裏社会
海老蔵事件の背景に女とクスリと暴力が絡む「似非セレブ」相関図
暴力団幹部も嘆く元暴走族たちの無秩序
〔PHOTO〕gettyimages

 昨年夏、テレビのワイドショー、週刊誌、夕刊紙、スポーツ紙を席巻したのが、酒井法子(のりピー)夫妻の覚せい剤事件と、押尾学の合成麻薬MDMAによるホステス死亡・遺棄事件だった。

 この時、精緻な相関図が幾通りも出回り、「次の事件」を予感させた。それほど芸能界と会員制クラブ、そしてクスリは密接にかかわっていた。

 俳優、タレント、歌手、モデル、元暴走族、元チーマー、クラブ経営者、格闘家、警察官僚OB、ベンチャー経営者、政治家の二世、芸能プロダクション代表・・・。

 相関図に登場する人物たちは、なぜツルむのか。

 こう質問した時、元暴走族のクラブ経営者の答えは明確だった。

「価値観とライフスタイルが同じなんです。みんな自分の能力と実力で生きており、そのことに自信を持っている。女なら顔やスタイルや声は重要な売り物だし、男ならそこに頭脳や度胸が加わる。彼らは、店を起こし、会社を立ち上げ、それなりのカネを持つ。ある意味、成功者で、みんな"一般人"とは違うという特権意識があります。

 時間とカネを自由に使える人間たちが、同じレベルの友人と、心地いい空間を求め、会員制クラブやクラブのVIPルームに集まり、深夜まで群れて遊ぶ。そこにはいい女と酒がある。そんな空間が、麻布、六本木、青山、渋谷あたりに存在するんです」

 クラブ経営者は認めなかったが、その空間にクスリが介在することは、のりピー・押尾事件が象徴している。

 私は、当時、そうしたセレブと勘違いした人間たちの様子を「『似非セレブ』相関図」として記事にしたことがあるが、今回の「海老蔵殴打事件」は、その構図のなかで生まれたものである。

 事件があった西麻布のビルの会員制クラブは、上場したベンチャー企業経営者が出資、元Jリーガーが経営を委ねられていた。

 一流の歌舞伎役者でも人間としては未熟な市川海老蔵は、「相関図」のなかで思いっ切り「似非セレブ」ぶりを発揮、いろんな店でトラブルを起こしていた。

 クラブ経営者が嘆息する。

「華があるし、海老蔵が来るのはうれしい。でも、とにかく酒癖が悪くて下品。いい女なら、人が連れてきていても手を出すし、どんなに年上でもため口。自分が強いので酒を強要、つぶして面白がる。今回も、つぶしたあげく、髪の毛をつかんで『なんだだらしねぇな。それでも男か!』と、暴走族のリーダーに暴言を吐いたので、弟分が切れて、ボコボコにした」

 「ボコる」にも限度がある。陥没骨折のうえ、非常階段に血痕が何か所にも残るほどの重傷を負わせたのでは刑事事件である。

 それは、無秩序の証明でもある。

 銀座・赤坂といった昔ながらの「夜の繁華街」には、縄張りを持つ暴力団がいて、それなりに仕切っている。終戦直後の「銀座警察」の"秩序"は健在だ。

 だが、暴対法を始めとする警察当局の締め付けは、暴力団の勢力を弱めた。また、暴力団組長が使用者責任を厳しく問われることになったために、暴走族など"予備軍"を安易にスカウトできなくなった。構成員にするにも、頭のいい穏健派を選び、すぐ切れるような粗暴犯は必要としない。

 のりピー事件、朝青龍事件、海老蔵事件に共通するのは、暴走族・関東連合のOBが絡んでいることだ。これまであれば、暴力団が力で従わせる不良が、自立して思わぬ商才を発揮、暴力団に負けないぐらいの資力と人脈をかまえ、それに後輩を暴力装置にして存在感を増している。

同情の余地はなし

 広域暴力団幹部のこんな"嘆き"を聞いたことがある。

「暴力団というだけで、一般人には手を出せない。脅しはもちろん暴力もご法度。でないと、組長以下、一蓮托生でパクられる。それを知っている不良は、縄張りなど関係なしに商売を始め、トラブルになるとケンカを売ってきて、こっちが本気になると警察に駆け込む。ホントにタチが悪い」

 そうした連中が用意した空間で、海老蔵はよく遊び、事件のあった日ははしご酒。事件化も無理はない。

「似非セレブ」相関図が問題なのは、そこにクスリが絡むことである。

「タマ」と呼ばれるMDMA、コカイン、覚せい剤などの薬物は、恐ろしいほどの勢いで「似非セレブ」の世界に広がっており、クスリは深夜、仲間たちが集まるパーティーやクラブVIPルームで使用されるという。

 今回、不幸中の幸いは、現在までの情報では、クスリが介在していなかったことだろう。それでも海老蔵の行状を伝えるマスコミは辛辣だ。それも当然、梨園に生まれ、甘やかされて育ち、夜になると、危ないという自覚なく、"仲間"と信じて暴走族と遊び、そのあげく不良にケジメを取られた。

 同情の余地はない。

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