米国債格付け引き下げ=未体験ゾーンに入った円高の本質
政府・日銀は、大規模な為替介入を断続的に実行した

 8月初旬、懸念されていた米国の債務上限引き上げ問題が一応決着した。合意形成によってドルに関する不安要素が一つ解決したのだが、ドルは弱含みの展開にあっており、円は未体験の円高ゾーンへと進みつつある。

 わが国の政府・日銀は、大規模な為替介入を断続的に実行した。介入によって、一時、円は対ドルで80円台まで弱含んだものの、市場関係者の中では、わが国の単独介入による効果の持続性については懐疑的な見方が多い。

 実際、為替市場では、ヘッジファンドや為替ディーラーの円買い圧力が根強く、徐々に円高に向かうエネルギーが蓄積しているように見える。現在の状況が続くようだと、今後、さらに円高傾向が続くと見た方が良いだろう。今年3月17日に付けた、1ドル=76円25銭を超える円高が視野に入ってきた。

"安全通貨"=円が買われる背景

 足元で円高が進む背景については、二つの要素を考えると分り易い。一つは、円が世界有数の"安全通貨"と見られていることだ。"安全通貨"とは、基本的に、経常収支が黒字で、他の国に資本を輸出=お金を貸している国の通貨だ。わが国の円は、現在、スイスフランと並んで世界を代表する"安全通貨"と見られている。

 現在の様に、世界の経済情勢が不安定で、世界で不測の出来事があったり不透明な要素が増えると、どうしても、世界の投資資金が"安全通貨"に避難してくるため、当該通貨が強含みの展開になりやすい。消去法的に、円やスイスフランが買われやすくなるのである。

 二つ目は、ユーロやドルなど世界の有力通貨が、現在、いずれも大きな弱点を抱えていることだ。一時期、準基軸通貨として強含みの展開を続けていたユーロは、今、PIIGSに代表されるソブリンリスクという大きなデメリットを抱えている。一方、ドルも、景気減速が懸念される中、債務上限の引き上げや格下げ問題を抱えている。

 米国で、最近発表された経済指標は芳しくないものが多く、今後、景気減速が顕在化する懸念が高まっている。それに加えて、債務上限引き上げに伴う政治的混乱や、米国債の格下げが現実ものとなり、米国に対する信認は低下することはあっても、直ぐに回復することは考えにくい。その結果、世界の投資資金が"安全通貨"を選考することになる。

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