児玉龍彦(東大先端研教授)×津田大介(ジャーナリスト)対談Vol.1「福島のため、日本のためにいまするべきことは何か」

グーグルアースのような線量マップを
津田大介氏(ジャーナリスト)(左)、児玉龍彦氏(東大先端研教授)(右)

津田: 今日は対談というより、聞き手として、児玉先生が国会で言い足りなかったことなどをお伺いできればと思っています。児玉先生は先日、国会に証人として出席し、その映像が YouTubeなどで広まって話題になりました。反響はいかがでした? 相当あったと思うんですが。

児玉: やっぱり反響の大きさにびっくりしました。

 国会でいろいろ証言するっていうのは、これまでも食の安全懇談会などでやってきました。ちょうどあの日は、国会で子ども手当などの問題もあったりしたため、委員の出入りも多かったんです。彼らもあんまり集中して聞いてるわけではなかった。それで、私の内部では言いたいことがいっぱいあったので、自分で勝手に盛り上がっていくのを抑えながら話していくっていうのが大変だったんです。終わってから、また普通の仕事へ戻ってました。そしたら、そのうちに息子のほうから「大変なことになってるよ」とか連絡があったんです(笑)。

津田: なるほど。

児玉: それでも翌日は農水省の会議とかに行ってたんです。そのころから急にワーッと1時間に100通くらいフェースブックで友達になろうとか、ツイッターでもフォロワーとかが増えた。たくさんの方から励ましや心配、そしてご批判とかをいただいて、やっぱりすごくありがたいと思います。

 学問では、ブラウン運動っていうんですけど、いろんなものが出てきてそこから発展していくっていうところがあるんですけど、今回も急に乱気流に入っちゃったみたいです。でも私のことをいい人と勘違いされてる人もいるかも知れないけど、大したことない人間ですから。

津田: (笑)。

児玉: だいたい友人から言わせると、賞味期限2週間くらいだから、1週間くらいのうちに機会があったらいろいろ言っといたほうがいいよとかって(笑)。

これまでの法律では通用しない

津田: 僕は先生の参考人でお話になるのを拝見していてて、「あ。なるほど」と思ったんです。科学に対して深い理解がないわれわれは、放射線が漏れてきて、放射能をたくさん浴びるとガンになる、というような、ものすごくざっくりとした理解をしてしまうわけです。児玉先生の説明だと、放射能というものは分裂期のDNAに影響与えて、それがガン抑制遺伝子に障害を起こして細胞増殖に変化をもたらし、それがガンになるんだっていうことをすごく丁寧な言葉で議員の先生たちに説明されていた。

 今回の児玉先生がやられていることって震災以降すごく問題になっている、いわゆる科学コミュニケーションの問題、つまり科学者の人がデータを元にいろいろな見解を述べることに対して、一般の人の理解がすごく差があり、そこを埋める重要性がすごく増していることを浮き彫りにしたのかなとも思っています。

児玉: 科学者が議論するときには前提があるんですよ。その上で議論してる。ところが前提が間違っていると、みんな間違っちゃうんです。まず最初、(手元の資料を示して)ここに出したやつなんかでそれを言いたかったんです。

津田: 今日はそれをお聞きしたいんです。

児玉: 前提を切り替えるっていうのが大変なんですよ。これまでの議論では、みんな放射線が安全かどうかっていうのは何マイクロシーベルトだとか、そういうどこにいくつ出てるから安全だとか、あるいは不安だとか、その数量を巡って延々とやってますよね。

 だけど今回の事態で、僕が最初に思ったのはそうじゃないんです。原発から100km離れたところで5マイクロシーベルトという量が検出されている。平均は5マイクロシーベルトかも知れないけれども、あるところではその10倍、あるいは100倍ってところがあるかもしれない。500マイクロシーベルトかも知れないし、またすぐそばでも0・5かも知れない。

 例えば文科省が子どもの被曝を計算するときに、学校にいる時間の被曝を計算しているんです。だけど家に帰っても被曝する。だから意味がないじゃないですか。それから食品一個食べるときに、この食品を何百キロ食べたら害が出ますとかっていう言い方しますけど、全部の食品に入る可能性があるわけですよ。現実に、それがもう起こっている。それから思いもかけないところで濃縮されるってことも起こります。

 だから問題の質が、これまでと変わっちゃった。この研究室にもいっぱいアイソトープの管理の記録っていうのがあります。これらは全部、ある点にアイソトープがあって、そこから距離を離せばいいとか、体に着いちゃったらその点の濃度を見ればいいっていう話なんです。しかし、今度は点ではなく面とか空間で出ちゃってるわけですね。だからいまの法律では対応できない。

 ところが学会の主流の専門家も、それから文科省やその他のお役人も、政府の人も、問題が変わってることを気づいてない。だから従来の法律でそのまま考えてしまっている。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら