米国放送行政とグーグル・テレビの不思議な関係 [第2回] 
Google TVの突破口は、米ブロードバンド放送政策にあり
〔PHOTO〕gettyimages

第1回 はこちらをご覧ください。

 2010年4月21日、連邦通信委員会(FCC)はブロードバンド時代に適したビデオ・ビジネスのあり方に関する意見募集(Notice of Inquiry)を開始した。これはブロードバンド時代のテレビ・ビジネスと規制を見直す動きで、俗にAllVid(オールビッド、All Videoの省略形)政策と呼ばれている。

 7月13日、グーグルはこの意見募集に対し"COMMENTS OF GOOGLE INC."という15ページの書面をFCCに提出した。その内容は単なる意見を越え、同社が現在進めている"Google TV"の戦略を示しながら、同社が描くこれからのビデオ・ビジネスをまとめている。

 やや大ざっぱにまとめれば、そこにはグーグルのテレビ業界進出を担う"Google TV"戦略が記載されている。大手テレビ局からの番組提供拒否に苦しむグーグルは、FCCの放送政策をてこに事態の打開を図ろうとしている。

米国ビデオ・ビジネスの概況

 FCCの"AllVid"を解説するまえに、まず米国のテレビ業界について簡単に解説しよう。

 テレビといえば「CATVか衛星放送が当たり前」というほど、米国では有料テレビ・サービスが普及している。CATV、衛星放送、IPTVなどをMVPD(Multichannel video programming distributor)と米国では呼ぶが、その市場占有率は非常に高い。たとえば、2010年6月現在、CATVのベーシック契約は6,110万加入で、加入率は47.8%となっている 。

 調査会社SNL Kagan社によると2010年6月現在のCATV、衛星放送、IPTVの総加入世帯は1億10万で、全テレビ所有世帯の約86%が有料放送サービスを利用していることになる。

 米国では政府の競争政策を背景に電話会社が放送サービスに参入し、過去5年ほどCATVとIPTV(電話会社系)はトリプル・プレー戦争を展開してきた。

 トリプル・プレーとは放送、電話、インターネットの総合サービスだが、単に料金プランを抱き合わせるだけでなく、「テレビ画面で電話帳を検索」したり、「パソコンから自宅の留守電(ケーブル電話)をチェック」するといった機能面でも統合が進んでいる。

 また、トリプル・プレー戦争によりビデオ・オン・ディマンドが広く普及するとともに、HD放送は100チャンネルを越えるほど充実している。

 ちなみに、トリプル・プレーの料金は、割引パッケージ(テレビ80チャンネル含HD/ビデオ・オン・ディマンド/DVR付STB/全米掛け放題電話/留守録など電話付加価値機能/インターネット15Mbps)で月額99ドル(約8,600円)だ。しかし、実際には割引がなかったり、有料チャンネルの追加などを行うユーザーも多く、ユーザーの平均利用額は月額140ドルから160ドル程度となっている。

 このように日本と米国のビデオ・ビジネスには大きな違いがある。こうした違いは、テレビの鑑賞スタイルにも影響している。CATV受信者が4割を越えたとはいえ、日本は放送局が一方的に流す無料番組を消費するのが主体。

 鑑賞スタイルは過去数十年続いた"旧スタイル(ノン・タイムシフト型)"が大半を占める。一方、米国は好きな時に好きな場所で番組を観る"新スタイル(タイムシフト型)"が一般化している。

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