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福市氏/そうです。トヨタではまず「アンダープライオリティ」といって、バンパーの下部を強調するフロントマスクを採用します。マスクの上部は「キーンルック」といってライトをシャープな目つきに仕上げる。FT‐86などがこれを採用していますが、一番わかりやすいのはジュネーブショーで出展したヴィッツのハイブリッド版です。

編集部/トヨタ車すべてがああいうデザインになっていくということですか?

福市氏/統一するのはあくまで「考え方」です。そっくりなクルマがたくさん出てくるわけではありません。日本市場では幸いにして5割弱(除軽)の販売シェアがありますけども、交差点に並んだクルマが全部同じ顔になったら、これはちょっと変です。

今年3月のジュネーブショーに出展された「ヤリスHSD」は欧州仕様のヴィッツハイブリッド

編集部/変というか怖いです。

福市氏/ただそれも難しい話でして、例えば欧州市場ではトヨタのシェアは4%しかないわけです。そういう場所で、トヨタ車がそれぞれまったく別の顔をしていたら誰も「あれはトヨタ車だ」とは思ってくれなくなるでしょう。

編集部/市場によって戦略を変えていくということですね。

こちらは昨年12月に発売されたヴィッツ。トヨタの新しいテイストが反映されているデザインになっている

福市氏/もちろんそうです。欧州は欧州、米国は米国、日本も中国も、それぞれ戦略を変えていかないといけないでしょう。

編集部/市場によってデザインを変えていくとなると、営業部などから反発もあるのでは?

福市氏/それは、変えようとしているのだから反発はありますよ(笑)。これも持論ですが、いろいろな人から意見を聞いて、それぞれの要望を少しずつ聞いて、なるべく多くの人に納得してもらうような製品を作ると、それは当然コンサバ(保守的)なものになるんです。「トヨタのクルマは破綻もないけど魅力もないよね」となってしまう。けれど、じゃあ皆さんバッグなり靴なり洋服なり、ブランドものをお持ちですか?

 そのブランドものの魅力はどこですか? と聞いてみると、「個性です」とおっしゃる。もちろんそこには裏打ちされた性能と品質があるでしょう。カバンとして丈夫で使いやすくなくてはならない。これはクルマでも同じです。丈夫で使いやすく、クルマの性能が優れてなければならない。個性というのはそのうえで成り立つものです。

何気なく描いた一枚のスケッチ

 初代エスティマのデザイナー」というイメージが強いのですけども……あのクルマこそ「機能性と個性を両立させ、その後【カッコいい】というふうに普遍化したデザイン」の代表だと思うのですが……。初代エスティマを描いた頃の話を伺えますか?

福市氏/あれは僕がCALTY(キャルティ/トヨタが米国ニューポートビーチとアナーバーに設置したデザインスタジオ)にいた頃にデザインしました。エスティマはもともと先行車両として何度かCALTYにデザインを依頼されており、3回目だったかな、僕にチャンスが回ってきました。丸いのから四角いのからあれこれ描いて提出したんですが、当時の上司からOKが出ずに、それでも前日までに何枚か仕上げて、スライドに映すために写真撮って現像に出して……提出期限の1日前はスポーツカーの絵などを描きながらぼーっと過ごしてたんですね。

編集部/ぼーっと。

福市氏/その時、何を思ったのかその下に、丸っこい楕円形のクルマを描いてみたんです。そしたら、あ、これいいなあと思うものが描けました。正式にスケッチに起こすには時間がないので大急ぎでハイライトレンダリングで仕上げました。で、前から用意していたスライドを上司に見せると、あれもダメ、これもダメ……といわれて、最後の最後に「これ、大急ぎで描いたものなんですが……」と1日前に描いた楕円形のデザインを見せたら「これだよ!」といわれました。

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