素人外交極まれり、漂流する日本
中国・ロシアとの関係悪化の背景にある「日米関係」の急速な悪化。

 直近の世論調査によると、菅内閣の支持率が急落している。読売新聞では、35%(不支持は55%)、共同通信では32.7%(不支持は48.6%)、JNNでは30.3%(不支持は68.1%)である。いずれも、内閣発足以来最低の数字である。

 この厳しい調査結果には、外交の失敗が大きく影響している。尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件に関して、中国に気を遣うあまり弱腰外交を繰り返してきたことは、国民の怒りを買った。そして、ビデオ流出事件である。情報管理一つまともにできない内閣に、国を統治する資格があるのか。

 そもそもが、情報を迅速に公開しなかったことが判断ミスの発端である。

 次に、時期遅れで意味がなくなった時点で、一部の国家議員にのみ公開するという中途半端な対応を取ってしまった。そして、その挙げ句が、ネット上へのビデオ画像の流出事件である。

 このおかげで国民は狼藉者の中国漁船が体当たりする状況を見ることができた。しかし、情報流出というのは、国家の体をなしていないということであり、失われた国際的な信用ははかりしれない。

 APECが始まったが、首脳外交の場で相手国のリーダーがこのような国に対して本音で語りかけるであろうか。

 中国との関係を今後どのようにして改善していくのか。政治的問題と経済的関係とは切り離すことができないことを前提に、手を結ぶことができる分野から実績を積み重ねるしかない。来年は、辛亥革命100周年である。

 宮崎滔天、梅屋庄吉、犬養毅、頭山満のように孫文を助けた日本人が数多くいる。この一世紀の日中関係を振り返り、未来へ向かって何ができるのか、とりわけ若い世代の交流を基軸に両国関係を再建する覚悟が、日中双方に必要である。そして、国益を守るために、必要な力を保持し、原則を枉げない交渉態度が不可欠である。

 ロシアとの関係もまた悪化している。先日メドベージェフ大統領が国後島を訪問したが、これが日本国民の感情を逆撫でした。ロシアは北方領土のロシア化を進めており、今回の訪問もその一環であった。中国漁船衝突事件で日本が取った軟弱路線を見て、第二次大戦後の実効支配の現状を世界に見せつけようとしたのであろう。

 四島返還の旗を降ろさずに、経済カードも使いながらロシアと粘り強く交渉していくしかない。陸続きの中国との競争関係を念頭に置けば、ロシアは日本との経済関係の強化を望むであろう。今回、日本政府は在モスクワ大使を一時帰国させることでお茶を濁したが、もう少し強硬な抗議をしてもよかったのではあるまいか。

 しかも、この一時帰国にしても、河野大使の必ずしも正鵠を得ているとは思えない説明を聴取しただけで、APEC前の7日に大使を帰任させてしまった。まさに素人外交極まれりといった感じである。

 中国やロシアとの関係悪化の背景には、日米関係がある。言うまでもなく、日本外交の基軸は日米安保条約であり、良好な日米関係こそが、他国が日本を侮らない前提なのである。ところが、民主党政権は、普天間問題をはじめ、急速に日米関係を悪化させてしまった。

 つまり、日本にとっての屋台骨が揺るいだのであり、その状況を見て、北京やモスクワが手を出してきたと言えよう。日米関係の修復もまた大きな課題である。

大臣が替わると方針が変わる

 TPPにしても、交渉は開始すると表明したものの、参加を明言したわけではない。自民党政権のときと同様な決着である。国際システムが大きく変化しているときに、多国間の自由貿易ネットワークの構築に積極的に関与すべきである。そのときに一定のコストは必要である。

 コメ農家などに対して単に補助金を支払う発想のみではなく、日本の農業が国際競争力を持つ産業に転換するための方策を考えなければならない。日本は世界第5位の農業大国であり、産品の質については世界のトップクラスにあることを自覚しておいてよい。その上で、構造改革に伴う痛みは国民全体で背負わなければなるまい。

 国内に目を転じれば、小沢一郎氏は政治とカネの問題について一向に国会で説明する気はない。また馬淵国交大臣は、八ッ場ダム建設中止の棚上げを表明した。

 大臣が替わると方針が変わるようなら、政権の信頼性もマニフェストの意味も揺らいでしまう。しかも前任者の前原大臣は横滑りで閣内にいるのである。いったいこの政権は日本をどうしようというのであろうか。

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