田原総一朗VS馬淵澄夫対談 Vol.2
「増税よりもまずデフレ脱却を」

vol.1はこちらをご覧ください。

田原: ところで、東日本大震災で受けたダメージが約23兆円だという試算が出ているけれども、この23兆円分の被害をどうやって復旧・復興させるかということで、大雑把に言うと20兆円分くらいのカネをつくろうということになっています。

 半分の10兆円は復興公債でまかなうとして、残りの10兆円をどうするかで、民主党としては増税で捻出すると言っています。それは消費税ではなくて所得税・法人税の増税だということなんだけれど、馬淵さんはこれには相当異論があるようですね。

復興公債は数世代にわたる長期償還で

馬淵: まず、復興というものをどうとらえるかですよね。阪神淡路で16年かかっていますが、今回これだけの被害からの復興を10年という時間を区切ってできるものと見るべきなのか。戦後の長きにわたってつくられた社会資本が一瞬で吹き飛んでしまって、町ごと消失しているところもあるわけですから、複数世代にわたってきちんと整備していくことを考えれば、もっと長い期間を想定すべきではないのか。こういった議論はあるかと思います。

田原: たとえば阪神淡路のときは地震だったから、つぶれた家を建て直せばいい、こわれた道路を造り直せばいいということだった。今度は津波が加わっているから、たとえば陸前高田とかいろいろなところでは、元のところに建てたのではダメなので、それをどうするかということですね。しかもこれは地域ごとに事情が違います。阪神淡路のときのように、一律の復興策ではうまくいかないですよね。

馬淵: 阪神淡路の場合は、ある意味で「復旧」のレベルだったんですよ。つまり、近傍の大都市として大阪があったり神戸周辺の都市がたくさんあったわけですから、人々が働ける場が残っていたんですよ。ところが、今回の震災では職場ごと吹き飛んでいますから、「復旧」ではダメなんです。

 私がずっと言っているのは、阪神淡路は復興に16年かかったのに、今回の復興は10年で想定していますなんてのはとんでもない、ということです。むしろ30年、40年、複数世代にわたって世代間で引き継いで町をつくっていき、都市を形成していくということをやらなければならない。

 だとすると、短期償還の国債ということがそもそも違うんじゃないかということを申し上げているんです。短期償還にするから、じゃあ財源はどうするのかという話になるんです。田原さんもご存じのように、建設国債というのは60年償還です。60年償還であるがゆえに、それに対する財源はすぐに措置する必要はありません。将来の税収で想定しているだけなんです。

 この償還計画というのは、60年先のことですから将来どういう税収があるかはわからないけれど、10年、20年、30年という区切りで償還期限が到来したものの財源を考えていくんです。復興公債だって同じでいいじゃないですか。

田原: だったら、なんで今回は短期償還でやろうとしているんですか。

馬淵: 私には「増税ありき」にしか見えないんですよ。

田原: なるほど、では財務省主導ということですか。

馬淵: 私には、そういうふうにしか見えません。阪神淡路の際の復興公債は、償還期限も財源も特定されていないんです。

田原: あ、あれは60年償還でいいんですか。

馬淵: そうですよ。それに、赤字国債なんかも60年償還なんです。財務省は昭和59年に公債依存度が高いから何とか脱却しなければならないということで、赤字国債からの恒久脱却を図りましたが、結局できなかった。それで、翌年に赤字国債の償還期限を10年から60年に伸ばしたんです。自分たちで、そういうことをやっているんですよ。

 自分たちでも償還期限を伸ばしておいて、今回は増税気運が高まっているということで、復興公債を10年償還だとか言いだした。私は、それは違うんじゃないかと思います。複数世代にわたって長期償還するものと考えたって、いいじゃないですか。

田原: 気になるのは、阪神淡路の復興が16年かかったのに、今回は10年だというのは、なんでそうなったんですか。どこが言いだしたのか。

馬淵: だから、内閣府試算と財務省でできてきたんでしょう。内閣府は被害推計を出しただけですから、償還期限を出してきたのは財務省なんでしょうね。

田原: くり返しになるけれど、阪神淡路でさえ16年でしょう。それが今度の震災の復興はもっとややこしいことになっているのに10年償還ではおかしい、なぜ民主党の中から馬淵さん以外そういう声が出てこないんですか。

馬淵: こういう議論を、国民の前できちんとやる必要があると思います。私は以前は政府にいたので部門会議にも出られませんでしたが、今はこうして情報を発信していこうと考えています。

田原: 馬淵さんは、60年国債にするなら10兆円と限定しなくてもいいじゃないかと、そういうご意見ですね。

馬淵: 今回はとくにマイナスのインパクトですから、復興特需があるとはいえ、東日本が大きな経済的打撃を受けたわけです。まず真っ先に政府は「デフレ脱却で景気回復」という錦の御旗を掲げなければならない。景気が回復すれば増税議論だってあっていいと思いますし、私は増税がまったくダメだなんて思っていないんですが、今はその時期ではない。

 デフレの真っ直中で、震災復興と原発事故という二つの荷物を背負わされた瀕死の重症患者が、重い荷物を持って倒れているのに、いきなり起こして「走りなさい」と言って走らせるのと同じことで、死んじゃいますよ。私はまず荷物を降ろしてあげて、ICUで治療して元気になってリハビリして、それから走ってもらえばいいと思います。

田原: 民主党の大半は、「馬淵は困ったもんだ」と思ってますね。「こんなときに増税反対なんて困ったもんだ」と。馬淵さんのそういう意見は民主党の中で多数派になりますかね。

馬淵: 私は普通に市場や国民生活を知っている方であれば、理解できる議論だろうと思いますので、理解が広まると思っていますよ。みなさんもそうお考えじゃないですかね。

田原: おそらく今度の代表戦の対抗馬になるであろう野田さんは、増税路線ですね。彼は財務大臣ですからね。このデフレの最中でも増税すべきだ、と。

馬淵: 私はそれはまったく逆だと思いますね。

田原: それから、その前に復興だけじゃなくて社会保障と税の一体改革の問題がありましたね。そこでも民主党が2010年代の中頃に消費税を10%にすると謳っていますが、あれはどうですか。

馬淵: まあ、これは閣議決定ではなく閣僚了解ですよね。私はこの閣僚了解に関しては、ギリギリあいまいに表現するところでよしとしたんです。つまり、「2015年度」と具体的に決めていたら、これはもう段階的といっても13年度、14年度から上がっていくことになりますから、それはダメだと。

 でも、「2010年代半ばまでに」ですから、総理の任期は過去を振り返って中曽根さんや小泉さんでも最長5年ですよね。2011年夏に新総理が誕生すれば、2016年夏までです。それまでに景気を回復して、そして名目GDPで3%、4%で経済が成長していれば税収増が確定しますから、そのときには財源としてその税収増が見込まれますし、景気が良くなっていけば増税に対する不安感は払拭されますよ。

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