田原総一朗VS馬淵澄夫対談 Vol.1
「私が代表選挙に出馬する理由」

原発事故、保安院の説明では不十分だ

田原: 馬淵さんは、今回、なぜ民主党の代表選挙に出ようと思ったんですか。

馬淵: 元々この世界に入るときからその覚悟を持って臨んできたつもりですから、自分としては唐突でも何でもありません。選挙で当選3回きちっとした形で勝ち抜ければ有資格者になれるであろうということ。もう一つは行政経験、少なくとも政権交代以降に政務の三役を、大臣まで経験しなければ内閣を含めた実態がわからない。これも経験させていただきました。

 それらを含めて、いちばん大きな理由は震災後の諸問題ですね。原発事故の収束と復旧・復興という二つの大きな荷物を背負わされたわが国が、経済でしっかりと確実な成長を遂げていかなければならないときに、一方で増税議論というものが出てきました。

 民主党に求められていた「国民の目線に立った政治」からかけ離れて、まさに政治主導からまったく正反対の官僚主導の政治に一気に流れていきはしないか、これはここでだれも何も言わなくてもいいのか、と。私としては、ここははっきりと政策議論を戦わせるべきだという思いを持ちまして、今回はそういう覚悟を持って臨みたいということは申し上げています。

田原: 馬淵さんから見て、菅総理の政治のどこが問題だと思いますか。

馬淵: 私は閣僚としても補佐官としても菅総理にお仕えしましたが、私から見ればきちんとご判断をしていただいていると思います。しかし、全体として見た場合に、総理から出てくる指示が複数にまたがったり、あるいは法律に基づかない責任と権限のなかで指示が降りたりということで、いわゆるマネジメントの部分で政治主導を十分に発揮できていないところがあるかもしれないとは思います。

田原: なぜ馬淵さんは総理補佐官をやめたんですか。

馬淵: 3月26日、発災後2週間強経って総理補佐官を拝命するときに、「大臣をやめて2ヵ月でもう閣内に戻っていいのか」と私は悩みました。でも、これには原発事故という人類未曾有の危機の収束という大義があるということで、お受けしました。徹底的に黒子に徹し、一スタッフとして収束に当たろう、と。

 ところが6月27日に総理から言われたのは、「経済産業副大臣になってほしい」ということでした。これは経済産業省全体を所管する立場に立つことになるわけで、私にとっては原発事故収束という大義から外れるということになりますから、「それはお受けできない」と申し上げました。

 そのときに菅総理は「副大臣と原発問題を両方やればいいじゃないか」とおっしゃったのですが、他方で政府が6月18日に原発安全宣言を出していて、これは従来の安全基準の見直しがなされていませんから、私としては到底容認できないということで、「原発安全宣言を追認・容認することになりますから、私にはできません」と申し上げました。

 原発事故収束という大義のための補佐官としてなら続けさせていただきたいが、それ以外は大臣だろうが副大臣だろうがお受けする気はない、と申し上げたところ、「ならば降りてもらう」とおっしゃったので、「それは総理がお決めになることです」とお答えしました。

田原: なるほど。ところで、僕らが見ていると、このところ菅さんは嘘が多いと感じます。6月2日の朝、鳩山さんが菅さんと会って、あのときは自民党が不信任案を出したんだけれど、そこで菅さんが「総理をやめる」と言ったということで、結局鳩山さんのところも小沢さんのところも不信任案に乗らなかった。それについて、鳩山さんは「騙された、ペテン師だ」とまで言った。

 その後、今度は海江田さんの問題が出てきて、海江田さんが6月末に佐賀へ行って、「政府が責任を持つから」と玄海原発の再稼働を要請した。帰ってきたらすぐに菅さんが「ストレステストをやる、再稼働じゃなくて止める」と言った。そこで自民党の塩崎さんが質問して、「海江田さんが玄海に行ったのは、菅さんが許可したのか」と言ったら「知らない」とまた嘘を吐いた。それで、海江田さんが翌日やめるという話になったけど、あれは何ですかね。

