NTT株売却や電波利用料の値上げは誤り
復興財源には「電波オークション」が最良の選択だ

OECD加盟国では常識
NTT株の売却計画にご執心なのは、民主党の岡田克也幹事長だ〔PHOTO〕gettyimages

 「東日本大震災の復興財源」という錦の御旗の下、政府が保有するNTT株の売却計画や携帯電話の電波利用料の引き上げ論が注目を集めている。

 しかし、この2つは、日本の安全保障や経済の成長力、通信会社の公共性を脅かしかねない誤った政策である。

 復興財源を電気通信市場に求めるのならば、値上げせずに既存の電波利用料の中から無駄を洗い出すとか、先進国で導入していないのは日本ぐらいとなってしまった「携帯電話の周波数オークション」(入札)を導入するといった政策こそ王道ではないだろうか。

欧州裁判所の判決で「黄金株」は机上の空論に

 まず、NTT株の売却計画とその危うさを検証してみよう。

 この計画にご執心なのは、民主党の岡田克也幹事長だ。党内の反発で復興増税の明記に失敗したのと前後して、7月24日。視察に訪れた福島県郡山市で記者会見し「NTTやJTの株についても法改正が必要であり、そういうことについても議論の遡上にあがっている」と切り出した。

 さらに、8月3日には、東京・有楽町の日本外国特派員協会で講演、「拒否権を考えると3分の1を持つことになるが、別のやり方もあるのではないか」と述べ、黄金株の付与を念頭においていることも示唆した。

 しかし、黄金株は机上の空論だ。というのは、2006年の会社法改正で黄金株の発行に道を開いた日本と異なり、世界では黄金株は廃止の方向に向かっているからだ。

 黄金株とは、通常、ある企業について、1株だけ存在し、その株だけが様々な問題に関する拒否権を行使できる"スーパー株式"のことをいう。

 もともとはサッチャー政権下の英国で国営企業の民営化を円滑に進める狙いで導入されたのが始まりだが、当時から一定期間が過ぎれば効力を失うものが多かった。

 そして、大きな転機になったのが、欧州裁判所の2003年の判決だ。判決は英政府が保していた英空港公団の黄金株を違法とするもので、英政府は他社分も含めて黄金株の権利の行使を封印し、残っていた黄金株の保有解消を進めてきた。

 電気通信分野では、ケーブルアンドワイヤレス(C&W)の黄金株が有名だ。大英帝国と旧植民地を結ぶ通信サービスを担うC&Wを擁護するために発行させたものだが、世界貿易機関(WTO)の通信自由化交渉の中で、英政府は早くから放棄する方針を表明。通信業界では古くから、黄金株は過去の遺物とみなされてきた。

 米国のニューヨーク証券取引所や日本の東京証券取引所も黄金株にはネガティブだ。株主間の権利の公平を損ねる恐れが強いためで、これらの取引所は、上場している企業が、黄金株を発行することを禁じている。

 もし、NTTが黄金株を発行し、ニューヨーク証券取引所や東京証券取引所が厳密にルールを適用すれば、NTT株は上場廃止になってもおかしくない。岡田幹事長は理解していないのかもしれないが、事は、NTT法だけ改正すれば済むような問題ではないのだ。

 こう書くと、国際石油開発帝石の例を反論材料にする声が出てくるかもしれない。同社は東証上場企業だが、黄金株を発行しており、経済産業大臣がその黄金株を保有しているからだ。だが、この会社は約2000ある東証上場企業の中のたった一つの例外だ。前身の国際石油開発が黄金株を発行していたことや、同社が石油や天然ガスの安定的な確保を目指す国策会社であること、さらには一般株主の利益を阻害する恐れが小さいと東証が判断し容認されているに過ぎない。

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