「弱腰」「ウソつき」民主党は、もういらない!
国民総スカン仙谷官房長官に下った
「尖閣ビデオ」の鉄槌

海保職員が決意の自白「私が流出させました」
自民党の棚橋泰文議員からの追及に、仙谷由人氏は眼鏡を外して睨みを利かせた(11月8日)

[写真:鬼怒川 毅 眞野公一 朝井 豊 橋本 昇 大鶴浩司]

 デヴィ夫人が「正義の月光仮面『sengoku38』」と書いたのをはじめ、ネットには尖閣ビデオを流した"犯人"を讃える言説が溢れる。流出を自白した海保職員をめぐり、菅内閣の「裁き」が試される

 「sengoku38」は、海上保安庁の職員だった―。尖閣諸島沖で、中国の漁船が挑発的に海上保安庁の巡視船に当て逃げしたその一部始終を収めた映像が、「sengoku38」の名前で動画投稿サイト「You Tube」にアップされた(流出映像は計44分)事件で、11月10日、第5管区海上保安本部(5管)神戸海上保安部所属で巡視艇「うらなみ」に乗り込む43歳の主任航海士が、「自分が映像を流出させた」と上司に自白したのだ。

 巡視艇で航行中だったこの職員は帰港して、この日の午後から5管本部(神戸市)で警視庁の事情聴取を受けている(同日午後7時現在)。警視庁関係者が状況を明かす。

「映像が神戸市中央区のインターネットカフェから配信されていたことなどから、当初から神戸にある5管は重要な捜査対象でした。海保が所有するパソコンのうち、映像がコピーされた形跡のある数台が判明し、ビデオのコピーが2分半〜11分半の計6本、合計で約44分になることが、すぐに分かったのです。

 You Tubeにアップされたのと同じ44分です。つまり、海保の所有する映像を海保内でコピーし、それをそのまま流出させたという単純な手口だったため、すでに容疑者を特定して故意性を立証しようとしていたところに、『海保職員、自白』の一報が入ったのです」

「sengoku38」が投稿した衝突の瞬間の映像は、コピーされたものを含めると無数に再生された(「You Tube」より)
情報を流出させた主任航海士が乗っていた巡視艇「うらなみ」。船内の実質ナンバー3で、航海中に上司に告白を始めたという

 おさらいするが、菅直人首相(64)は、この映像を国民の目に触れさせないという判断を下した。衆・参予算委員会の理事ら約30人にさえ、2時間41分にわたる犯罪行為を、6分50秒に加工したヴァージョンしか公開しなかった。ただひたすら中国に気遣った末の判断である。

 石垣海上保安部が隊員の研修用に編集した映像が、サイトにアップされたのは11月4日である。この瞬間、土下座外交は意味を失った。そして情報流出の第一報を聞いた政権トップのテイタラクには、目を覆いたくなる。菅首相に一報を入れたのは寺田学首相補佐官(34)だというが、首相は怒声で応じたという。

捜査当局は、裁判所の令状を取ってGoogleから投稿記録を差し押さえたことで、動画をアップした漫画喫茶を割り出した

「どこだ、どこが流したんだ! 何チャンネルだ!」

 勘違いに気付き、慌ててパソコンに触れる菅首相。だが、「理系の頭脳を持っているのか(菅首相は東京工大卒)、疑ったほど」(民主党幹部)の狼狽ぶりで、パソコンを満足に扱えず、結局、その場で映像を確認することはできなかったようだ。

 続く菅首相の指示は、徹底的に"中国のご機嫌伺い"に重きが置かれた。

「ビデオがネットで配信されていることを、中国はもう知っているのか? この件で中国に何か反応はあるのか? すぐに外務省に問い合わせろ!」

 11月7日から、横浜市のみなとみらい地区を会場にスタートしたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に、中国の胡錦濤(フーヂンタオ)国家主席は映像流出の時点で参加を表明していなかった(8日に出席を発表)。

