大研究シリーズ
部位別がんの始まりと終わり
「助かるがん」「助からないがん」「再発と転移」

(週刊現代)

 どこにできたのか。いつできたのか。その違いだけで助かるケースと助からないケースに分かれる。がんは残酷だが、死と向かい合わせの病だ。「敵」を知ることこそ、わが命を守ることにつながる。

「小細胞がんは、初期で見つかったとしても転移している場合が多く、まず手術はしません。肺がんの中でも転移や進行が早く、『小細胞がん』と診断がついたら、患者さんには余命の話までせざるを得ない。抗がん剤も、最初は効くのですが、それでもがんが大きくなっていくため、効き目はどんどん落ちていく。このがんは、『治りにくい』というより『治らない』と考えたほうがいいのです」

 前出の河野医師によると、キャスターの筑紫哲也さんの命を奪ったのも、この小細胞がんだったという。

「筑紫さんは手術をしませんでした。小細胞がん以外の肺がんは、2期までは化学療法でがんを小さくしてから手術します。3期はケースバイケース。4期は手術できません。5年生存率は、小細胞がん以外の肺がんで、1期なら90%。2期で45%。3期になると30%以下になり、4期だとほとんどよくなりません」

ヘビースモーカーだった安田さん。病気を機にやめた

 安田さんの肺がんは、難治の小細胞がんではなく扁平上皮がん。不幸中の幸いだが、がんは3期にあたる4cm大もあり、助かるかどうか微妙だった。

「手術前、僕は『ゴルフができない体になったら生きていてもしょうがない。そうなったら、その手術は失敗だ』と医師に言いました。医師は、『成功したらゴルフができる体に戻る』と僕に話していたのに、これがウソ。実は嫁さんには『もっても半年か1年』『来年の桜は見られません』と宣告していたそうです」

 肺がんはリンパ節に入ると転移しやすい。血液に乗って脳に転移することもあり、肺がんからくる転移性脳腫瘍もある。安田さんもリンパ節4ヵ所に転移があったが、それらは術後、放射線で焼いて消した。

「長く咳が続いていたとはいえ、まさか自分ががんになるとは想像したこともなかった。でもCTの画像を見て、僕は『がんになったんだ』と思った。そして、僕にとってはこれが『がんの始まり』であると同時に、がんの『終わり』、つまり完全に治ることもないとも。いまも再発の怖さと、ずっと戦っています。

 だからホンネを言えば、がんの話はしたくない。がんになった人は、転移のことなど考えず、『その部位だけががんなんだ』と考えたほうがいい。再発に怯えていたら、免疫力もすごく低下して、ならなくてもいいがんになります。逆に、転移しても気持ちが前向きなら治るといいますから」

「この調子ならまだ2~3年は仕事できる」(貞水さん)

 人間国宝の講談師・一龍斎貞水さん(72歳)は、昨年春、肺がんが発覚した。

「4年前にやった膀胱がんの定期検診で見つかりました。思わず『えーっ』と言ったよ。膀胱がんのときは堰を切ったような勢いの真っ赤な血尿が出たのに、ところが肺がんは自覚症状がなかった。しゃべっているときに苦しいとかいうことは何もなかったんです」

 肺がんの「始まり」はわかりづらく、症状が出た時点で、「少なくともステージ1以上には進んでいる」(前出・河野医師)。しかも転移しやすい。

 貞水さんのがんは、初期の扁平上皮がん。膀胱がんからの転移ではなく、原発性のものだった。大動脈に近いところにできたので、担当医からは「もし大動脈にまでがんが浸潤していたら、人工心臓を使って手術をする」と告げられていた。

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