経営手腕には定評のある稲盛氏。「ババを引いた」との評価を覆せるか新CEOは「何も知らない」
JAL(日本航空)の法的整理が決まった。鳩山政権発足時の昨年9月16日の株価は167円。それが法的整理決定、100%減資の検討によって、紙クズと化すことになった。株主の方々には、誠にお気の毒と言うしかない。
なぜJALは事実上の倒産───会社更生法を申請し、官民ファンドの企業再生支援機構の監督の下で再建を目指す───に至ったのか。そしてJALは、これで本当に再建できるのか。本稿では、民主党政権下で何が起こっていたのかを振り返りながら、JAL再建の行方を探ってみたい。
まず驚いたのは、JALの新しい舵取り役となる最高経営責任者(CEO)に京セラの稲盛和夫名誉会長が就任することだ。JR東日本の松田昌士(まさたけ)相談役、トヨタ自動車の渡辺捷昭(かつあき)副会長らに打診したとの報道もあるが、断られることが前提の打診としか考えられず、当初からピンポイントの人選だったようだ。
稲盛氏は政界再編論者で、小沢一郎民主党幹事長とはかねて昵懇(じっこん)。自由党と民主党が合併する際の仲介役を果たし、小沢氏が昨年、秘書の逮捕・起訴を受けて党代表を辞任するに当たっても、最終決断を相談した相手が稲盛氏だとされる。また、京都を選挙地盤とする前原誠司国交相の後援会長も務めていた。
稲盛氏の人選に小沢、前原両氏の意向が働いたことは、まず間違いないだろう。小沢氏との密接な関係という点では、世間から痛烈な批判を浴びながらも、日本郵政社長に斎藤次郎元大蔵事務次官を充てた人事が思い浮かぶ。
これまで稲盛氏は、京セラを一流企業に育て上げたことや第二電電(現KDDI)の設立、三田工業の再建などで経営実績はあるものの、今月末で78歳という高齢が気にかかる。米コンサルタント会社の調査では、日本企業のCEOの就任時の平均年齢は58.4歳。北米は49.1歳、欧州50.0歳、日本を除くアジア太平洋地域は47.4歳だ。日本でも高齢CEOになるが、世界から見れば超高齢トップ。ちなみに、退任時の年齢を見ると、世界平均は59.6歳。稲盛氏は退任して20年ほど後に再びCEOになったようなものだ。
それに、航空業界というヒトの塊(かたまり)のサービス業は、稲盛氏が得意とする技術分野と対極の世界だ。かつてJALは製造業から人を受け入れて改革を目指したことがあるが、失敗だった(1985年、中曽根内閣の方針によりカネボウ会長だった伊藤淳二氏がJAL副会長として乗り込み、翌年に会長就任。しかし、わずか1年弱で退任した)。稲盛氏自身、「運輸業界は素人。何も知らない」と語っており、視界はかなり不透明だ。航空会社は超国際企業だから、いっそのこと、日産のカルロス・ゴーン氏のような外国人経営者のほうが良かったのではないか。
さらに言えば、あまりに「政治人脈」に頼りすぎると、会社が「政治リスク」にさらされて資金が集まらなくなり、経営がうまくいかなくなる危険性がある。今回の稲盛氏の場合、所管大臣の元後援会長であるばかりか、日本最大の権力者である小沢幹事長とのつながりが強固だ。独裁政治の途上国に見られる現象であるが、政治体制が代わると経営陣が一掃されるので、その会社への投資ができなくなるのだ。日本も途上国並みの「小沢独裁国家」と国際社会から見られるようなことがあれば、JAL再建の足枷となりかねない。
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