アメリカでシンクタンクが成り立つわけ
政府に政策立案を独占させるな!

アメリカでは、政策の実施に多忙な政府が政策立案を独占していない〔PHOTO〕gettyimages

官僚に政策立案の資格なし

 前回はアメリカの高等教育について書いた。今回は趣向をかえて、もうひとつのアメリカの知の柱、シンクタンクについて触れてみたい。

 なぜアメリカにはシンクタンクが成立するのだろうか? なぜ有能な人材を引き寄せられるのか? なぜ政策決定に影響力を持ちえるのだろうか? アメリカのシンクタンクにいながら、毎日これらの問いに対して仮説を自分でたてながら検証を重ねている。まだまだ完ぺきな答えを出せてはいないが、今のところの私の分析を述べてみたい。

 今回はシンクタンクの設立意義について考えてみる。

 アメリカでは、政策の実施に多忙な政府が政策立案を独占していない。別の意味で言えば、強大な許認可権限を持つ政府に政策立案を独り占めにさせないのだ。故に、政策立案過程を、独立した外部のプロ集団に任せるのだ。一方日本では、政策立案はほぼ政府、つまり霞ヶ関が独占している。政府による政策立案独占は、3つの弊害を生むと思う。

1.質の劣化
2.独立性への疑義
3.官僚組織の疲弊

 1の質の劣化についてだが、日本政府の政策にこれが当てはまることは論を待たない。高度なシンクタンクを持つアメリカでも欠陥ともいえる政策が目立つが、立案には我が国とは比較にならないほど多くの人材と労力が投資されていると思う。

 日本の官僚は優秀だとよく言われる。議員としてそして政府の一員として接してみて確かにそう思う。しかし、国家としての、現代の政策立案に不可欠なスキルセットを持ち合わせているかは疑わしい。金融や財政のプロであるべきはずの財務省も殆どが法学部出身。役所のオンザジョブトレーニングで、財政や金融を学んでいく。人事院による海外留学は盛んだが、取得した学位も修士号まで。現代の政策立案に必要な、統計や数理経済学や公共政策を博士レベルで修めた人材は皆無である。

 そして、だいたい二年のローテーションで異動するので、特定の分野を深く掘り下げる力は養われない。日本政府で最も欠落しているのが統計の専門家。これが内閣府にも財務省にも総務省にもいない。統計の訓練を受けていないものが、国家政策の基礎中の基礎である国家としての統計数字を管理しているのだ。政府のデータが信用に欠けるとしたら、それを基に政策を作る資格が政府にあるだろうか?

 アメリカのシンクタンクには統計はもちろん、各種経済学、公共政策等の分野で博士号を持ち、専門誌に多くの論文が掲載されているクラスの人材が入ってくる。私もすでに米シンクタンクでいくつかのプロジェクトに入り、各国政府向けに出している分析を目の当たりにしているが、私が議員や政務官として各省の政策レクを受けていた時とは、分析や提言の質がまったく違う。

 次に独立性への問題についてだが、莫大な許認可権限を独占している政府自身が、それに関わる政策を独占して作っていくのは国益に対してガバナンスが効いていない状態だ。今回の原発政策でも明らかになったように、経産省と東電の関係のように、役所と業界(天下り関連)の癒着による政策の捻じ曲げられ方は相当国益にダメージを与えている。政府の政策立案プロジェクトをもっとも多く受注しているランド研究所は、本拠地をわざわざ首都ワシントンから遠く離れたサンタモニカに置く。

 幹部は「われわれは政府から仕事はもらう。しかし、政府やロビイストの介入は受けたくない。だからサンタモニカからワシントンへ移らないのだ」と語ってくれた。カリフォルニアにたたずみながら、政府関係者、業界、ロビイストからの影響を遮断しているのだ。いずれにせよ様々な利害のぶつかり合う議会で議論されるのだから、それ以前の国家政策のたたき台はせめて純粋に独立した機関が客観的に行うべきだろう。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら