菅政権が隠蔽した仙谷「メリ・デメ表」と古賀レポート
隠されたのは尖閣ビデオだけではない

 先週は、北朝鮮の砲撃事件とともに柳田稔法相辞任、仙谷由人官房長官らの問責決議と盛りだくさんだった。 国民の多くは民主党にあきれているが、それは政権交代前に期待していたものをことごとく裏切られているからだ。
 
 民主党が政権交代前に主張していたことには魅力的なものが多かった。一つは情報公開の姿勢だ。閉鎖的な記者クラブ制をオープンなものにするといっていたのも新鮮だった。いくつかの省庁では記者会見のオープン化も進んだ。しかし、ここにきて、情報公開と逆の方に向かっている。

 尖閣ビデオは典型だ。沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船による衝突事件で、当初は前原誠司国交相(当時)は、ビデオをみれば一目瞭然といっていたのに公表せず、中国に有効な圧力をかけられないまま流出にいたった。おそらく当初は公開が前提だったのだろう。それがあるときから非公開に方向転換した。国民は流出させた海上保安官に同情的だ。
 
先の参院選で、民主党は情報公開法の改正を公約していた。民主党の外交や経済政策はまったくダメだが、自民党がまったく言及しない分野でいいことをいっていると思っていた。ところが、実際には情報公開法改正どころか、その真逆のことをしている。
 
11月9日開かれた衆院予算委員会で、仙谷官房長官が審議に持参した資料が撮影され、同日付読売新聞夕刊に掲載された。中国漁船による衝突事件のビデオの一般公開についてそのメリット・デメリットが書かれたその資料を、仙谷氏は国会審議中に菅直人首相に示している。この資料を私的メモと国会で答弁した。それに対して、中川秀直衆議院議員が、質問主意書で問いただしたところ、26日、政府から回答があった。
 
その回答は閣議決定を経ており、正式な政府見解である。一見些細な話のようだが、情報公開法の根幹を揺るがす大きな問題がある。
 
政府の回答では、その資料は、官房長官の指示を受けた内閣事務官が「職務上作成した」文書であるが、「組織的に用いるもの」でないので、情報公開法の「行政文書」ではないとしている。情報公開法は、広く対象を定めるために、「職務上作成」、「組織的に用いるもの」という要件を定め、個人のためのメモ以外は対象になるようになっている。
 
私は、新聞に掲載された資料をみて、いわゆる「メリ・デメ表」だとすぐわかった。これは、案件の可否を検討するときにメリットとデメリットを考えられる限り書いて、議論するためのものだ。議論の過程でメリット・デメリットが書き加えられることもある。

政府答弁は、その資料について「職務上作成」は認めたものの、「組織的に用いるもの」でないというが、そんなはずない。
 
私は、情報公開法に関わっていたが、役所のパソコンを使って書いた文書は上司に見せたら、「行政文書」という運用だった。自分に以外に職場の二人がみていたら、行政文書になるというのは、霞ヶ関の常識のである。
 

 ちなみに、2009年6月、情報公開法とともに重要な公文書管理法が制定されたが、その国会審議でも同様な議論が行われている詳しくは、中川秀直事務所公式ブログ  を参照。
 
霞ヶ関では、課長が局長に了解をもらうとき、部下にその内容を口頭でいい、それを部下が文書にして、課長がそれで局長に説明するというのは日常よくある話だ。この部下を内閣事務官、課長を仙谷官房長官、局長を菅総理と置き換えると、国会で見られた光景は、日常業務そのもので、その資料が私的メモで行政文書というなら、行政文書はほとんどなくなってしまう。そうなったら、情報公開を請求しても、行政文書でなく私的メモだからという理由で、国民の知る権利はなくなってしまう。

最近、霞ヶ関では、開示請求の対象とならないようにいかに個人メモとしての体裁を整えるかに熱心になっているという。今回の政府回答もこうした官僚の悪知恵を背景にしている。
 

削除された3ページの「結論」

 尖閣ビデオの一般非公開方針は、政府の中でも隠蔽体質を生んでいる。

 政府の公務員改革を実名で批判した経産省大臣官房付の古賀茂明氏(55)に対して、掲載した直後に約2週間にわたり、地域経済の調査名目で北海道や九州への出張を命じられている。それ自体がいじめではないかとも思えるが、その出張報告が衆議院予算委員会に出された。

 ところが、その中で末尾3ページ分の「所感」と題した結論部分が削除されていた。その箇所は、河野太郎衆議院議員のブログに掲載されているが、国の出先機関が中小企業政策を担うことに限界があることを指摘するなど、なかなかおもしろい。
 
情報は一部を隠すとそれを取り繕うために別も隠すというような情報隠蔽の悪循環に、菅政権は陥っている。

尖閣ビデオもまだ一般公開されていない。個人メモと称する資料も内容はすでに公開されているのに開示請求対象になる行政文書ではないと言い張り続ける。古賀さんの出張報告も表に出ているのに削除するから、余計に役所の隠蔽体質を印象つける。出した方がその後の対応が楽になるはずなのに、隠し続けて、墓穴を掘っているのは、なんとも滑稽だ。

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