 胡主席のために菅首相が気を揉んだのは明白だ。一方、同時刻、仙谷由人官房長官(64)は就寝していたようだ。

 起こされて不機嫌だった仙谷氏は、一報を伝えた人間に「観たのか?」と尋ねた。まだ実物を観ていないとの答えに「確認してから、もう一回連絡しろ!」とキレ気味に伝えたという。それから数分後、仙谷氏は舌打ちして言った。

11月6日、中国を糾弾する大規模デモが開かれた。尖閣ビデオ流出問題で、以前より倍以上の人出だった

「(流出源は)海保か、那覇(地検)か」

 東京地検と警視庁は海上保安庁=菅政権からの刑事告発を受けて捜査していたが、"犯人"の急浮上で、逆に頭を抱える状況に陥った。警視庁担当記者が話す。

「海保職員の自白を受け、警視庁、というより検察庁が海保職員の逮捕に極めて慎重な態度を示しました。10月末、警視庁公安部外事三課の極秘資料がネット上に流出しましたが、重要度からすれば、最初から存在を隠していない映像より、あるかないか知る由もない公安情報の流出のほうが由々しき事態です。これで西側諸国は『日本とは情報を共有できない』という認識を持ったでしょう。それに比べ、すでに国会でも取り上げられた映像をサイトにアップした事実を、国家公務員法の情報漏洩に問えるのかという議論があったと聞きます」

衆院予算委員会理事会での海上保安庁の鈴木久泰長官(左)と西川克行法務省刑事局長(11月8日)

 本誌は海保の関係者複数に流出事件について取材したが、あるOBからは、皮肉交じりのこんな答えが返ってきた。

「あの映像が国家の機密と言えるのでしょうか。そもそも、尖閣で起きた事件の本質は、"ビデオが流れて公になった"ことなのですかね」

 11月8日の記者会見で仙谷氏は、

「(尖閣ビデオを)公開して『よくやった』というのか。犯罪行為を称揚することで、そういう気分は日本国中に少々あるかも分からないが、同意はしない」

 と、険しい表情を隠そうともしなかった。だが、海保、民主党には「犯人捜しをするな」という趣旨の電話が殺到しており、「仮に海上保安庁の職員が流出させたことが明らかになったとしたら、その職員は『現代の2・26事件の将校だ』と祀り上げられることになる」(民主党関係者)と、民主党内にも「尖閣ビデオは国民に見せるべきだった」との共通認識が形成されつつある。仙谷氏は世論を読み違えれば、「正しい行いをした人間を、なぜ捕まえる」との集中砲火を浴び、さらなる支持率低下を招くことになろう。

もはや「死に体」の菅首相。政権運営能力という以前に、何がやりたいのかが分からない

 これまで中国の意向を汲んで尖閣ビデオを隠蔽しようとしてきた仙谷氏だが、中国から何らかの譲歩を引き出したという話は聞かない。

 ある外務省キャリアは「仙谷氏が中国に有効な手段で外交実績を挙げた形跡はゼロ」と断じる。

「漁船の衝突事件が起きた後、仙谷氏は9月末に細野豪志前幹事長代理を訪中させ、戴秉国(ダイビングオ)国務委員(副首相級)との会談に持ち込みましたが、外務省を外した二元外交で、政府内の足並みの乱れを中国側に露呈する結果となった。

 細野氏の訪中の仲介をしたのは、日本企業の対中進出に携わる民間コンサルタントで、仙谷氏と長く親交がある篠原令(つかさ)氏。

 細野―戴会談の際、篠原氏と須川清司氏(内閣官房専門調査員)が同席したのだが、須川氏は元銀行の為替ディーラーから民主党職員になった人物。民間人主導の外交という、相手に足元を見られるには十分な条件が揃っていた」(外務省キャリア)

