雑誌
医者の非常識、患者の非常識
あなたが知らない病院の「真実」

これでは治るものも治りません

 はたして患者と医者はどっちが偉いのか。「治す」のだから医者なのか、「客」なのだから患者か。互いの利益は一致しているのに理解し合えず、不幸な結果に終わることも少なくない。まずは共通の常識を。

いきなりの余命告知

 昨年、胃がんにより68歳で亡くなった石山信一さん(仮名)の妻は、医師から告げられた言葉が今も耳から離れない。手術から3ヵ月後、腹水がたまり、石山さんが再入院したときのことだ。その日、担当医は病室に来ると、普段と変わらない表情で、患者本人と妻を前にしてこう言った。

「余命1ヵ月です。たぶん生きてこの病院から出られることはありません。どうされます? ご自宅での緩和ケアもできますが」

 妻はその言葉に呆然とし、それから泣き崩れた。ある程度の覚悟はしていたものの、いきなり余命を告げられるとは思ってもいなかったのだ。患者がすがろうとしたわずかな望みを断ち切り、医者は容赦なく余命を宣告したのである。

「医師は哀れむ様子もなく、ごく事務的な口調でそう言いました。もし、少しでも言いづらそうに言葉を選びながら告げてくれたら、あれほどのショックは受けなかったと思います。あの言葉は一生忘れられません」

 妻は目に涙を浮かべながら当時を思い出した。

 かつては、がん患者に本当の病名さえも悟られないようにするのが医師の仕事であったが、余命告知について、現状はどうなっているのか。医学博士の中原英臣氏は、「会社の社長など仕事で重要なポジションにいらっしゃる患者さんなどには、余命を聞かれたらそれなりの目安を説明することもありますが、尋ねられない限り、余命は告知するものではないというのが常識です」という。

 神奈川県在住の主婦、新藤佳子さん(仮名・73歳)は去年入院したとき、医師の信じがたい言葉を耳にした。

 人工透析を受けている彼女は、転倒して足を骨折したため病院に入った。トイレに行くのもままならずオムツをすることになったが、慣れないためにあるとき粗相をし、ベッドのシーツを汚してしまった。申し訳ないと恐縮する彼女に、担当医は「そんなこと、気にしなくていいんですよ」と優しい言葉をかけていたが、翌日、病室の向かい側にあるナースセンターから、担当医の笑いまじりの話し声が聞こえてきたという。

「新藤さんはもうだめだね。粗相をするようでは厳しいかな。みんな大変だろうけど、ああいう患者はじきに退院させるから」

 その日、看病にやってきた新藤さんの娘は、病室で母親がシクシクと泣いているのに驚き、訳を聞いて事の次第を知った。

「私も悔しくて一緒に泣きました。翌日直談判に行き、母を転院させたんです。あの一件で医師の建て前と本音の違いを実感しました」

「何が聞きたいんだ!」

 岐阜県に住む内海冨美子さん(仮名・53歳)も、医師の態度に傷つけられた一人である。内海さんの兄は、肝臓がんを患い、東海地方の総合病院へ入院した。そこで兄の容態が急変したという連絡を聞き、焦って病院へ電話をした。

「看護師さんから主治医の先生へ電話を繋いでもらったのですが、出るなり『何が聞きたいんだ!』と威圧的な話し方をされました。私は恐れながらも『兄は大丈夫なんでしょうか?』と聞くと、『ああ、そのままにしたら死ぬね』と、ぶっきらぼうに言われたんです。病状を尋ねたのですが、専門用語を使ってまくし立てられるばかりでした」