駐中国大使の民間人抜擢説も出る
外務省の落日

知日派を日本大使にした中国の思惑

 1月26日夜、東京都内のホテル・ニューオータニで中国の崔天凱外駐日大使の離任レセプションが開かれた。崔大使は旧正月明けの2月下旬に北京に帰任し、外務次官に就任する。当夜、中国大使館関係者は500人以上の出席者を見込んでいたが、実際に集まったのは約300人に留まった。

鳩山首相と握手する崔天凱外駐日大使 PHOTO堀田喬

 もちろん、ルース駐日米大使など在京外交団を始め、福田康夫元首相など多くの政財官界が出席した。出席者が少なかったのは、この人事が日中関係者の間で決して栄転ではないことが周知されていたからだという。

 12月中旬、来日した習近平国家副主席(中国共産党政治局常務委員)の天皇陛下との「異例会見」が、民主党の小沢一郎幹事長の強い意向を受け入れた鳩山政権による「天皇の政治利用」ではないかとの指摘がマスコミ・識者から噴出し、大きな政治問題となった。

 この問題の遠因が崔天凱大使の政府・与党へのアクセスが脆弱だったためだと、中国の国家指導部が総括した結果が、今回の人事だというのである。

 そして日本の皇室との関係悪化を危惧する国家指導部は、非日本語スクール出身の崔天凱氏に代えて、外交部の日本語スクールのエース、程永華・現駐韓大使の起用を決定したのである。

 さらに言えば、創価大学に語学留学経験があり、駐日公使、大阪総領事を経て駐韓大使となった程永華氏を新大使に推したのは、次期国家主席(共産党総書記)の最有力候補である習近平国家副主席の後ろ盾であり、今なお隠然たる影響力を持ち「太子党」のドンと言われる曾慶紅前国家副主席だというのだ。

 江沢民体制下で権勢を誇った知日派の曾慶江氏が描く今後の日中関係は、2012年に北京で開催される日中平和条約締結40周年式典に皇太子夫妻の出席を得て、翌13年3月の全人代で胡錦濤国家主席の後継者に指名されるはずの習近平氏が同年中の日本公式訪問を実現するというものだ。

 程永華氏はこのミッションを曾慶江氏の側近だった戴秉国国務委員(外交担当)から託され、やはり日本語スクール出身で駐日公使(政務担当)に就任する呉江浩アジア局副局長を伴い3月初め東京に着任する。

小澤訪中団からも蚊帳の外だった

 中国側の日本重視シフトに比べ、日本の対中ラインアップはお粗末である。外務省(薮中三十二事務次官)内のチャイナスクールの地盤沈下は指摘されて久しい。これまた12月に話題を呼んだ小沢幹事長率いる訪中団(143人の民主党国会議員を同行)について、外務省は完全に蚊帳の外に置かれた。

 駐中国日本大使館は小沢サイドからすべての便宜供与を断られ、小沢・胡錦濤のトップ会談では外務省の通訳提供も拒否されたのだ。従って、宮本雄二駐中国大使は会談内容について本省宛公電を打つため同席した国会議員に"取材"せざるを得なかった。

 この夏にも勇退するとみられる宮本大使の後任人事でも、同じチャイナスクールの樽井澄夫特命全権大使(沖縄担当)が本命視されるが、官僚組織などの非選出勢力の一元化支配を目論む小沢氏が最高実力者である限り、次期駐中国大使は民間から起用されることになりそうだ。

 1月15日発令の河相周夫官房長の官房副長官補転出人事もまた官邸側の一本釣りであり、同省はいま「政治主導」の厳しい現実を改めて実感している。

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