馬淵: 意思疎通が十分じゃなかったのでしょうかね。私としては、菅さんが嘘を言われたのかどうかはわかりませんけれど、意思疎通が十分図られていないとは思います。たとえば、組織のトップであれば直近の部下は大事ですよね。だったら、しつこいくらい確認作業をやるべきだと思います。

 先ほど申し上げたように、政治主導のマネジメントの部分で問題がなかったのかという疑問は感じます。言葉足らずということもあるでしょうが、たとえば、考えが変わったときに周知徹底するという作業は、組織であれば当たり前に行いますよね。ときにはFAXもメールも電話も、という具合にしつこいぐらいに確認を徹底するじゃないですか。ひょっとしたら、そういうところがわが党のガバナンスの部分で欠けているところかもしれませんね。

田原: 自民党や公明党はともかく、民主党の中でも「菅さんはやめろ」という声がとても大きい。なんで菅さんはあんなにねばっているんですか。驚異的なねばりであることは認めますが、何を考えてあんなにねばっているんですかね。

馬淵: それは、特例公債の問題はあとの人に残すと大変なことになる、ということでしょう。私は補佐官をやめた翌日に、電話の報告だけで済ませるのも失礼に当たると思いまして、アポをとっていただいて菅さんにごあいさつに行ったんですよ。そのときには菅さんも落ち着いておられて、ねぎらいの言葉もいただきましたが、そのときに「自分としては腹をくくっている。特例公債をあとに残すわけにはいかないから、これだけは何とかしないと」とおっしゃっていました。

田原: 自民党が妥協してどうやら特例公債法案は通りそうですが、僕が自民党の何人かの方に聞いたのは、自民党が特例公債に反対したのは「特例公債法案を通しても、菅さんのことだからやめないんじゃないか」という思惑があったからだ、ということなんですよ。

馬淵: いや、それはおやめになりますよ。

田原: 民主党の中でも、枝野さんとか千石さんとか岡田さんとか、あの辺から「やめたらどうか」という声があった。ところが、8月7日だったかに岡田さんが「菅総理はやめない」と言いだした。岡田さんが何を考えているのかよくわからないんだけれど。

馬淵: それぞれのお立場でいろいろお考えもあるのだと思いますが、それを口にすると疑心暗鬼も生むのでしょう。私は一貫して菅さんはおやめになると思っていますし、政治家というのは出処進退を自ら決するもので、与えられた立場は預かり物ですから、自分の力だけで勝ち得たと思ったら大まちがいです。そこは菅さんはわかっておられると考えています。

安全基準を見直し、原発依存度を低減

田原: ところで原発なんですけど、菅さんは「脱原発」と言っているけど、馬淵さんはどのように考えているんですか。

〔PHOTO〕gettyimages

馬淵: 私は「脱原発依存」と申し上げています。これは原発への依存度を下げるということで、今再稼働を停止している54基については、ストレステストで安全確認するのではなく、安全基準の見直しを図り、それに時間がかかるのであれば暫定安全基準を決めて、再稼働の整理をして一つひとつを確認する。さほど難しくなく再稼働が可能なものもあるでしょうから、これについては自治体の了解を得たうえで再稼働を許していく。

 その場合、ことによっては54基のうち5~10%の稼働率になるかもしれませんが、原発への依存度が高すぎるのは問題だと思いますので、まずは依存度を下げていく方向に舵を切らざるを得ないと思います。

田原: 安全基準の見直しというのは、どういうことなんですか。

馬淵: なぜ私が原発安全宣言に対して、安全基準の見直しをしていないという問題点を指摘したかといいますと、今回の福島の事故の反省として「津波が原因で事故が起きた」という結論しか踏まえていないんですよ。

