"総合施設"創設、保育ママ、小規模にも公費
[幼保一体化]政府「子ども・子育て新システム」中間まとめ

待機児童解消策で始められた「保育ママ」=福岡市西区で10年10月1日

 出産後も仕事を続ける女性や、所得減で家計補助のため働きに出る母親の増加で、保育所の待機児童問題が深刻化している。政府が7月に中間まとめを発表した新たな子育て支援策「子ども・子育て新システム」は、幼保一体化などでこうした保育サービス不足の解決を図ろうとするものだ。しかし、実現には年間1兆円超の追加的費用が必要とされており、本格実施までの道のりは険しそうだ。

 2013年度の導入を目指す「新システム」は、幼稚園の教育と保育所の保育の機能を併せて提供する「総合施設(仮称)」の創設など、幼保の一体化が柱。定員割れする幼稚園の預かり機能を強化し、待機児童対策にあてる。サービス量拡大のため、自治体の認可制をやめ、職員配置など客観的な基準を満たせば、従来「認可外」とされた施設も公費を受けられる「指定制」を導入し、企業や非営利組織(NPO)の参入促進を図る。

 また、待機児童の8割以上を占める3歳未満の受け皿を増やすため、施設型以外に、保育士らが自宅などで数人の子どもを預かる「保育ママ」や、原則認可外だった20人未満の小規模保育にも公費を投入する。

 幼保一体化を議論する作業部会は、関係団体との調整が最後まで難航し、一体化施設の枠組みや名称を巡って迷走を続けた。

 政府は当初、幼稚園、保育園を全廃し、幼保を一体化した施設を「こども園」とする考えだった。しかし、幼稚園団体は「建学の精神に基づいて運営する私立学校に(希望者を原則として受け入れる)応諾義務が一律に課されることは受け入れがたい」と強く反発。今年1月には完全一体化を断念し、幼稚園、保育所の併存を認めることになった。

 保育制度の改革を急ぐ厚生労働省の幹部は「正直、そんなに一体化が嫌なら(幼稚園には)来てもらわなくて結構と思った。それでも幼保にこだわったのは、民主党のマニフェストだからでしょう」と明かした。

 ところが、その後、「こども園」には待機の多い0~2歳児の預かりを義務付けず、0~2歳対象の保育施設を「こども園」から除外したことで「一体化の理念に反する」との意見が続出。一方、幼稚園を所管する文部科学省は、3歳未満児を扱ったり、株式会社などの参入で、学校教育体系が崩されることに抵抗をみせた。

 結局、学校教育法と児童福祉法の適用を受ける幼保一体化施設は「総合施設」と名称を変え、幼稚園や0~2歳の保育所なども含め、全体を「こども園」とすることで決着した。

 この結果、対象年齢や内容、開所時間が異なる施設が、すべて「こども園」と名乗れるようになり、利用者にとっては、分かりにくい「看板」になった。どの施設をどの程度整備するかは今後、各市町村が、地域の教育・保育に関するニーズ調査した上で、目標の供給量を盛り込んだ5年程度の事業計画を立てて進める。

遠のく「子ども家庭省」

 政府の当初案では「子ども家庭省」を創設し、幼稚園は文科省、保育所は厚労省という二重行政を解消する狙いもあった。しかし、小宮山洋子副厚労相は7月の作業部会で「内閣府に連携室を置き、一体化が図れるよう工夫したい」と述べるにとどまり、所管の一元化は遠のいた。

 現行の保育制度は、新システム移行で大きく変わる。今は保護者が市町村に認可保育所の利用を申し込み、市町村が必要性を判断した上で入所先を決定している。契約は市町村と保護者の間で結ばれ、市町村は保育所に保育を委託する形だ。

 こども園になると、保護者は市町村から保育の必要量について「認定」を受け、認定に基づいて、希望の園に直接利用を申し込み、契約を結ぶ方式になる。新システムの反対派は、こうした直接契約が「保育の公的責任を後退させ、待機児童問題が放置される」と主張。また園側が利用者を選別し、障害児や低所得世帯が排除されかねないと懸念する。

 政府案では待機児童問題が解消されるまでは、現行通り市町村が利用をあっせんし、園には定員超過など「正当な理由」がない限り入園を拒めない応諾義務を課す、としている。しかし作業部会では施設の枠組みについての議論に多くの時間が割かれ、利用保障については具体的な中身が深まらなかった。

 また、こども園の利用料は公定価格をベースとしつつも、現在、自由価格の幼稚園側に配慮し、教材費や制服代などの実費徴収以外に「体操教室」など独自の教育活動のための上乗せ徴収も認める方針。このため、親の経済力の違いにより、子どもが分断されるのではないかとの声も上がった。

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