アメリカの大学生たちが必死に勉強する理由(その1)
全寮制が勉強を後押しする!

2011年08月22日(月) 田村 耕太郎

 学生と教員双方に聞いてみると、「ここの学生は慢性の睡眠不足なんですよ」と教えてくれた。ハーバード大学の学部で教えている藤平新樹先生によると「ここの学生の平均睡眠時間は3-4時間くらいなんですよ」という。勉強、クラブ活動、ボランティア、パーティー等アメリカの学部生は実に多忙だ。

 エール大の古賀健太君、ハーバード大の岡洋平君らに聞いてみると「授業以外は殆ど勉強してます。一日8時間くらいはやってますね」という。とにかくよく勉強するのだ。

 その勉強をサポートするシステムが素晴らしいのだ。エール大学の学部はレジデンシャルカレッジ制を採用している。これが素晴らしい。

充実した寮環境

 入学と同時に新入生は、ランダムに12ある(レジデンシャルカレッジ)寮のひとつに振り分けられる。寮が素晴らしい。寮ごとに図書館、ジム、ビリヤードやカードゲームのプレールーム、食堂、コモンルームと言われるラウンジ等が設置されている。ジムも最新式のマシンが並び、全ての場所で高速ワイヤレスのネット接続できる。食堂も寮ごとに味を競うため結構うまい。日本の食べログのようなサイト、“イエルプ"にエール大の各カレッジ(寮)の食堂の評価が学生によって格付けレビューが掲載されているほどだ。

 勉強のサポートも充実。各寮に教授陣やPhDの学生も住み込んでおり、いつでも勉強を教えてくれる。ハーバード大学の小林亮介君は「PhDの人は本当に頭がいい。教えるのがうまいから、勉強が面白くなり、好きになるのです。彼はあこがれです。ああいう人に学部時代からじかに触れられるのが幸せです。あの人みたいになりたいからPhDに行きたいと今は思っています」と語る。勉強することの有力なロールモデルが身近かに常にいるのだ。

 雪や雨の日は学校の図書館に行かなくても寮の図書館でじっくり勉強できる。寮対抗の運動会等も定期的に企画され、寮に忠誠心を持たせる。エールでは卒業生が、母校を聞かれた場合、エール大と答えるのではなく、自分が暮らしたレジデンシャルカレッジの名前を挙げる人が多い。4年間その寮で学生と彼らの生活全般の面倒を見るマスター、ディーンと呼ばれる教授陣と共同生活を送る。彼らも勉強を教えてくれるし、就職や恋愛や友人関係の悩みを聞いてくれるメンター(後見人)でもある。社会勉強の先生とでもいおうか。この充実した体制の中で、エールの学生は勉強にボランティア活動に遊びにと、忙しい毎日を充実して過ごす。

フェイスブックを生んだ全寮制

 寮をカレッジと名付け、違う学校のように扱うエールほどではないが、ハーバードも全寮制で寮ごとに施設を充実させている。

 エール大の古賀君やハーバード大の小林君によると、「この集団生活が最高に楽しいです。彼らが必死に勉強する姿勢から刺激を受けるし、他愛もない話で盛り上がるのも友情を深められる」「皆でパーティーや海外旅行のための資金集めの企画をしたり、起業のアイデアをぶつけあったりするのもワクワクします」ととても楽しそうだ。実際、フェイスブックの創始者、マーク・ザッカーバーグも寮生活でのやり取りからフェイスブックを立ち上げた。将来のフェイスブック級に育つ会社のアイデアが今どこかの寮で議論されているかもしれない。




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田村 耕太郎

(たむら・こうたろう) 前参議院議員。エール大学上席研究員、ハーバード大学研究員などを経て、世界で最も多くのノーベル賞受賞者を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で唯一の日本人研究員を務めた。
国立シンガポール大学公共政策大学院名誉顧問、新日本海新聞社取締役東京支社長。
1963年生まれ。早稲田大学卒業、慶応義塾大学大学院修了(MBA取得)。デューク大学ロースクール修了(法学修士)、エール大学大学院修了(経済学修士)、オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了、ハーバード大学ケネディスクール危機管理プログラム修了、スタンフォード大学ビジネススクールEコマースプログラム修了、東京大学EMP修了。
2002年から10年まで参議院議員を務めた間、内閣府大臣政務官(経済財政、金融、再チャレンジ担当)、参議院国土交通委員長などを歴任。
シンガポールの国父リー・クアンユー氏との親交を始め、欧米やインドの政治家、富豪、グローバル企業経営者たちに幅広い人脈を持つ。世界の政治、金融、研究の第一線で戦い続けてきた数少ない日本人の一人。
2014年8月、シンガポールにアジアの地政学リスクを分析するシンクタンク「日本戦略情報機構(JII)」を設立。また、国立シンガポール大学(NUS)リー・クワンユー公共政策大学院の兼任教授に就任し、日本の政府関係者やビジネスリーダーに向けたアジア地政学研修を同校教授陣とともに実施する。
著書に『君に、世界との戦い方を教えよう 「グローバルの覇者をめざす教育」の最前線から』などがある。