APEC開催 こんなときに「テロ・公安情報」大流出

「検察崩壊」の次は「公安崩壊」

「これは・・・間違いなく警視庁公安部の文書でしょう。警視庁は公式には絶対に認めないでしょうがね」

 文書を見て、現役の公安部捜査員が言い切った。

 その表情は、苦渋に満ちている。それも当然だろう。絶対にあってはならないことが、現実に起こったのだから。

「11月7日からAPECが開幕し、全国規模で厳戒態勢が敷かれている大変な時期。その直前のタイミングで国際テロ関連の極秘情報が流出したということは、誰かが何らかの意図をもって流したとしか考えられません。誰の犯行にせよ、『検察崩壊』の次は『公安崩壊』になる可能性がある」(前出・捜査員)

 警察組織に激震が走ったのはAPEC開幕のほぼ1週間前の、10月30日、土曜の夕刻だった。夕方5時のニュースで、フジテレビが今回の機密文書流出をスクープし、各社が弾かれたように後追い取材に走った。各社がネット上にばら撒かれたファイルを発見するのに、さほど時間はかからなかった。

 流出資料は実に114点。A4判で印刷して1000ページ近い膨大なもので、内容は公安部外事3課、警察庁、愛知県警の3機関にまたがっている。

 中身の"濃さ"もただごとではない。

 捜査員の顔写真入り身上書、洞爺湖サミットの警備態勢、イラン・イスラム関係の追尾対象者資料、尾行記録、捜査協力者の聴取資料など、国際テロ関連の極秘情報のみが集中的に流されている。これだけの質・内容・量の文書流出は、まさに前代未聞である。

 しかも、後述するように、資料は非常に複雑なコンピュータ操作を経て、ネット上に流されていた。

「文書はすべて、ワープロソフト『一太郎』の形式からPDFという画像形式に変換されているのですが、その変換した場所の記録が、『タイムゾーン-12』のエリア、つまり太平洋のど真ん中のベーカー島やハウランド島などの無人島に設定されているんです。

 その後途中でタイムゾーン設定を切り替え、『+8』のエリア、つまりマレーシア、ブルネイなどにしている。流出元を隠すため、非常に意図的な操作をしていると感じます」(テクニカルライター・佐橋慶信氏)

 つまり今回の事件の特異な点は、これまでのファイル流出事故のように自宅に持ち帰ったファイルがウイルスに感染して偶然流出してしまったというわけではなく、何者かが意図的に流出させた可能性が高いということだ。

「犯人」はいったいどこから、これらのファイルを入手したのか。また、何の意図があって、複雑なコンピュータ操作をして流出させたのか。

 現在、警視庁はサイバーテロ捜査の専門家を中心とした究明チームをつくり、しらみつぶしの調査を行っているという。

 現役公安部幹部はこう話す。

「予定されていた警察庁幹部による羽田空港の新国際線見学は、ことごとく中止になりました。今後、この件にかかわること全般にわたり、文書による箝口令が出て、所轄含め警視庁の全警察官に対して私物パソコンのチェックが入ると思います。まもなく流出した人物も特定されるのではないでしょうか」

 警視庁内部は、「厳戒態勢」だ。幹部は、メディアを通じて資料の中身が暴露されることに、過敏に反応しているという。警察庁のある現役キャリアは、

「犯人が見つかっても地獄、見つからなくても地獄」

 とつぶやいた。仮に警察内部に犯人が見つかった場合、文書が警察のものだと公式に認めることになる。その後の公判でも、警察の機密情報を公開せざるを得ないかもしれない。

 逆に、犯人が見つからなかった場合、第二、第三の犯行が心配される。

 警視庁幹部がそれほど恐れる流出情報の中身とは、どのようなものなのか。

 捜査関係者が「最も機密度が高い」と指摘しているのが「国際テロリズム緊急展開班班員名簿」だ。

 国際テロが起こった場合、ただちに対応にあたるメンバーの極秘名簿だが、中身は詳細を極めている。

 所属、住所氏名、生年月日、自宅・携帯の電話番号などのほか、本人の上半身写真、職業から健康状態まで記載された家族情報、実家など緊急連絡先の住所と電話番号、本人の特技(例えば「英会話」「工業用X線作業主任者」「毒物劇物取扱責任者」等)などが記されており、テロ担当者の情報が、まさに"丸裸"になっているのだ。

 ちなみに本誌が、資料に出ている実家などの連絡先に電話を入れてみたところ、番号はすべてホンモノだった。この資料が、内部から持ち出されたものであることは、間違いなさそうだ。

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