10円円高になると日経平均は1100円下がる現実を見よ--米国債格付け引き下げより深刻な、政府・日銀の「自国窮乏化政策」
円高は株価を直撃する  Bloomberg via Getty Images

 8月7日日曜日朝、テレビ朝日のサンデーフロントラインを見た。実は、前日の土曜日、本コラムでも書いている出演者の長谷川幸洋さんから電話があり、為替の見通し、米国債格下げの影響や先日の政府・日銀の対策の評価を聞かれた。

 私の見立ては、先週の本コラム(「史上最高値をうかがう円高は「人災」。復興増税を狙う財務省と日銀の日本的官僚制度が犯人だ」)で、すでに示しているが、以下のとおりだ。

 為替介入は効果があっても短期間だ。先週のコラムで書いたように、円・ドルの相対量で円ドルの動きの9割が説明できる。したがって、抜本的な円の過小供給が改められないかぎり、再び円高になって、為替介入の際に購入したドル債が為替差損を受けて、それは国民負担になってくる。

 円・ドルの相対量で円ドルの動きの9割が説明できるというのは、ドルの供給量が変わらないとすれば円を30兆円程度増やせば5円程度円安にできることもわかる。もっとも、現状はドルがマネタリーベース対前年同月比でみて2~3割増になっている。相対的な円の供給過小をくいとどめるためには、それ以上のペースでの供給が必要になる。となると50兆円程度増やして5円程度の円安になる。こうした分析から、10兆円の金融緩和は、せいぜい1円程度円安にするにすぎないので、余りに小さいとなる。

米国のソブリンCDSや国債金利に大きな動きはない

 G7で日曜日に電話会議するなどピリピリしているが、米国債格下げは、市場ではすでに織り込み済みなので、実際にはたいしたことでない。格付け会社S&Pは、米国債務見通しを間違うデータミスもあったようだ。同社は私が大蔵省国債課時代には、未発行の日本国債を良く確認せずに格付けを行ったこともある。当然、抗議したら米国より副社長が来日してきて謝罪した。その時日本政府の財務分析をどのようにしているのか、このデータは見ているのかと質問したら、分析していないと白状したのには驚いた。

 他の格付け会社であるムーディーズ・インベスターズ・サービスやフィッチ・レーティングスは、格下げをしていない。S&Pの「格下げへの前のめり」も指摘されている。格付け会社による格下げというのは、ある新聞社が社説で米政府にけしからんといった程度のものだ。

 実態経済では、米国のソブリンCDSや米国債金利には目立った動きは今のところない。こうした騒動を仕掛けて、一儲けを企む人もいるし、騙される人もいるので、一時的な混乱はあり得るが、自ずと収束するだろう。

 前述の番組では、長谷川さんが、円高対策として先週の本コラムでの18兆円日銀引受の話をしたら、出演していた元財務官の榊原英資氏が、「その時期に来ている、日銀引受は禁じ手といっても一時的にはいい」といった。一年前には、量的緩和による金融緩和(もちろん日銀引受は論外)を強い口調で否定していたが、その榊原氏ですら量的緩和や日銀引受を認めざるをえなくなった。

 ただし、榊原氏は気になることもいっていた。「円高のメリットを生かそう」と主張したのだ。これはしばしば円高容認論になりがちなのだ。

 まず、円高のメリット、デメリットを整理しておこう。

 円高は海外旅行者にとって朗報だ。また、輸入品が安くなるし、海外進出企業にとっては安く資金で企業買収できることもメリットだ。

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