雑誌

医者の非常識、患者の非常識
あなたが知らない病院の「真実」

これでは治るものも治りません
週刊現代 プロフィール

「検査結果を告知してから1週間後、彼の父親がアタッシュケースを抱えて病室へやってきたんです。それをいきなり私の目の前で開くと、その中には1万円の札束がぎっしり詰まっていた。『これがうちで用意できる精一杯のお金です。これだけあれば、なんとかなるでしょう』と私に詰め寄ってきました」

 お金で解決できる問題ではない。そう説得しても、親子には納得してもらえなかった。結局、その2ヵ月後に男性は病室で亡くなったという。

 なかには、自らが非常識ゆえに命を縮めてしまう患者もいる。

「ある患者さんが、診察室に入ってくるなり『なんだ、今日は××先生じゃなかったの? また出直してくるよ』と言って、すぐ帰ってしまいました。『自分は有名な××先生に診てもらわないと嫌だ』と予約を入れ直し、再来院したのは2ヵ月後。ところが、その人はかなり進行していた大腸がんを患っていたんです。即手術になりましたが、2年も経たずに亡くなりました。あのときすぐに診察していれば、と悔やまれます」(関西の大学病院・内科医)

糖尿病治療の名医、しんクリニック院長の辛浩基医師

 糖尿病治療に力を入れているしんクリニック(東京都大田区)の辛浩基院長も、患者が自己診断することの危うさをこう指摘する。

「糖尿病や高血圧治療の場合、薬を飲むことによって血糖値が安定すると、治ったと勘違いして通院して来なくなる人が多いんです。

 結局また体の変調を訴えて再来院されることになるのですが、治療を受けていなかった間に症状が進行していることも多い。

 それによって、心筋梗塞や脳内出血を起こしてしまった患者さんもいます。死に至る危険性も充分に潜んでいるのです。

 また、サプリメントや漢方薬を自分の解釈であれこれ飲んで、胃潰瘍になってしまう患者さんも少なくありません。よかれと思ってしたことで体を悪くしてしまっては元も子もない。ひとこと主治医に相談して欲しいですね」

 自分の命を守る上で、医者との関係は何よりも良好に保っていたい。それには、お互いの「常識」の間にある溝を埋めることが必要だ。患者やその家族としては、医師の非常識を批難するばかりでなく、まずは自分の常識を見直しておきたい。