菅首相「ハノイ首脳会議」を牽制する鳩山前首相の「独自外交」
「ベトナム」「TPP」が政権の新たな火種に

 10月28日夕、菅直人首相は政府専用機でベトナムの首都・ハノイに向け羽田空港を発った。東南アジア諸国連合(ASEAN)+日中韓3ヵ国首脳会議(東アジアサミット)に出席するためである。

 会議開催中の29日には中国の温家宝・首相との日中首脳会議が行われる。また、会議終了後の31日にはベトナムのグエン・タン・ズン首相との日越首脳会議が予定されている。

 11月13、14の両日横浜で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合の議長を務める菅首相は、今回の東アジアサミット、そして韓国・ソウルでのG20(同11〜12日)出席をその前哨戦と位置づけ、これまでに周到な準備を行ってきた。

 特に、東アジアサミット出席とベトナム公式訪問には「力」が入っている。もちろん、そこには理由がある。

 ベトナム政府はすでに総事業費5兆2000億円を投じて2012年に着工するハノイ—ホーチミン高速鉄道(約1570キロ)の建設、そして14年には1兆5000億円を投入して同国南部ニントアン省のトゥアン・ナム県とニン・ハイ県にそれぞれ2基の原子力発電所を建設することを発表している。

 日本の新幹線をシステム・技術込みでの売り込むことについては、同国のインフラ整備の遅れで建設計画そのものが頓挫する可能性があるが、原発建設のほうは、トゥアン・ハイ県の1号機建設のFS(事業化調査)をすでにロシアの国営原子力企業・ロスアトムが2月に受注していることから実現性は高い。

 22日に発足した国際原子力開発(資本金2億円。社長・武黒一郎前東京電力副社長)は、東電、関西電力、東芝、三菱重工、日立など12社が出資、"オールジャパン"でベトナムをはじめトルコ、レバノン、チェコ、フィンランドなどでの原発建設受注を目指す。

 この日の午後、首相官邸で「新成長戦略実現推進会議」(議長・菅首相)の分科会である「パッケージ型インフラ海外展開関係大臣会合」(議長・仙谷由人官房長官)の3回目の会合が、まさに「ベトナム」をテーマに開かれた。菅首相の訪越によるトップセールスのための作戦会議であった。

 意欲満々の菅首相の気持ちを逆なでするような「事態」が起きた。こともあろうか、「対ベトナム売り込み」作戦会議が開催されたその日、ハノイ入りした鳩山由紀夫前首相が原発建設の当該大臣であるホアン・バン・フォン科学相、さらには来春にベトナム共産党書記長就任が確実視されるチュオン・タン・サン党中央書記局常任委員長らと会談しているのだ。

 鳩山氏のベトナム訪問については、同氏の個人事務所が越日友好議員連盟メンバーで日本語が達者なヴー・カイ議員にアプローチ、要人との会談のセッティングを行ったと説明されている。

姿勢を一変させた大畠経産相

 ところが、それだけではない。官邸サイドからすれば、もし事実であれば許容できない情報がある。それは、経済産業省(松永和夫事務次官=74年旧通産省入省)—資源エネルギー庁が密かに側面支援しているというものだ。

 鳩山首相秘書官だった安藤久佳資源エネルギー庁資源・燃料部長(83年)が細野哲弘同庁長官(76年)の指示によって極秘裏に動き、ベトナム側に働きかけたという。改めて言うまでもなく、入閣前の大畠章宏経済産業相は民主党鳩山グループ「政権公約を実現する会」も会長を務めていた。

 その大畠氏は、「TPP(環太平洋フォーラム協定)参加問題」でも、APEC首脳会合で日本のTPP参加を表明する意向を固めている菅氏に抗するかのように、それまでの参加へ積極的だった立場を一転、記者会見で慎重姿勢を明らかにした。

 件の鳩山氏は、民主党内の小沢グループを中心とするTPP反対派が結成した「TPPを慎重に考える会」の顧問に就任している。「ベトナム」と「TPP」は、新たな党内政局の火種になりつつある。

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