 民主党政権に国民が愛想を尽かしたことを察した仙谷氏は、最近、周囲に「選挙の準備を怠りなく」と忠告しているというから、開いた口が塞がらない。

ビデオ流出後の「密約」

 尖閣ビデオ流出問題は、肝心の中国にどのような影響を与えたのだろう。在日中国人ジャーナリストの徐静波(シュージンボー)氏によれば、中国政府の規制がかかっているが、一部の小規模なサイトでは映像を観ることができるという。徐氏が大学で講演した際、中国人大学生に感想を尋ねると、次のような意見が出たのだという。

「海上保安庁の船のほうが速い。逃げることもできたはずだし、避けることもできたはず。なぜ、そういった措置を取らなかったのか。ぶつかったのは(日本の)意図的なものではないのか」

 漁船からぶつかってきたとしか思えない日本側の見方からすれば、「盗人猛々しい」としか思えないが、大事なことは「尖閣事件は中国人、中国政府にとって過去のことで、映像の流出によって反日感情が高まることもない」という徐氏の分析だ。

 が、その一方、国内で反日→反共運動が高まり、デモの鎮圧に追われる中国政府は、日中の2国間の問題だったはずの尖閣問題を、APECを利用して国際問題化しようとする日本政府に不信感を抱いているのだという。胡錦濤氏がAPEC出席を表明した経緯に、その不信感が表れているという。

APEC会場であるパシフィコ横浜(横浜市西区)周辺で、蛇腹型のバリケードで道路を封鎖
会場周辺に全国から集結した捜査車両がズラリと並ぶ。さながら「パトカーの見本市」であった

「胡主席はまず、ソウルでの主要20ヵ国・地域(G20)首脳会議への出席を、続いてAPECへの出席を表明しました。今回の外交のステージは横浜ではなくソウルであり、日本訪問ではなく国際会議への参加だと強調しているわけで、公式な日中首脳会談に応じない構えと見られます。現時点(11月10日)で、中国外交部にも、その予定は入っていません」(徐氏)

 徐氏の分析を基に言えば、仙谷氏がこだわった「尖閣ビデオ非公開」は、外交カードとしてそれほどの力を持っていなかったことになる。さらに、中国との間に次のような「密約」を結ばされたとの証言もあるのだ。外交委員会で中国とパイプのある自民党議員が明かす。

地元住民も特別に発行された通行証を常時携帯しないとおちおち歩けないほど警官だらけの街

「私が中国当局から直接聞いた話ですが、ビデオ映像が流出した直後に、胡主席をはじめ中国指導部は、『日本政府が意図的に流したのではないか』との疑念を表明し始めた。

 そのままAPECに出席すれば中国軍の対日強硬派が自らに刃を向けてくる。そこで、日本側に胡主席のAPEC出席を約束する代わりに、新たな条件を提示したというのです」

 この自民党議員の情報によれば、

(1)日中外相会談で、前原誠司外相が一連の中国に対する問題発言〈 「東シナ海に領土問題は存在しない。9ミリたりとも (尖閣諸島の領有権を)譲る気はない」など 〉に対する反省を伝える。

(2)日中首脳会談を行う場合、領土問題には一切触れない。映像流出問題も東シナ海のガス田問題にも触れない。議題に上げるのは、戦略的互恵関係の確認と、文化・経済交流の活性化など5項目。

みなとみらい駅周辺で、いきなり空き缶を持ち「爆弾だ!」と騒いだ男を複数の警官が検挙した

 これを裏付けるように、前原外相は11月9日、「短期的な強硬発言や対応は、国民の理解と関心、支持も得られるかもしれない。

 しかし短期的には物足りないと言われることも、中長期的な国民の利益になるという信念を持って取り組」むと発言し、軌道修正を図っているのだ。

 仙谷氏に、対中外交をリードできるほどの力量があるとは、誰も思っていない。

 "新たな密約"を呑まされたのであれば、なおさらだ。それでもパイプのある議員に窓口役を譲らないのであれば、今度こそ「売国奴」の烙印を押されることになる。

みなとみらい地区では、不審物警戒のため、マンホール約2000ヵ所の封印作業が行われた
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