オバマ敗北は日本にとってプラスになる
米政権は「大きな政府」から金融緩和、貿易自由路線へ切り替わる

 米国の中間選挙でオバマ民主党政権が敗北した。これは、日本にとってプラスかマイナスか。私はプラスになる可能性が高いとみる。その理由は次のとおりだ。

〔PHOTO〕gettyimages

 オバマ政権は敗北を受けて、今後の政策路線を変更する可能性が高い。

 すでに各種報道によれば、ブッシュ前政権が導入し、年末に期限切れになる所得税や株式譲渡益、配当などに対する減税の期限延長や医療保険改革の見直しなどが課題に上がっている。

 少なくとも、これまで実行してきた公共事業のような財政出動を伴う景気刺激策は発動しにくい。

 減税継続や公共投資の抑制は、一言で言えば、これまでの「大きな政府」路線の修正である。

 ただちに正反対の「小さな政府」路線に動くとは言えないまでも、財政負担を伴なう政策展開には二の足を踏むはずだ。

 すると景気を刺激するためのマクロ経済政策は今後、財政政策ではなく金融政策が主役になる。

 折から、連邦準備制度理事会(FRB)は3日の連邦公開市場委員会(FOMC)で新たに6000億ドル(約48兆円)の国債買い入れを決め、追加の金融緩和に踏み切った。金融市場は好感して、ダウ工業株30種平均は年初来高値を更新し、2年2ヵ月ぶりの高値水準をつけた。ドルも反発している。

 米国の景気がさらに落ち込むようなことがあれば、バーナンキ議長はためらわずに長期国債の買い入れ増額に踏み切るだろう。

 米国が従来にも増して金融緩和に傾斜していく状況は、日本の金融政策にとって緩和圧力になる。白川方明総裁が率いる日銀はずっと緩和をためらってきた。政府に言われて実施せざるをえなくなる状況に追い込まれて、ようやく形だけ緩和してきたにすぎない。

 先の「包括緩和」もゼロ金利復活を宣伝したが、実際には政策金利はゼロになっていない。日銀当座預金に付与している0.1%の金利を据え置いたので、銀行にしてみれば、ゼロ金利で市場取引するインセンティブがない。日銀に預けておけば、0.1%の金利収入が得られるのだ。

 日銀はもちろん、それを最初から織り込み済みである。つまり、ゼロ金利復活とは細かい事情を知らない民主党政権とマスコミ向けの目くらましであり、まゆつばなのだ。

 だが、米国が金融緩和すれば日米金利差が縮小して、円高ドル安圧力が高まり、日銀も無視できなくなる。本来、資源のない日本にとって円高は中長期的に悪い話ばかりではない。だが、この国では円高に振れると、永田町も経済界もマスコミもそろって円高阻止の一辺倒になりがちだ。

 それが皮肉にも、日銀への金融緩和圧力になる。正確に言えば、円高対応のためではなく、デフレ脱出のために金融緩和が必要なのだ。円高はデフレの必然的な付随現象にすぎない。いわば、結果オーライで日銀に「正しい政策」を促すのである。

6兆円もつぎ込んで改革が進まなかったウルグアイ・ラウンドのつけ

 内需を刺激する方策として、オバマ政権は財政政策から金融政策にシフトする。では、外需はどうか。

 輸出拡大を促すために、オバマ政権は従来にもまして貿易自由化を推進するだろう。その重要な道具立ての一つが環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)だ。

 2008年のリーマンショック以後、世界経済の中で相対的に米国の地位が低下する一方、中国が浮上した。オバマ大統領がTPP参加を表明したのは、09年11月に訪日した際の東京での演説である。米国がTPP参加を決めた背景には、アジア太平洋地域で中国の影響力をけん制し、自国の権益を守る狙いがあったとみていい。

 米国は中国に対して人民元切り上げを求める一方、中国以外のアジア諸国とは一段の関税および非関税障壁の引き下げ・削減によって貿易を活発化し、輸出拡大につなげる戦略を立てている。

 米国は日本にもTPP参加を促している。日本の菅直人政権はTPP参加を目指して調整を続けているが、米国のTPP戦略は好むと好まざるとにかかわらず、日本にとって大きな市場開放圧力であり続ける。

 日本はずっと農業がハードルになって、大胆な貿易自由化に踏み切れないできた。農業分野は与野党を問わず多くの族議員を抱え、かつ大票田でもある。政治力学から言って、農業に自由化を迫るには国内だけではなく、国外からの圧力が不可欠だった。

 TPPはかつてのウルグアイ・ラウンドと同じく、農業改革を断行する絶好のチャンスになる。ウルグアイ・ラウンドでは6兆円もの税金を使いながら、目立った改革は実行されなかった。そのつけが回っている。

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