加齢に伴う記憶力の減衰を元に戻せる可能性が見えた!


子供の頃は無理に憶えようとしなくても楽しみで読んだ本が鮮明な記憶として残り、青年時代はその気になれば一夜漬けで徹夜すれば、かなりのことが憶えられたのに、とスマートフォンやPCのマニュアルを手にして記憶力や集中力の減退を感じる中年期の方も多いかもしれません。

 子供の頃は無理に憶えようとしなくても楽しみで読んだ本が鮮明な記憶として残り、青年時代はその気になれば一夜漬けで徹夜すれば、かなりのことが憶えられたのに、とスマートフォンやPCのマニュアルを手にして記憶力や集中力の減退を感じる中年期の方も多いかもしれません。そして高齢になってくると、綾小路きみまろさんのギャグではありませんが、何を憶えようとしていたかを忘れるほど集中力、注意力、短期記憶の能力が衰えてしまうことさえあります。

 米国・イェール大学のAmy Arnsten教授らがNature 2011年7月27日オンライン版に発表した研究で、こうした加齢に伴う記憶力の減衰がどのようにして生じているのか、そして不可逆的であると考えられてきた記憶力が、時間の針を巻き戻すように、若い頃の能力を取り戻せる可能性があることが明らかになりました。

 教授らは年齢の若いサル、中年のサル、高齢のサルに作業記憶課題を行わせて、その際に生じるサルの大脳・前頭前皮質の神経ニューロン・ネットワークの活動状態を分子レベルで分析しました。

 前頭前皮質はサルも人間と同様に、高度な認知機能と目標を設定して、それを適切な手順で遂行するという実行機能に関与する領野で、この部分の能力の衰えが集中力、注意力の減退につながり結果として記憶力の低下という現象として表れます。

 実験データを詳しく分析した結果、若いサルでは課題遂行中、前頭前皮質のニューロンが高頻度で発火し続けていましたが高齢のサルでは発火がゆっくり低頻度でしか生じていませんでした。

 教授らは高齢のサルの脳にはシグナル伝達分子のc-AMP(環状アデノシン-リン酸)が過剰に蓄積しており、それが前頭前皮質ニューロンの発火を弱めている原因であることを突き止め、このc-AMPの働きを抑制する薬を高齢のサルに投与したところ、若いサルと同レベルでニューロン発火が生じるようになりました。投与されたのは高血圧治療薬のグアンファシンで、教授らは人間の高齢者を対象に認知・記憶能力の改善効果を確かめる治験を開始したということです。

医療ジャーナリスト 宇山恵子
Nature 2011年7月27日オンライン版
 

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