企業・経営 規制緩和・政策
「JALがLCCに本格参入」報道は的外れ
「格安を捨て、フルサービスに専念」こそが真相だ

正確に伝えたのはWSJだけ
〔PHOTO〕gettyimages

「日航の格安航空 既存より4割安く」---。

 先週、豪カンタス航空グループ、日本航空(JAL)、三菱商事の3社が新たな格安航空会社(LCC)の設立に合意したことを受けて、JALが主体となって本格的にLCCに参入するかのようなピントの外れた報道が相次いだ。

 中でも的外れなのが、あたかも、JALが、先にLCCへの本格参入を決めた全日空(ANA)に対抗する戦略を描いているかのように伝える報道だった。

正確に伝えたのはWSJだけ

 しかし、JALは昨年1月に経営破たんし、今なお政府が3500億円の資本を注入している航空会社である。到底、新たなビジネスモデルを模索する余力などない。

 今回の合弁事業の主体は、あくまでも豪カンタス航空グループであり、JALは同じ国際航空連合のワンワールドに所属する盟友への協力を拒めなかったのが実情だ。つまり、実態と報道は真逆であり、「JALはLCC事業への主体的な参入を断念した」と位置付けるべきなのである。

 まず、今回の合意に関する報道ぶりを紹介しよう。

 今回の提携構想を最初にスクープしたのは、共同通信とされる。3月28日にオーストラリア発で「日航、ジェットスターと合弁検討 国内格安航空で」との見出しを冠して、「日本航空が、オーストラリアの格安航空会社(LCC)ジェットスター航空と合弁で日本にLCCを設立、国内線の運航を検討していることが28日、明らかになった。競合する全日本空輸のLCCが2011年度下半期から関西空港を拠点に運航を始める計画で、日航はジェットスターのノウハウを活用して対抗するのが狙い」と伝えた。

 注意してほしいのは、この段階で、早くも、主語を、「日航と豪ジェットスター」や「豪ジェットスター」ではなく、「日本航空」と報じた点である。これによって「JAL主体の合弁」という印象を与えてしまった。合弁の実態については後述するが、この記事以降、報道と実態にズレが生じることになる。

 次いで、日本経済新聞が7月1日付の朝刊1面で、「日航、格安航空に参入、豪社と新会社 日本の空、安さ競う」という見出しの記事を掲載した。

 前文(リード)は「日本航空は格安航空会社(LCC)事業に参入する方向で調整に入った。豪カンタス航空の子会社でLCC大手のジェットスターなどと共同出資会社を設立、2012年にも国内線の運航を始める。安さが売り物のLCCは全日本空輸も来春のサービス開始を決めている。欧米では3割の市場シェアを占めるLCCを全日空に続き日航が手掛けることで、日本の航空業サービスも本格的に安さを競う時代に入る」となっている。

 この記事では、先の共同電よりも、JALが主役であるとの見方が鮮明になった。JALがANAと「本格的な安さを競う」戦略を持っているかのような報道となっている。

 そして、関係3社が16日に新会社設置を正式発表しても、新聞・テレビ各社はそろって、的外れの論調を修正しなかった。

 見出しだけ列挙すると、日経は「日航の格安航空、設立発表運賃 最低価格を保証」(16日付夕刊)、社長『事業拡大の好機』 格安航空設立を発表運賃40%安く」、共同通信は「日航、12年に格安航空就航 三菱商事、豪カンタスと」(47NEWS版)、毎日新聞は「日本航空:格安航空、成田枠拡大で決断」(インターネット版)、テレビ朝日は「JALが格安航空に参入 最低価格保証も検討」(同)とした。

 例外はウォール・ストリート・ジャーナル日本版ぐらい。「豪カンタス、日航・三菱商事とLCC設立」と他社と異なる主語を用いて、正確なニュアンスを伝えた。

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