相、鹿野農水相・・・
またぞろ小沢元幹事長がキングメーカー面
(左)馬淵氏は、河野太郎代議士との対談で「意欲は初当選以来ずっと持っている」。出馬条件の推薦人20人はそろうか
(右)財務官僚から声援を受ける増税派の野田氏。仙谷氏や岡田克也幹事長の後押しもあり、盤石と見られるが・・・・・・〔PHOTO〕堀田 喬 鬼怒川 毅(以下同)

「・・・・・・ホントに辞める気あるのかね。俺は、あの男が首相公邸を出て、(東京)武蔵野市の自宅に入るまで信用できん」

 永田町に蔓延するこんな疑心暗鬼。8月10日の衆院財務金融委員会で、菅直人首相(64)は、確かに「(特例公債法案など三つの法案が)成立した時には速やかに次の段階に移る準備に入らなければいけない」と口にし、さらに「党内でいえば代表選ということになるし、新しい代表が決まれば、私自身が首相として身を処すことが必要になる。そういう段階に入っていく」とも言った。

 退陣と引き替えに出した3条件のうち、最後の関門である再生可能エネルギー特別措置法案も、修正して民主・自民・公明の3党が合意している。民主党は8月28日にも代表選を行うべく調整に入った。それでも、野党が提出した内閣不信任決議案で大量の造反議員が出る可能性が高まった際、〝辞める辞める詐欺〟で乗り切ったオオカミ少年への不信感は拭えないのだ。ある現職官僚が、本誌記者に囁いた。

「今回も、小沢一郎(元幹事長)らを中心に、再度、内閣不信任案を出す動きがある。確かに菅さんが出した条件はクリアされつつあるが、注目すべきは国会日程だ。会期末が8月31日。再生エネルギー法案は26日の金曜日に成立させる予定だが、これが1日ズレたら翌週29日の月曜日まで成立しない。そうなれば、法案成立という条件が満たされず、28日に代表選ができない。事実上、国会会期中に次の総理を選ぶことが不可能になる」

 菅首相にしてみれば、法案成立をたった1日ズラすだけで居座ることができるわけだ。先ほどの現職官僚は続けた。

「菅首相は9月下旬にニューヨークで開かれる国連総会への出席を諦めていない。外務省の国連担当を呼びつけて、国連の状況をレクさせているからね」

 支持率10%台の首相が、国会中を敵に回してなお強気でいられるのは、国家のリーダーが変わる一大イベントたる代表選が、まったくと言っていいほど盛り上がらないことを見越しているからだ。だいたい、名前の挙がった議員の顔と名前が一致する国民は何割いるだろうか。

(右)おそらく最も顔と名前が一致しない鹿野氏だが、「中間派で、挙党一致体制が作りやすいのはこの人」という下馬評
(中)メディアに登場しまくり、国会で泣いた理由を釈明し始めた海江田氏。そうした女々しい態度も力不足と言われる原因
(左)野田氏が掲げた野党との連立に同調したはずの前原氏だったが、自身の出馬を問われ「まったくの白紙」と答え始めた

小沢氏の党を出る決断

「脱原発」の意思を誰かに引き継げたわけでもなく、代表選では〝蚊帳の外〟の菅首相(8月15日、千鳥ヶ淵)

 まず新聞・テレビが最有力と位置付ける野田佳彦財務相(54)だが、民主党のトップに立つ前から早々と自民・公明と大連立して、ねじれ国会を解消する意思を明らかにした。そんな彼の行動原則を決めているのは、あの巨大省庁である。

「野田さんなら、すでに消費税増税について〝洗脳済み〟ですから都合はいいですね。ただ、大震災以後、消費税アップは国民のコンセンサスが形成され、野党も反対しない状況下にあるので、実は財務省にとって、次期政権は大連立と無関係に誰が担当しても構わず、政局をただ眺めているだけなんです。勝(栄二郎)事務次官など、消費税増税ができれば、菅政権が継続しても構わないとさえ考えているようです」(ある財務省キャリア)

