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大反響第3弾 日産にもの申す
技術の日産、走りの日産にかげりはないか?

 今年3月の決算で5375得億円もの営業利益を出すなど業績好調の日産だが、日産ファンは必ずしも日産に満足しているわけではない。トヨタ、ホンダに続いてお送りする第3弾、今あえて日産にもの申す。

経営編 新中期経営計画
「日産パワー88」を分析する

 日産が新たに発表した新中期経営計画「日産パワー88(エイティエイト)」は2011年度から2016年度までの6年にわたる経営計画だ。

 「日産パワー88」のパワーにはブランド&セールスパワーを表わし、88には2016年度までに8%のグローバル市場占有率(現在5・8%)、8%の安定的な営業率(現在6・1%)を目指すことを意味している。リバイバルプランや日産180、日産バリューアップといった経営計画を発表し、業績を上げてきたゴーン社長だがシェアを目標とするのはこれが初めて。
「日産パワー88」で日産のさらなる伸長が期待できるのか? それとも計画倒れに終わるのか? 検証してみた。

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 日産の2010年度のグローバル販売台数は418万5000台でグローバル占有率は'09年度の5・5%から5・8%にアップした。中国での販売台数が35・5%増、米国で同17・3%増、欧州で同19・3%増と大幅にアップしたことが大きな要因となった。特に中国では102万4000台と100万台を突破。最も大きなマーケットに成長しているいっぽう、トヨタを抜いて日系メーカーでは1位になっている。そのいっぽうで、日本国内は前年比4・7%減と落ち込み、販売台数は約60万台と欧州に抜かれてしまった。

 グラフにあるように'11年度は460万台、6・1%を達成する見込みだが、市場占有率8%といえば、現在よりも300万台も多い720万台の販売台数が必要で、過去の実績から見ればかなりのハードルであることは明白だ。

 営業利益率のほうも8%という高い数字を確保するには利益率の高いクルマの販売拡充とともに1台あたりの利益を上げることも不可欠だろう。ある部品会社の担当者は、日産はクルマごとに部品が多岐にわたり、仕向地ごとでも部品が違うと非効率な面があります。営業利益8%の目標達成には部品の共通化によるコストカットも不可欠でしょうから、我々部品メーカーは競争激化になると戦々恐々ですよと話してくれた。

 はたして「日産パワー88」の達成は可能か? どう見るか? 経済ジャーナリストの福田俊之氏に聞いてみた。

「今回の『日産パワー88』はコミットメントというカタチをとっていないけれど、ゴーン社長は8%のグローバル市場占有率をあらゆる手段を使ってでもとりにいくでしょうね。8%というのは日産としては販売台数で300万台積み上げ720万台にするということですが、同時にルノーの目標は300万台なので合わせて1000万台を達成するというとてつもない計画です。1000万台はトヨタをしても壁でしたからゴーン社長自身の大きな目標でしょう。とにかく交渉能力は並外れたものがあるだけに無理とはいえないと思います」とコメント。

 中国で日系メーカー1番になり得たのはティーダやティアナ、シルフィといったクルマが売れたおかげだが、東風汽車との合弁や高い部品の現地調達率に成功し、内陸部での販売台数を伸ばしたことが大きい。'16年度までに市場占有率を10%とすべく今後はインフィニティブランドやEVも投入すると明言しており、これが富裕層にうけるかが今後のポイントとなる。

 特筆すべきはブラジルに20万台の生産能力を持つ新工場を設立するという点。ご存じブラジルはゴーン社長の生まれ故郷で思い入れは強い。市場占有率5%を目指すとするが、「南米で現地にとけ込むには時間がかかります。治安の問題もあるし、簡単にはいかないが、日産はメキシコでシェアナンバーワンという実績があり、ノウハウをいかせるかもしれない」と前述の福田氏は教えてくれた。

海外での積極策に比べると国内は策なしといっていいだろう。

 「日産パワー88」では合計51の新車を投入し、2016年度にはニッサンとインフィニティの両ブランドを合わせて66車種をラインアップするというが、日本市場については特に言及されていない。

 ただし、マーチで採用されたVプラットフォームのクルマを新型ティーダともう1台開発し、グローバルで100万台を販売するとし、おそらくこれが次期ノートだと思われる。2台は日本にも投入されるはずだ。

 またインフィニティの拡充を特に謳い、現在7車種で36市場にとどまっているが、'16年度までには10車種に拡大、市場も一挙に約2倍の71市場に進出するとしているので、このなかに日本が入っていないとは考えにくい。インフィニティブランドはメルセデスとの提携で強化され、日本導入となれば、北米のようにスカイラインやフーガがインフィニティブランドからの発売になるのかなど興味はつきず、最も注目されるポイントだ。

 インフィニティブランドからは7人乗りSUVのインフィニティJXを来年春、セダンのインフィニティEVを2014年までに北米投入するとしているが、EVのほうは日本導入があるのだろうか。リーフに続くEVとしては、東京モーターショーにも出展したランドグライダーとNV200をベースにしたEVの発売が確実視されている。NV200ベースのEVバンは現在日本郵政に提供され、8月まで横浜市内で宅配便業務を行ない実証試験中とのこと。EVは商用車としての大きな可能性が指摘され、市販されれば、世界的に注目されることは間違いない。

 と、いろいろ想像できるが従来あった国内投入予定の新型車のお披露目がないことをみても、日本市場に多くは望めないといっているようなものだ。日本のユーザーと日産ファンにもう少し気を遣ってくれてもいいじゃないか。「現在こそ落ち込んでいますが、日本市場活性化に向けて、2016年までに10台以上投入します。その一部がこれです」と何台か披露してほしかった。そんな気がする。

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