芦屋発! 国内最大規模の「高級有料老人ホーム」を襲った杜撰経営
東証一部上場企業が
展開していたはずが破綻寸前

 高額の入居一時金を支払う高級老人ホームには注意したほうがいい。特に自分で判断能力が低い高齢者が契約する場合は、親族らが契約書を専門家に見せ、チェックする必要がある。

 老人福祉法では老人ホームの設置者に一時金の保全を義務付けているが、巧妙な手段で骨抜きにされてしまうケースもあるのだ。

 国内最大規模と言われる高級有料老人ホーム「チャーミング・スクウェア芦屋(CS芦屋)」(兵庫県芦屋市)では、設置した不動産会社ゼクスが業績の悪化に伴い、監査法人が決算書を承認しなかったため、今年6月15日、東証一部上場廃止に追い込まれた。

 そして今年9月30日には、CS芦屋の施設を所有する特定目的会社(SPC)「芦屋シニアレジデンス」(本社・名古屋市)に対して名古屋地裁が解散命令を下した。

 さらに今年11月19日には証券取引等監視委員会は有価証券報告書の不提出による金融商品取引法違反の疑いでゼクスに対して約4000万円の課徴金を科すように金融庁に勧告。有価証券報告書の不提出による勧告は初めてという。

 CS芦屋は固定資産税と不動産取得税を滞納したため、すでに09年に芦屋市と兵庫県から敷地と建物を差し押さえられている。上場廃止や差し押さえによって一部の入居者からは入居一時金が保全されているのか不安の声も出ている。

 ある入居者は昨夏、契約書の書き換えを求められ、一時金を連帯保証することを明記していたゼクスの名称が書き換えの際に新契約書から外されていたため、不審に思い、書き換えを断ったという。

 CS芦屋では入居者は約2000万~約9500万円の入居一時金を払い、終身利用権を得て「終の棲家」としているのだ。東証1部に上場を果たし、老人ホームという社会性・公共性の高いビジネスをしていながら、こうした事態に追い込まれた点でゼクスの経営者の姿勢が問われるところだ。

 ゼクスの施設では、CS芦屋だけではなく他でも「ゼクスの上場廃止が視野に入った頃から、巧妙な財務テクニックを使い、財産の分離を行っていた」(関係者)という。

 CS芦屋の場合、土地・建物の所有権と運営会社を分離していることも利用者から見れば仕組みが複雑に映る。運営は「株式会社CS芦屋」が担い、所有権は前述したSPCが持つ。このSPCに出資すれば高い利回りが得られることを条件に医薬品企業A社から優先出資を募り、A社は約30億円を出資した。

 ところが、財務状況がおかしいことに気づいたA社が名古屋地裁に対してSPCの検査役の選任を申し立て、財務状況などを調べた結果、杜撰な支出が繰り返され、残金がわずか約263万円だったという。A社は名古屋地検特捜部に関係者を業務上横領容疑で刑事告発、受理されて捜査が進められている。出資を担当したA社の役員は自殺した。A社はゼクスなどに対して「価値のない物件を押しつけられた」として損害賠償請求訴訟を東京地裁に提訴した。

入居一時金は保全されているのか

 最大の問題は、冒頭でも触れたが、入居者が支払った入居一時金がしっかり保全されているかだ。CS芦屋では途中退去や死亡した場合には本人もしくは相続人への残金返還も規定されている。一方、入居一時金が高額であればあるほど、運営側にとっては「おいしい」ビジネスとなる。そのお金を運用して利回りを稼ぐこともできるからだ。

 全国に約5000の老人ホームがあると言われる。そのうち604ホームが加盟する社団法人「全国有料老人ホーム協会」(東京都)では、一時金保全のための「入居者基金」を設けている。老人ホームの設置者が入居者1人当たり20万円を支払うことで、倒産などによって契約不履行の事態になった場合、500万円の損害賠償を支払う制度だ。

 関係者によると、CS芦屋は入会申請をしたが、書類の不備があり、差し戻したところ再申請がなかったという。

 ゼクスの施設の中には、あの村上ファンドの村上世彰氏が買収するという噂も流れているものもある。「終の棲家」のはずが、知らぬ間に第三者に売り飛ばされる危険もあるのだ。

 こうした状況下にあるにもかかわらず、兵庫県はCS芦屋に対して介護保険が適用される介護特定施設に認定している。行政の監督責任も問われるところだ。

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