1兆円以上の財源を生む「周波数オークション」を業者への配慮で見送った「周波数官僚」
OECD加盟国では当たり前なのに

 国家予算の48%にあたる44兆3030億円が国債などの公債金によって賄われるという深刻な財政危機に伴い、消費税の引き上げまで取り沙汰される中で、「1兆円を超す」と見込まれる有望な財源の歳入化が見送られようとしている。

 その財源は、競争入札によって、携帯電話用の周波数を割り当てる「周波数オークション」だ。

 周波数オークションをきちんと財源として確立することが絶望視される背景に、「周波数官僚」による一部携帯電話会社に対するなんとも不思議な配慮と、周波数を利権とみなす発想が存在することは見逃せない。

 周波数オークションとは、文字通り、政府が、放送局や通信事業者に対して、周波数を割り当てる際に、オークション(競争入札)によって決定する方法である。

 これまで日本では、放送局や通信事業者が提出した事業計画書などをもとにして、事業の採算や将来性、安定性などを勘案して、周波数を割り当てる事業者を決める「ビューティ・コンテスト方式」が行われてきた。

 オークション方式は、ビューティ・コンテスト方式と異なり、経済情勢に応じて投機的な高値落札を招き、当該企業の経営やサービスが不安定になる懸念がある半面、周波数の割り当て手続きが透明化するほか、国庫への納付金が増えるメリットがあるとされてきた。

 興味深いのが、大阪大学の鬼木甫名誉教授が作成したレポート「海外における電波オークション落札価格と日本における落札価格の推定」に盛り込まれた内容だ。

 同教授はまず、オークションの普及状況を調査し、すでに米国、英国、イタリア、カナダ、韓国、ドイツ、フランスなど経済協力開発機構(OECD)加盟30ヵ国のうち24ヵ国がオークションを採用しているのに対して、未採用国はスペイン、フィンランド、日本などわずか6ヵ国にとどまると指摘する。

 そのうえで、日本でオークションを実施した場合の推定落札価格を試算している。それによると、大手携帯電話会社の事業者収入をベースに、第3、第4携帯電話向けに帯域幅60MHzの周波数を入札にかけると仮定した場合、推定で、その落札価格は最大約1.3兆円なると見込まれるという。

 だが、当の総務省は、周波数オークションの導入に慎重だ。

 同省の「グローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース」の「ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数検討ワーキンググループ」が9月17日にまとめた「次期電波利用料の見直しに関する基本方針」は、オークションについて「電波の公平かつ能率的な利用、免許手続きの透明性確保等の観点から、市場原理を活用するオークション導入は十分検討に値するもの」ともちあげている。

 しかし、留意すべき点として「オークションの導入は免許人に新たな負担を課すことであり、十分な説明が必要」「先行事業者との間で競争政策上の問題が生じないよう対象を選定すべきだ」「オークションの導入について本格的な議論を行い、その必要性・合理性をオークション導入の目的・効果に照らして検証し、国民に示していくべき」などと課題を列挙して、時間をかける方針を掲げている、

 さらに、「周波数再編の費用負担(言わば、電波の立ち退き料)についても、できるだけ市場原理の活用ができないか検討を行うべきと、疑似的なオークションを実験的に先行させる構えも明らかにしている。その入札においては、落札額の上限を設け、一定の金額を超える部分は徴収せず切り捨てる案も有力という。

「次の業者」や「次の次」まで決めている不可解

 これに対して、専門家からは「立ち退き料限定とは言っても、この入札に勝てば、周波数を獲得できるのであれば、応札価格は高騰し、上限にいくつもの応札が張りつく可能性が出てくる」という。

 ところが、そうした場合、総務省は周波数割り当てをビューティ・コンテストでやり直すというのである。結局のところ、総務省は時間稼ぎをしているだけで、本格的にオークションをやる気などないようにみえる。

 こうした総務省の姿勢の裏にあるのは、すでにNTTドコモとau(KDDI)がビューティ・コンテスト方式で、次世代携帯電話(LTE、第3.9世代携帯電話)用の周波数を獲得しているのに、次(ソフトバンク)やその次(イー・モバイル)には、ビューティ・コンテストをやめて、多額の応札資金が必要になる可能性の高いオークションに切り替えるとは言いにくいという議論が根強い。

 しかし、本来、新たな携帯電話事業者の参入に尽力すべき立場の総務省の周波数官僚が、次はソフトバンクとか、次の次はイー・モバイルなどとこの時点から決めていることは、なんとも不可解な話と言わざるを得ない。

 加えて、前述の鬼木教授の試算で明らかになったように、周波数官僚は、周波数オークションが巨額の財源になる余地があるにもかかわらず、この財政危機の最中に導入することを歓迎していないという。

 国家全体で見れば、なんともちぐはぐな話と言わざるを得ないのが実情だ。

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