雑誌
浴びれば即死が待っている
福島第一 「10シーベルト」が
意味すること

「東京電力は、『近くで作業をする予定がないから問題はない』との説明をしています。しかし、本当にこれまでの5ヵ月で、その危険な高濃度汚染箇所に近づいた作業員がいなかったのか。しっかりとした調査が必要です」(元東芝の原子炉設計者・後藤政志氏)

 東京電力・福島第一原発の事故処理に、またも重大な問題が発生した。同原発1号機・2号機の原子炉建屋間にある主排気塔の下部などで、毎時10シーベルト(Sv)=1万ミリシーベルト(mSv)超という、異様に高濃度の放射能汚染箇所が発見されたのだ。

 計測した機械が10Svまでしか測れなかったため、実際の放射線量は、これより遥かに高い可能性がある。人間は毎時7Sv以上の放射線を浴びると確実に死に至る。10Sv超など、まさに即死レベルだ。

 東京電力はこの「発見」を、「3月の事故直後にベント(排気)した際に出た放射性物質が、排気塔に溜まっている」などと、あたかも大した問題ではないかのように発表した。しかし、本当にそうなのか。前出・後藤氏はこう指摘する。

「1、2号機の排気塔でそんな数値が出ているなら、当然、3、4号機の同じ場所にも、同じ危険があると考えなければならない。原発敷地内の別の場所にも、どこにそうした高濃度汚染箇所があるか分かりません。作業員が近づけない場所が増えていけば、事故処理の工程にも、当然影響が出てくると思われます」

 実際のところ、福島第一の状況は、政府や東電が説明しているような、「順調に収束に向かっている」状況とはほど遠い。事故対策に関わる政府関係者の一人は、「危険なのは、むしろここから先だ」と語る。

「今までは、ガレキを機械で除去したり、原子炉建屋の外で循環冷却のための配管を設置したりといった、比較的、放射線量が低い場所での作業が大半でした。しかし、これからは建屋の中に人間が入り、燃料棒がメルトダウンして穴が空いている炉心状況の確認作業などが必要になってくる」

 これまでの作業でも、平常時の被曝限度である累積100mSvを超える被曝をした作業員が100人以上いることが確認されている。今後、即死レベルの危険地帯がある建屋内での作業が増えれば、どれほどの被曝量になるのか、見当もつかない。

「10Svの箇所では、3mの距離から放射線量を計っただけの作業員が、4mSvもの被曝をしてしまった。このまま被曝量が増えていけば、想定しているよりずっと早く、作業員の数が足りなくなる」(同関係者)

死者が出ないことを祈る

 それでなくとも、現場の作業員たちの置かれた環境は、どんどん悪化しているという。復旧作業に携わる作業員の一人はこう語る。

「建設関係を中心に作業員の人数が増え、さらに業者によるピンハネもあって、作業員一人あたりの給与や日当が激減しています。いまでは1日1万円にもならない金額で、被曝しながら働いている人がいる。ただでさえ人が足りないというのに、これでは作業員の募集が難しくなるばかり。

 酷暑や猛烈な湿気、そして被曝に怯えながら、現場作業員はなんとか踏みとどまっていますが、そのうち、何か大きな事故が起きるのではないかと、心配でなりません」

 作業員たちの労働環境の悪化のみならず、そもそも各原子炉も、依然として予断を許さない状況だ。

 東京電力が8月3日に経産省原子力安全・保安院に提出した報告書によれば、現時点で炉心への注水機能が失われた場合、メルトダウンした燃料に残る崩壊熱により、1号機~3号機は13~15時間で原子炉の温度が1200度に達するとしている。

 福島第一で行われている注水作業については、循環システムの度重なる故障や、稼働効率の悪さが伝えられている。システムが動き出して1ヵ月以上が経過しているのに、高濃度汚染水は減らず、むしろ増えているのが現実だ。

 だが、もしそれが何らかの理由で完全に止まれば、半日後にはまたしても水素爆発や、さらに深刻な水蒸気爆発を起こす可能性さえあるということだ。

 こんな綱渡りの状況にもかかわらず、「収束に向かっている」などと喧伝し続ける政府と東電の態度は、まったく理解できない。

「爆発的事象の起きる可能性は、確かに以前に比べれば減っているかもしれませんが、だからと言ってそれが安全だと言えるわけではない。メルトダウンして格納容器の密閉性が失われてしまったという時点で、本来は人間が制御できる範疇を超えてしまっていることを忘れてはなりません。

 いまも福島第一は、緊急事態中の緊急事態にあることは間違いないのです。政府と東電は、希望的観測ばかりを言うのではなく、きちんと事実を伝える必要があります」(前出・後藤氏)

 政府・東電による、もっとも〝楽観的〟なシナリオでも、福島第一で溶けた燃料棒の取り出し作業に着手できるのは、10年後である。完全収束には数十年どころか、それ以上の歳月を要するだろう。われわれは、なんという負の遺産を抱え込んでしまったのか。

「週刊現代」2011年8月20日・27日号より

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