中国
米国債大揺れの裏側で「世界の金融センター」を目指す中国の「二人の主役」習近平と李克強
〔PHOTO〕gettyimages

 一年後の「ポスト胡錦濤政権」の人事を大方確定させる6中全会(中国共産党第17期中央委員会第6回全体会議)を10月に控え、来年からの中国政界の「主役」となる二人が先週、檜舞台に登場した。

 まずは、「胡錦濤の後継者」としての地位を事実上、内定させている習近平副主席(58歳)。習副主席は、17日から21日まで5日間も訪中していた(日本にはわずか1泊2日!)バイデン米副大統領のホスト役を果たした。北京でバイデン副大統領を出迎え、首脳会談や公式晩餐会を主催したのを始め、2008年5月に大地震に見舞われた四川省・都江堰まで同行し、文字通り一夜を共にしたのだった。

 周知のようにアメリカは、8月5日にS&Pに格付けを落とされ、債権危機の真っ只中にある。中国は世界最大のアメリカ国債保有国であり、いまやアメリカの国債問題は、「国内問題」と言っても過言ではない。また、アメリカから台湾への新たな武器輸出計画が伝えられているし、南シナ海の領土問題も火種となっている。このため当初は、金融と軍事の2大問題について、両首脳で突っ込んだ話し合いが持たれるという観測がなされた。

不発に終わったアメリカ副大統領との会談

 だが8月18日に行われた習近平副主席とバイデン副大統領の首脳会談では、「世界の2大経済大国の協力が世界の持続的な経済発展のために重要であることを両首脳が確認しあった」などという月並みな発表しかなかった。習近平副主席主催の歓迎晩餐会でも、バイデン副大統領は「仏跳墙」(あまりの美味に坊主も壁から飛び降りると言われる広東風スープ)には舌鼓を打っても、世界が待ち望んでいた金融問題や軍事問題に関する重要スピーチはなかった。

 バイデン副大統領は、日本大使館脇にある北京最高級のセントレジス・ホテルを全館(258部屋)貸し切りにした割には、ランチに1杯9元(1元=約12円)のジャージャー麺を食べてみたり、ジョージタウン大学vs山西中宇猛竜隊のバスケットボールの試合を、拳を振り上げて観戦したりと、「一体何しに来たの?」という感じなのである。

 こうしたことは、今回「アメリカ外交デビュー」を果たした習近平副主席の失点ではない。原因は主に、アメリカの側にあったからである。

 最大の理由は、ホワイトハウスにおけるバイデン副大統領の「存在の軽さ」である。ボブ・ウッドワード記者の最新刊『オバマの戦争』は、発足から一年半にわたるホワイトハウスの内幕を余すところなく描いているが、同書を読むと、オバマ大統領は主に3つのルートで外交政策を行っていることが分かる。

 第一に、クリントン国務長官を中心とする国務省ルート、第二に、パネッタ国防長官を中心とする国防総省ルート、そして第三に、9月に長官就任が内定しているペトレアス氏を中心とするCIAルートである。

 だがバイデン副大統領は、このどのルートにも入っていない。それどころか、政策決定の要であるホワイトハウスの補佐官たちから、大いに煙たがられている。同書によれば、バイデン副大統領はホワイトハウスの重要会議でしばしば、長広舌の演説をぶった後、「私だけはこの案に反対するが大統領の決定には従う」と発言しているという。そんな「浮いた存在」の副大統領に、オバマ大統領が、金融と軍事の重要な「メッセンジャー役」を託すはずもないのだ。

 では、バイデン副大統領は今回、なぜに5日間も中国に逗留したのか。それは推測するに、バイデン訪中の真の目的は、金融でも軍事でもなく、ズバリ習近平という新手の権力者を見極めることだったのではないか。

 だからわざわざ、「大地震から3年余りを経た被災地の復興具合を見たい」などと言い訳をつけて、習近平を四川省の山奥まで引っ張り込んだのだ。つまり、北京では見られない「生近平」に接しようとしたのである。実際は訪問先など、桂林でも雲南省でもよかったのだ。

 では、バイデン副大統領は帰国後、オバマ大統領に対して、習近平はどんな男と評するだろうか? これはウッドワード記者の次回作を読むまで分からないが、私の見立てでは、習近平という政治家は、日本の政治家に喩えるなら、橋本龍太郎タイプだ。いまのところ習近平は、その個性の片鱗も見せていないので、単なる憶測に過ぎないが、直感的にそんな気がする。

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