史上最高値を突破した円高につける薬はある
為替を読む『高橋法則』と民主党代表選の見方

円高、デフレに日銀は無策のまま〔PHOTO〕gettyimages

 19日のニューヨーク外国為替市場で1ドル=75.95円と一時市場最高値になった。きっかけは財務省の中尾武彦財務官の日本には為替市場に頻繁に介入する計画はないとの不用意な発言だ。

 この発言の背景にもあるが、日本の当局者は、為替変動の真の理由がよくわからず、介入の効果があるという前提に立つ。

 これまで何回も書いてきたが、円とドルでどちららが相対的に多いか少ないかがポイントで、多いほうの通貨は希少価値がなく安くなる。少ないほうの通貨は希少価値が出て高くなる。これは、理論ではマネタリーアプローチ、実務経験則ではソロスチャートと同じだ。

 8月1日付け本コラム(史上最高値をうかがう円高は「人災」)では、2007年以降、日米のマネタリーベースの比によって円ドルレートの9割方は説明できる、と書いた。

 それは関係者にとって不都合な事実のようだ。都合のいい期間だけをとっているという反論もある。もちろん、こうした数量的な分析をする以上もっと長い期間でも分析している。

 そこで、1970年から40年間以上の歴史をみてみると、もっと面白い事実がわかる(下図参照)。最高値を付けたあとは少しリバウンドすることもありえるが、少し長いスパンで為替を考えるのにも歴史は役にたつ。

 一部の期間を除いて、円ドルレートは、だいたい日本の円の総額と米国のドルの総額の比率(円ドル比率)になることがわかるのだ。円ドルレートは、日米の通貨の交換比率であるが、それぞれの総量の比になっているとは、何と単純・明快な話ではないか。でも、ちょっと考えてみれば、交換比率を決めるのは、それぞれの量だから、当たり前だ。(なお、季節変動による一時的な上下(ギザギザ)は考えなくてもいい)

 ちなみに、円ドルレートと円ドル比率の相関係数は、1990年以降、2000年以降、2005年以降、2007年以降、それぞれ0.67、0.77、0.84、0.91とかなり高い。

 除かれる一部の期間とは、
(1)プラザ合意(1985.9)の前
(2)日本の量的緩和(2001.3~2006.3)
(3)米国の量的緩和(2008.3~)である。

(1)は最後に説明するとして、(1)と(2)は、ちょっと円ドルレートが円ドル比率から乖離している。しかし、量的緩和して急に円ドル比率を変えても、すぐには円ドルレートが修正されない。時間をかけて、円ドル比率に収斂していくのだ。

 日本の量的緩和は2006年3月にやめてしまったので、収斂しきれずに、その後の日本の引き締めになって、円高に向かっている。また、米国の量的緩和では、このまま行くと、相当な円高圧力が継続する。(テクニカルな話だが、そうした収斂がある場合、相関係数は高くなる)

(1)については、プラザ合意で1ドル240円くらいから1ドル130円への調整が2年間くらいで行われているが、その前はいわゆるダーティフロートという管理された「変動相場制」だ。見方を変えると、円ドル比率から計算される「理論値」である1ドル130~150円と比較して、1ドル200~250円くらいに円安誘導していたわけだ。

日本の経済成長と為替の関係

 ニクソンショック(1971.8)以前は1ドル360円だから、かなり円安に設定されていた。そうした円安が輸出競争力を高め、日本の高度成長の原動力になっていたかもしれない。

 こうした見方は、日本の技術力が高度成長の要因という常識とは異なる。しかし、海外競争においては価格が重要な要素であるのは否定できず、さらに、技術が90年代以降急速に劣化したというものなかなか考えにくい。円安誘導で経済成長というのは、しばしば見られる他国でも形態であり、日本の高度経済成長とその後の経済停滞をよく説明しているのではないか。

 特に2000年代後半以降の、日銀の金融引き締めとFRBの金融緩和で、強烈な円高になって、国力を著しく弱めているのは問題である。量的緩和をやめずにFRBと歩調をあわせて金融緩和していれば、円ドルレートは1ドル120~150円くらいに維持でき、日本経済も今ほど悲惨になっていなかっただろう。

 こうした為替に対する理解は、今月中に行われる民主党代表選おける経済政策の争点を浮き彫りにする。

 マスコミは為替を理解していないので、円高は、これまで欧州危機、米国債務上限、米国債格下げなどと説明され、それらでうまく説明できないとわかると、今度は米国景気回復の遅れ等の海外要因で円高が進むというのが定番解説だ。ニュースで「今、何故円高なのか?」って質問にまともに答えられないのが現状だ。

 ところが、円ドルレートは円ドル比率に収斂すると考えればすっきりする。今は、前掲の図からみると、1ドル50円になっても不思議でないほどの円高圧力がある。

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