初めから相当、ウサン臭い話だった。
そもそもアスレチックスが岩隈久志(29)を落札したことが最大の謎だった。
「だって、先発ピッチャーいらないですもん(笑)。ケイヒル、ゴンザレスに完全試合男・ブレイデン、アンダーソンと先発4本柱は磐石(ばんじやく)。しかも全員、岩隈より若いんです。補強ポイントは投手じゃなくて大砲。だから、『岩隈は獲得後、即、大物打者とトレード』なんて報道が出たんですよ」(メジャーリーグ担当記者)
アスレチックスのGMは、あのビリー・ビーン。年俸が高いスター選手をトレードに出して若手有望株を大量にゲットしたり、埋もれている有能な選手を格安で獲ってきたりと、彼の補強手法がポスティングシステムと正反対であることは、ベストセラーとなった著書『マネー・ボール (ランダムハウス講談社文庫)マネー・ボール』を見れば明らかである。
MLB関係者が補足する。
「ポスティングシステムはあくまで、独占交渉権を得るための制度。契約金と年俸はまた別に用意しなければならない。イチロー、石井一久らが実績を残したことで一時、日本人株が高騰しましたけど、それも松坂大輔の入札金約60億円がピーク。井川慶(約30億円)の大失敗で暴落しています。余計なカネを払って"日本株"でギャンブルするより、FAで"自国物件"を買ったほうが安心かつ、安い。現地はすでにそんな風潮ですよ」
なぜ、ドケチなビーンGMが入札を?
「公式発表されていませんが、今回、岩隈にはマリナーズとレンジャーズも入札したと聞いています。いずれも西地区のチーム。アスレチックスのライバルです。自分のチームには不要だけど、敵に回られたら面倒。第2回WBCでの岩隈の活躍を見れば、ソコソコ通用するだろう。ならば横ヤリを入れてやろう—と、ビーンが考えても不思議はない」(前出・メジャー担当記者)
しかもポスティングシステムの場合、入札しても交渉がまとまらなければ、負担するカネはゼロで済む。再入札は1年後以降となるので、今季の岩隈のメジャー移籍はなくなる。