日本に必要なのはウィキリークス 記者クラブ体質からの脱皮が迫られる「内部告発冬の時代」が続く

2010年12月02日(木) 牧野 洋
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 ニューヨーク・タイムズの編集局長ビル・ケラーは、ネット上に公電内容が流れ始めた翌日(11月29日)付の紙面で「外交公電を掲載する理由」と題する記事を書き、読者に理解を求めている。

11月30日付のニューヨーク・タイムズ。前日に続いて1面で「ウィキリークス外交公電」特集を展開

「タイミングを除けば、今回の外交公電の内容掲載については何の条件も課されていません。

 国民には知る権利がある一方で、秘密情報を公にすることで国益が損なわれる恐れもあります。

 そのバランスを考えたうえで、われわれは独自の判断で公電内容に修正を加えました。

 一般論として、アメリカの外交官に協力している情報提供者が報復されたり、テロ集団に有利な情報が流れたりする恐れがある場合、当該個所を削除するなど修正しています。修正部分については他メディアとともにウィキリークスにも事前に教え、同じように行動するよう呼びかけました。

 われわれは、修正を加えた外交公電をホワイトハウスに見せ、その際に『国益を害する情報が含まれているなら、今のうちに指摘ほしい』と言いました。すると、『掲載そのものが言語道断』と抗議されるなか、追加的に削除すべき個所を示されました。それを丸のみすることはせずに、一部に限って反映させました。

 そんな経緯もあり、ホワイトハウスが具体的にどこに重大な懸念を抱いているのか、われわれは知ることになりました。そういった懸念については、紙面掲載前に他メディアとともにウィキリークスにも伝えました」

もし日本にウィキリークスがあったら

 ニューヨーク・タイムズにしてみれば、掲載しないという選択肢はなかったようだ。他メディアが掲載するなかで同紙だけが無視する格好になると、読者ニーズに応えられないからだ。その意味でウィキリークスが主導権を握っているといえる。

 ただし、ウィキリークスは報道機関ではない。単独では力不足だ。ジャーナリズムのプロ集団である報道機関に公電の分析・編集修正や当局との折衝などをアウトソース(業務委託)し、実質的に分業体制を築く形になっている。

 憲法上「言論の自由」を保障された報道機関に盾になってもらわなければ、内部告発者を守れないという事情もある。新聞記者であれば当局に告発内容を事前に見せ、そのうえで紙面に掲載できる。内部告発者が直接当局に出向いたら、その場で逮捕されかねない。内部告発者には報道機関という窓口が必要なのだ。

 

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