「原発」被害では片付けられない負債総額4300億円「今年最大の倒産」となった和牛商法「安愚楽牧場」が抱える根源的問題
「安愚楽牧場」HP

 負債総額4300億円---今年最大の倒産となった安愚楽牧場は、債権者の大半が一般投資家で、返済率が10%に満たないことが予想されるだけに、刑事事件への進展も含め、今後、社会問題化することは必至だ。

 「本年3月11日の東日本大震災以降、福島第一原子力発電所の放射線漏れ事故による牛の放牧制限、放射性セシウムの検出による出荷制限等と、同社の経営は大きな制限・打撃を受け・・・」

 債権者に送られた代理人弁護士の「通知書」(8月1日付)にはこう書かれていた。「風評被害」も含めて、原発事故の被害者であるという認識で、事実、安愚楽牧場は補償を求める方針を明らかにしている。

「原発」「口蹄疫」「飼料高騰」だけが原因ではない

 昨年には宮崎県で口蹄疫問題が発生、安愚楽牧場では約1万5000頭を「殺処分」にした。この時は農林水産省が約88億円を補償、直接の被害は免れたものの、「牛の異状について通報に遅れがあった」として宮崎県から改善指導を受け、また同社の姿勢を地元紙から厳しく批判され、イメージの低下は免れなかった。

 加えて、ここ数年で急激に高騰した飼料問題もある。20年近く、和牛の販売価格は卸、小売価格ともに横這いかデフレ経済を映して下落。そうした状況下で、飼料の高騰と口蹄疫問題で打撃を受け、さらに福島原発事故でとどめを刺された。

 「3重苦」が安愚楽牧場を襲ったのは確かだが、4300億円の負債総額で預託金を拠出したオーナー(投資家)が7万3000人にのぼるという被害規模は、「和牛預託商法」というビジネスモデルそのものの破たんがもたらしたものである。

 あなたも「和牛」のオーナーになりませんか---。

 高原、農村、和牛の三点セットの写真を使い、"牧歌的"な装いを凝らしたパンフレットで投資家を誘い込む「和牛預託商法」がブームになったのは、1996年以降の数年間だった。

 当時、金融界は、証券・銀行が次々に倒産、どこも信用できないという状況のなかで、「和牛」は確かさを感じさせ、しかも3%から高いところでは7%前後の高利を謳い、一口100万円という価格も、投資を誘い込みやすかった。

 「和牛預託商法」は一大ブームとなり、全国に20社近い業者が乱立、株式などの投資に縁のない主婦、老年層を中心にオーナーを集めていった。

 その大半は、詐欺まがいのインチキ業者だった。

 私は、その頃、不動産、金融先物、株式など多種多様なビジネスから転身した「和牛預託商法」の経営者たちを取材した。彼らの多くは、事務所を開き、新聞チラシを配布、肥育牧場と契約して投資のステージを確立しただけで、「びっくりするぐらいカネが集まる」と、悪びれることなく語るのだった。

 また、この商法の特徴は、利回りのほかに「和牛肉を1万円分」といった具合に、投資額に応じて現物支給、オーナーとの"連帯"を売り物にしていた。だが、にわか業者が多いから、牛肉の現物がない。子牛を買っても出荷までに2年はかかるのだから当然で、都内の業者を取材した時には、デパートで牛肉を購入、社員が事務所で段ボールに詰め、クール宅急便でオーナーに送る場面に遭遇、唖然とした覚えがある。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら