円と共通する安全通貨スイスフランの苦悩
スイスフランは、その実力以上に高騰してしまった〔PHOTO〕gettyimages

 為替市場で、わが国の円と並ぶ安全通貨と見られているスイスフランは、過大評価という大きな問題に苦しめられている。ユーロがソブリンリスクなどの要因で売れ込まれると、今までの通例として、スイスフランが逃避先となり多額の資金が流入した。その結果、スイスフランは、その実力以上に高騰してしまったのである。その苦悩は、わが国の円が抱える問題に似ている。

 スイスフランの高騰に業を煮やしたスイスの政策当局は、8月初旬、ついに思い切った対応策を打ってきた。その一つは、市場に圧倒的な流動性を注入することによって、スイスフランの魅力=価値を低下させることであった。それによって、スイスフランの金利水準は大きく低下し、一時、先物市場ではマイナスの水準まで落ち込んだ。

 そうしたスイスの政策当局の思い切った政策の甲斐もあり、足元では、投機筋などのユーロの買い戻しが入り、ユーロが強含む一方、スイスフランが弱含みの展開になっている。しかし、問題は、その効果が、どの程度持続できるかだ。市場関係者の中には、「ユーロの問題が解決しない間は、効果は長続きしないだろう」との見方がある。

自国経済を阻害する自国通貨高騰のデメリット

 スイスは、わが国と同様、自国通貨の高騰に悩まされている。特に、スイスの場合、自国の周囲はEU諸国であるため、EUの通貨ユーロが売られるたびに、大量の資金がスイスに流入するとの思惑でスイスフランが買われる。その結果、スイスフランは、実力以上に買い上げられてしまった。ある試算によると、スイスフランの過大評価度は70%を越えるとの見方もある。

 自国通貨が評価されることは、必ずしも悪いことばかりではない。海外からモノを輸入するときには、相対的に安い価格で買って来れるなどのメリットがあるからだ。ただし、輸入物価水準が低下しやすくなるため、デフレに落ちこみ易くなる。また、国内でつくったモノを海外に輸出する場合、自国通貨が高いと、どうしても価格が上昇して輸出がしにくくなるなどのデメリットもある。

 そうしたデメリットを防ぐために、わが国やスイスは、主に為替の介入を行って自国通貨の高騰を防ぐ作戦を採ってきた。ところが、過去の経験から見ると、単独の介入の効果は限られている。わが国やスイスが自国だけで介入を行っても、為替市場の参加者にその限界を見透かされて、結局は、自国通貨の高騰を止めることが出来ないことになってきた。

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