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 隣国・中国がインフレに苦しみだした。10月の消費者物価指数は前年同月比4.4%増。特に食品の値上がりが激しく約10%も上昇し、低所得層の暮らしを直撃している。温家宝首相はスーパーを視察し、生活必需品には価格統制も視野に入れたインフレ対策をとるよう方針を示した。

 中国経済の弱点は、富の再分配がうまくいっていないことだ。国有企業の生産額は全体の3割程度に過ぎないが、所得ベースでは全体の7割以上を占めているとされる。そして、国有企業12万社やそれらの子会社によって、富のほとんどが占められているという。その中から、ごく一部の人が大金持ちになっていく。しかし、多くの国民は豊かになるチャンスがない。

 インフレは、落ちこぼれた大多数の国民の生活を圧迫し、低所得層を政府批判に走らせる可能性が高い。だから、中国政府はインフレ抑制に躍起になっているのだ。

 中国のインフレは、実は為替制度とも大いに関係している。人民元はドルに連動させている事実上の固定相場制だ。そのレートが安すぎると米国から常に批判されている。一方で、ドルと連動しているが故に、米国が金融緩和すると自動的に中国でも金融緩和になってしまう。

 中国はすでに世界第2位の経済大国であるから変動相場制にすべきだが、上海を中心とした輸出産業が政治的にも強い影響力を持つため、通貨切り上げにつながる変動相場制に移行できない。この結果、インフレを甘受せざるを得なくなって、国内弱者と一部の輸出業者との格差をさらに広げてしまうのだ。

 バーナンキFRB(米連邦準備理事会)議長は、中国が米国の金融緩和を批判すると、即座に中国の固定相場制について反論する。そこが中国の弱点であることを見抜いているからだ。

 中国は固定相場制の維持にこだわっているため、通常のインフレ対策である金融引き締めができない。窮余の策として中国政府は、遮二無二8%の経済成長を追求している。国民に夢を与えることで、不満をなだめようという作戦だ。上海万博、広州アジア大会などの国家的イベントも大いに利用してきた。

 だが、そうした宴も終わり、いよいよ中国経済のバブルが崩壊するのではないか、との見方が広がってきた。日本と同様に、不良債権問題が炸裂するというのだ。

 不良債権問題は、経済が成長を続けている間は顕在化しない。しかし、ひとたび成長が止まると顕在化し、金融システムに大きなダメージを与えて、さらに経済成長の足を引っ張るという悪循環に陥る。

 格付け機関大手のS&Pは「向こう5年以内に中国の不良債権は1兆8000億元から2兆7000億元になるだろう」と予測する。これは日本円で23兆円から34兆円。これだけでも巨額だが、日本と同様、この手の数字はあっという間に一ケタ増える可能性がある。

 最近1年間で中国の銀行融資は2倍になっている。その多くは地方に回っている。日本もバブルの時代、地方のリゾートに巨額の融資が行われた。あまり成長が見込めない地方経済への融資額が急増すると、杜撰な審査体制による不良債権が発生しやすくなる。中国でもすでに、地方融資の4分の1が不良債権化しているという見方もある。

 中国経済を注視している経済専門家の間で、中国が間もなく日本と同じように「失われた10年」になると分析する人が多くなってきている。


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