特大号スペシャル この国の宿痾を語ろう
堺屋太一×古賀茂明「官僚というもの」
マスコミをたぶらかし、国民をだます

 官僚は賢い。有能だ。だが、国民に本当のことは伝えないし、公僕意識は欠如している。彼らの優秀さは自らの利権と保身のためにのみ発揮されるのだ。どうすれば変わるのか。二人の改革派が論じた。

自分さえよければいい人たち

堺屋 日本は今、非常に深刻な事態に直面していますね。震災復興、原発事故処理、財政赤字と、どれをとってもまともに動いていない。政治も官僚も東京電力をはじめとする独占企業群も、大組織はみな崩壊している。これは偶然じゃなく、戦後組織の必然的崩壊だと思うんです。

古賀 同感です。以前から日本は危機的状況に陥っていましたが、3月11日の東日本大震災は日本崩壊のカウントダウンを一気に早めたような気がします。

堺屋 政府の取り組みで特に目に余るのが震災復興の遅れですね。16年前の阪神淡路大震災と比べて、対応が非常に稚拙です。すべてがなんとも遅い。震災の規模が違うとはいえ、阪神淡路のときは地震から100日で被災地のがれきはほぼ片づいていた。しかし今回は、がれき撤去も仮設住宅も、地域毎の縄張りや省庁間の権限争いなどが邪魔をして進んでいない。

 原発事故対応では、経産省傘下に原子力安全・保安院があり、内閣府には原子力安全委員会があって、放射線測定は農水省、厚労省、文科省、さらには各県や市町村でもやっていて、それぞれに役所の権限や利権がからみついている。政治主導どころか、官僚主導でもなく「官僚停止」ですよ。

 このように国家の重要任務ができなくなった最大の要因として、やはり組織の問題、官僚の身分化に目を向けざるをえない。つまり、古賀さんが力を注いできた公務員制度改革に行き着くんですね。

古賀 官僚は優秀かつ公正中立で、政治家は無能でも官僚がしっかりしているから大丈夫だ、という奇妙な信頼感が日本人にはずっとあったと思うんです。それが徐々に揺らいできて、とくに震災以降、自分たちが頼りにしていた官僚の無能ぶりや無責任さ、情報隠しの体質を目の当たりにして、失望や怒りが相当に広がったのではないか。

 それこそ『第三の敗戦』で堺屋さんが書かれたように、幕末の黒船来襲で、強くて頼りになると思われていた武士がまったく無力だったことが明らかになった。現在はこれと同じです。では、どうしたらいいかという答えは見つからず、非常に混沌としているのが今の日本だと思います。

堺屋 自民党が誕生した1955年から'90年ごろまでの規格大量生産を目指した時代には、国家経済の成長と官僚の利益はたまたま一致していた。そのため国民は、官僚に任せておけば安心だと思い込んだんですね。ところがバブル崩壊後は一致しなくなり、「失われた20年」に入るわけです。

 にもかかわらず、官僚は昔とまったく変わっていない。つまり彼らが目指しているのは、仕事と人員を増やして権限を強化することです。そもそも組織というものは、発足と同時に、それが作られた本来の目的とは別に、組織自体の目的を持つ。それは組織を大きく強くするとともに、構成員の幸せを追求することなんです。

 その幸せ追求の最良の方法は、内部の競争をなくすことです。だから、組織の人事は年功序列になり易い。ただし、組織の幹部になれる人数は限られるから、誰かを省かざるを得ない。そのとき判断基準になるのが、仲間内の評判です。

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