「就職協定復活」では就職活動長期化の解決にはならない
過剰雇用のしわ寄せを新卒採用にばかり負わせるな

 大手総合商社7社が、日本経団連に対して、2013年度の採用から、大学生の採用活動開始を4年生の4月以降にするよう要請した。就職協定復活の提案である。理由は、現在、学生の就職活動が3年生時に前倒しされており、学業に悪影響が出ているからだという。

学業に悪影響という現象自体は、半ばは納得できる。早くから就職活動が始まると、全体として就職活動が長期化しがちだし、早く内定を取った学生は学業気分を早々に卒業してしまうのが人情だ。

大学も一種のサービス業なので、就職内定が決まった学生に対して厳しい単位認定で臨んで、「内定は取れたけれども、卒業ができない」という状況を大量発生させるわけにはいかない。「学業のため」だけを言うなら、本当は、大学が単位認定を厳しくして、内定を取った学生でも学力が不十分な場合大学を卒業させなければ、ある程度学業のモチベーションが保てるはずだ。しかし、大学経営上も、多くの教師の心情のうえでも、これは難しいだろう。学力的には、とても大学卒業水準に達していない学生を大量に卒業させて社会に送り出しているのが現実だ。

だが、幸か不幸か、企業の側は、そもそも学生が大学で身に着けた知識、ひいては学力に期待していない。企業が欲しいのは、かつても今も、①地頭が良くて、②目標達成動機が強く、③性格が良くて使いやすい、青年だ。

③は面接で見るとしても、①、②の判断材料は、大学の「卒業」よりも「入学試験」だ。大学人としては残念なところだが、現実問題としては、「青田買い」は企業にとって合理的だし、企業にとって人材採用は一大事だ。

若年雇用の海外流出を促進する可能性も

 ただ、現実的に考えてみて、採用活動が本当に全産業・全社一丸となって遅くなるのなら、学業にはいくらかプラスだろうとは思う。

しかし、かつての就職協定は、実質的にこれを破る企業が続出して、結局形骸化して、現在の自由競争になったのだった。実効性のある就職協定を作ることは難しい。

まして、日本企業の人材の採用は国をまたぐようになっている。日本国内で協定にこだわると、企業の競争力を阻害しかねないし、若年雇用の海外流出を促進してしまう可能性もある。

大手総合商社は学生の人気があるので、大学教育に対する協力姿勢を示す余裕があろうから、自分たちの業界だけで自主規制をしてみせて天下に誇るのも勝手だ。しかし、新卒採用に関する、自由競争は仕方がないのではないか。

学生からの人気が一流レベルでない会社の場合、(人気の)一流どころの内定時期が遅くなると、なかなか自社の内定学生を確定できないという問題が出てくるだろう。せっかく内定を出していい学生を確保できたと思っても、一流どころの内定が後から出て、内定学生に辞退される可能性がある。


協定の実効性の点でも、日本の企業にとっての合理性の点でも、新卒の採用時期に関する「協定」はないほうがいい。解決策は、むしろ自由な採用活動と両立する雇用の仕組みを作ることではないだろうか。

協定よりも法制化がいいと思うが、全産業で採用すべきルールの第一は「新卒」という区分による差別を廃止することではないか。現役の大学卒業年次から2年遅れまで、あるいは特例で3年遅れまでを「新卒」として採るという、年齢による差別には、積極的に賛成できる理由が思い当たらない。

敢えていえば、新卒採用は、企業が年次に基づく給与テーブルなどの人事管理をやりやすくしているだけだ。しかし、企業はこうした横着な制度を早く止めて、個々の社員の能力によって仕事を与え、達成した成果に対して報酬を支払う仕組みに変えて行くべきではないか。

もちろん、本人の能力や個々の事情にかかわらず、23歳なら良くて、26歳は採用しないという選別は、差別的だ。

同様の意味で「定年」も年齢による差別だから、将来は、「年齢を原因として雇用するか否かを決めてはいけない」という年齢差別禁止の原則に移行すべきだろう。

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