 だからその対策としては、津波を防ぐ防潮堤の設置と、津波によって全電源喪失が起こって冷却機能停止になりましたから、それを多重化してバックアップを用意する。この二つができていれば緊急安全対策としてはOKです、というのが保安院の出した指示だったのです。

田原: 具体的には、たとえば緊急冷却装置やディーゼルの自家発電装置、そういうもののが津波で流れちゃったから、流れないようにする、と。

馬淵: たとえば自家発電装置を高いところに置くとか、それでもう大丈夫だというのが6月18日の原発安全宣言ですが、これではダメです。果たしてこの事故は津波だけが原因で起きたのかということは、まだ検証が終わっていません。今まさに事故調査委員会が調査に入っているところですが、私は地震も事故の原因として調査しなければダメだと思っています。

田原: 事故調査委員会って何をやっているんですか。何をやっているんだかわけがわからない。事故調査委員会なんて、あんなのは全部オープンにすればいいんですよ。まったく極秘でやってるんですが、なんであれは秘密でやっているんですかね。

馬淵: 私は国交大臣をやっていましたが、たとえば鉄道事故や航空機事故の調査の段階ではいろいろな事情聴取もしますから、それをオープンにやると、だれかが嘘を吐いたときに辻褄合わせをされると困るという事情があります。ですから、情報をしっかり秘匿しながら管理して、刑事捜査に近いレベルで実態を明らかにする必要はあると思いますよ。

田原: そんなことを言ったら、国民の多くは、東電や経産省、保安委員たちは隠蔽ばっかりやっていると思っていますよ。政府に対する不信感があるわけですよね。「TKKが日本をダメにする」って言葉があるんですが、Tは東電、Kは経産省、もう一つのKは経団連、この三つが日本をダメにするというわけで、何が問題かというと隠蔽体質だというんですよ。

馬淵: ただ、いずれにせよ事故調査の結果も最終的には国民に対して明らかにされますからね。私としては、事故調査の段階で何でも公開せよというのは、ちょっと行きすぎじゃないかと思います。

田原: なるほど、そうですか。では話を戻すと、津波だけが原因ではないかもしれない、地震も原因として調査しなければならないということですね。

馬淵: つまり、微振動に対しても十分に基準の見直しが必要じゃないか、ということを私は問題視しています。54基の原発について、微振動と津波について本当に大丈夫かという安全基準の見直しを図れば、根本的な考え方が変わるわけですから、それに対する安全対策が講じられるわけです。そして、それができたものについては順次再稼働していくことが可能ですよ。そうすると多分、再稼働できないところも出てきます。

 つまり、原発への依存度が下がるわけで、全体として原発からの電力供給は減ります。そして、それが減ること自体は是とせざるを得ない。しかし、一方で原発依存度をゼロにせよというような極端な議論は違うんじゃないか、と申し上げているわけです。

田原: 朝日新聞が広島原爆記念日の8月6日に、でっかい社説で「原発と原爆は同じだ。だから原発は核の平和利用だなんてインチキだ。原発も原爆も両方とも含めて核からの訣別を覚悟しろ」と言っているんですが、これについてはどうですか。

馬淵: 私としては、それは言いすぎじゃないかと思いますけどね。少なくとも原子力の平和利用というのは、わが国に唯一許された核利用の道筋ではあるわけですよ。それを今日まで核兵器を持たずにやってきたわけで、科学と技術のイノベーションによってそれを実現してきました。今回不幸にも事故が起きてしまいましたが、逆にこれを契機として制御技術をしっかりと確立することが非常に重要だと思います。

 日本は資源小国ですから、火力、水力、再生可能、原子力というエネルギーのリソースをちゃんと確保しながら、エネルギーポートフォリオという観点で多様な選択肢を持つということが大事だと思っています。

 もちろんそのうえで技術が確立できないものであれば、それは封じ込めていかなければならない。やめればいいんです。私は原子力の問題は十分人類の叡智によって解決できるだろうと思いますし、その選択肢を捨てるなと申し上げています。

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