米グーグルの「支配力」は問題ない?EUと対照的な公取委は信頼できるか
自民党議員による研究会が徹底調査を要求
〔PHOTO〕gettyimages

 米グーグルの市場支配力を巡って、先週、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)と日本の公正取引委員会が対照的な決定を下した。

 まず、現地時間の先月30日。支配的な立場を乱用したとのライバル3社の訴えを受けて、ECは「グーグルの本格的な調査に乗り出す」と発表した。

 一方、マイクロソフトと楽天が中止を求めていたグーグルとヤフー(ジャパン)の提携について、公正取引委員会は今月2日、「独占禁止法上問題となるおそれがある行為を行っている具体的な事実は認められなかった」「引き続き調査を行う必要はない」とあっさり容認した。

 ECと比べて、なぜ公正取引委員会はこれほどグーグルに寛容なのだろうか。そして、その判断は適正で信頼できるものなのだろうか。

 現地からの報道によると、ECの調査のきっかけは、英価格比較サイト「Foundem」、仏法関連検索エンジン「ejustice.fr」、マイクロソフトのドイツ子会社が運営するショッピングサイト「Ciao」の3社の申し立てとされている。

 今回は、2月から行ってきた「予備調査」を「本格調査」に切り替えたもので、ECは「独占禁止法に違反しているという何らかの証拠があるからではない」と説明しているという。しかし、日本の経済官庁によると、「このように正式審査を始めた場合、(対象の企業が)無傷であった例はこれまでにない」ため、今後の展開から目が離せない状況だ

 ちなみに、
(1)検索エンジンに細工して、申し立てた3社がウェブで提供するサービスの評価を不当に下げたり、グーグル自身のサービスが優位にたつような行為をしていないか、
(2)検索連動広告の表示順位や広告単価を左右する「品質スコア」を意図的に変更して競争を歪めていないか---などを検証するという。

 ECの本格調査入りは、2008年に、法廷闘争も辞さないとの姿勢を示して、グーグルとヤフー(米国)に提携を断念させた米司法省の姿勢を彷彿させるものがある。世界の主要な独禁当局の2つがグーグル商法に厳しい視線を向けているのだ。

 これに対して、わが国の公正取引委員会のグーグルへの対応は、当初から一貫して理解に苦しむほど寛容なものとなっている。

 まず今年7月、グーグルとヤフーの提携が公表されると、公正取引委員会は事前審査でその提携をあっさり容認していたことを明らかにして、海外から強い批判を浴びた。

 電子商取引を行う民間企業の世界的な団体ICOMP(本部・ロンドン)は、ホームページ上で「グーグル/ヤフージャパン提携の本当の意味」と題するステートメントを掲載。

 ヤフーの発表資料を論拠に、「グーグルが検索エンジンの提供によって、検索と検索広告の両方で日本市場をほぼ独占することになるのは明らか」「米司法省が撤回させたケースとそっくり」と公正取引委員会を糾弾した。

 米ウォールストリートジャーナル紙も「独禁法の専門家を驚愕させた業界擁護」と見出しを付けた記事を掲載し、公正取引委員会の決定に疑問を投げかけた。

議員グループから公取委員長へ徹底調査の要求

 懸念の声は、その後も一向に収まらなかった。8月から10月にかけて、マイクロソフトと楽天の2社がそれぞれ、正式にグーグルとヤフーの提携は競争を阻害するなどとして公正取引委員会の容認姿勢に異議を申し立てる騒ぎが勃発。

 さらに、11月になると、事態を憂慮する自民党の国会議員の有志が集まり、「インターネット検索問題調査研究会」(会長・川崎二郎元厚生労働大臣)を設置し、関係者からのヒアリングを開始した。

 その第3回会合(11月25日開催)で、インターネット広告関係者が、「グーグルの広告費が10月以降、全体的に高騰している。システムのエラーを装った意図的な釣り上げの可能性がある」と表明。研究会は真偽を確かめようと、グーグル、ヤフーの2社に11月30日(第4回会合)に反論の機会を設けたが、肝心の2社は出席を拒んだという。

 そこで、川崎会長は今月2日、有志を代表して、公正取引委員会の竹島一彦委員長を訪ねて徹底調査を要求した。

 しかし、公正取引委員会は要求に応じることなく、その日のうちに、改めて両社の提携を容認する方針を表明した。

 意図的な価格つり上げやヒアリングへの出席拒否について、筆者は電子メールでグーグルに確認を求めたが、同社は回答していない。

 このコラムで以前にも指摘した(2010年08月10日『「ヤフー&グーグル」を公取が容認したワケ』)が、公正取引委員会は検索エンジンの独占に対する危機感を欠いている。

 同委員会の松山事務総長が7月28日の記者会見で「(ヤフーが提供を受ける)インターネットの検索エンジンだけの市場があるわけではない。それは技術的な部分。サービスを行っているのは、ヤフーであれ、グーグルであれ、独立。広告主に対しての事業は競争して行われていく」と述べたことは、そのよい証左だ。

 そして、この危機感の欠如こそ、公正取引委員会の「競争の番人」としての資質を疑わせる問題なのである

 というのは、検索エンジンは、単に検索結果を示すだけでなく、検索広告も自動的に提示するシステムであり、検索ビジネスの根幹になっているからだ。

 換言すると、今回の提携により、ヤフーは広告サービスの小売り事業者に特化することになる。逆に、グーグルは検索と検索広告の表示サービスで9割を超すシェアを握り、自分で広告を売るだけでなく、ヤフーに卸売りも行う市場支配者として、その地位を固めることになる。

 これはホンダや日産自動車が自動車の製造をやめて、トヨタ自動車の製品の小売りに徹するような話なのだ。この場合、トヨタの市場や価格支配力が強まることは容易に想像できるはずだ。

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