2011.08.09(Tue) 週刊現代

妙な「産地名」表示が急増中
「太平洋産鮮魚」って、
いったいどこで取れたのか

風評隠し? 放射能隠し?

筆者プロフィール&コラム概要
週刊現代

 原発事故以降、福島県産食品は種類を問わず不人気。そこでスーパーやデパートなどは、妙な「産地名」表示で「ごまかして売ってしまえ」派と「以前より細かく表示して買ってもらおう」派に二極化しているようだ。でも、「太平洋産」や「国産」という表示は、風評隠しや放射能隠しではないか。

 もちろん、スーパーやデパートに流通している以上、福島産の食品であっても、放射線量調査を受けて基準値をクリアしている。ただし、基準値そのものに不信感をもっている消費者は多く、検査もごくわずかのサンプル検査だから、セシウム汚染牛が店頭に並ぶことにもなった。

 たとえば魚。水産庁の7月20日の発表では、福島県いわき市久之浜沖で採取したアイナメから基準値の6倍となるセシウムが検出されているし、海底に棲むため放射性物質が溜まりやすいとされるヒラメやカレイからも、基準値以下ではあるもののセシウムが当然のように検出されている。

 福島県漁業協同組合連合会に聞いた。

「いま現在、福島の漁港に魚は揚がっていません。船も基本的には出ておらず、例外は遠洋と巻き網だけ。遠洋のマグロ船は外国まで行くし、もともと福島県内には水揚げしません。いまがシーズンのカツオは巻き網漁業の主力ですが、こちらは他県の港で揚げられます。確かに巻き網漁船は福島県の沖合も通っていますが、カツオはかなり沖のほうで取りますから。放射能汚染の問題は、港が復旧し、近海の魚が揚がってきてからだと考えています」

 とは言うものの、実際にはいわき市の小名浜港で6月21日に水揚げを予定していた初ガツオは、風評被害を懸念して銚子港に水揚げされている。また、宮城県気仙沼港に水揚げされた初ガツオは、福島県いわき市沖で取ったものだった。魚の生産地表示は、水揚げした漁港のものになるから、これらのカツオは気仙沼産として出回るか、または「太平洋産」としてすでに出回っているのである。

 先の水産庁の発表によると、セシウムが検出されたカツオも当然あるものの、まだ数値は低い。だが、魚の汚染は小型魚から中型魚、そしてカツオやマグロのような大型魚へと生態濃縮が進むので、むしろこれからが心配である。

野菜は? 肉は? 牛乳は?

 野菜についても、福島の生産者側は意図せずとも風評隠しや放射能隠しが行われている形跡がある。福島県在住で、食品業界の裏側を取材しているジャーナリストの吾妻博勝氏が言う。

「放射線の基準値を下回っている野菜などはJA(農協)を通すと卸売市場に行きますが、それとは別にブローカーが直接、農家を訪問して買い付けるケースもある。ブローカーは福島県産ということで安く買い叩く。彼らは他県産のJAのマークが入った使い古しの段ボールをストックしており、そこに入れて売られたら、まずわからない」

 同様に、肉でも福島県産の豚や鶏は出荷されているが、これらはもともと「国産」という表示でOKだし、福島県から県外に買い取られた場合は、買い取り先で、福島で飼育されていた期間以上経過すれば、その県を生産地とする〝ロンダリング〟も可能だ。

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