 下馬評で野田氏を追う馬淵澄夫前国土交通相(50)は今年1月、国交相を退任する際の会見で、「アイル・ビー・バック」と、〝ターミネーター〟の愛称どおりシュワちゃんを気取ったが、「あれって出馬表明だったんだね」と、今更ながら失笑を買っている。全国紙政治部記者が言う。

「彼は上昇志向を口にするタイプだよね。『当選回数、入閣でキャリアを積んだ。それに野党時代の質問(耐震偽装問題などで注目された)は、地元有権者とマスコミに評価されたと思っている』なんて、サラッと周囲に言えてしまう人です」

 そんな馬淵氏は政治家らしい〝外交〟もこなす。小沢系議員からなる「北辰会」の勉強会に講師として参加し、復興財源を増税に求める菅首相を批判したのだ。

「このタイミングでの増税なんてダメダメ、ダメに決まっている。国民は今、瀕死の重症患者なんです。その人たちを無理やり走らせたらどうなりますか」

国民からは不人気でもキングメーカー然として振る舞う小沢氏の権力への妄執は、今時の政治家に見られない

 拍手喝采を浴びた馬淵氏は、勉強会の後、本丸である小沢氏に面会を求めた。

「首相補佐官の退任挨拶だったとメディアに語っているが、代表選出馬の意気込みを小沢さんに伝えたようだ。小沢さんは『また、事務所に遊びに来て、原発事故の話をじっくり聞かせてくれ』とねぎらったと聞く」(全国紙政治部デスク)

 馬淵氏の件でお分かりのとおり、「菅さんでなければ、どなたでもいいんじゃないでしょうか」などと代表選に向けて枯れ気味のコメントを発した小沢氏が、またぞろキングメーカー気取りで水面下で動き始めている。小沢氏の強みは、実数は不明だが、自分の一声で150人の議員の投票行動を決めるという〝脅し〟である。

「刑事被告人ですから小沢さんは自分が出ることは考えていない。照準は来年9月です。『菅さんでなければ~』の真意は、『来年9月に素直に辞めてくれる奴であれば~』ということ。実際、傀儡(かいらい)総理を誰にするか、側近に情報をあげさせて選定中です」(前出・全国紙政治部記者)

 ボスに倣って小沢派に属する議員たちも代表選候補者のあら探しに余念がなく、彼らのこんな人物評が聞こえてくる。

「野田はダメだ。増税路線だぞ」

「海江田(万里)経済産業相も、引責辞任しないことを突っ込まれたくらいで国会で涙を見せた。総理の器ではない」

「鹿野(道彦)農水相の認知度では話にならん」

 ちなみに野田氏の掲げる大連立&増税路線が、小沢氏の主張と真っ向から対立するのは当然で、野田氏を推すのは、仙谷由人官房副長官(65)という〝反小沢〟の急先鋒だ。と言いつつ野田氏は、自身が菅首相の政策を真っ向批判した手記の載った月刊誌を小沢事務所に届けるなど、従順なフリも忘れていない。

 いずれにせよ、小沢氏の子飼いたちが己を棚に上げた人物評で盛り上がる中、小沢氏は来年9月までなどと悠長に構える気はなく、周囲にこう語っている。

「俺は民主党を出て新党を立ち上げる腹を固めている。共闘する人には、同等の政治決断をしてもらわなければならん」

 最近では、外国人からの献金問題で外相を辞任した前原誠司氏(49)まで代表選出馬を噂されている。前原氏は野田氏支持を打ち出していたはずである。

 はっきり言おう、今回、代表選に名前の挙がる面々の腹には「震災の復興にメドがつけば、野党から解散・総選挙を要求され、民主党は壊滅する。だから今のうちに・・・・・・」という、火事場泥棒めいた思いが存在する。代表選まであと1週間ほどになっても、自身の政策を声高に訴えようともせず、内輪揉めのレベルで平然としていられるわけだ。民主党代表の前に、政治家の選び直しが先決ではないか。

「フライデー」2011年9月2日号より

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