世界中から「将来の指導者」が集まる米国の高等教育が、日本の60倍の魅力を持つ理由

新連載、いよいよスタート

2011年08月08日(月) 田村 耕太郎

 アメリカの衰退が言われて久しい。財政状況もひどいし、実際に住んでみればインフラもとんでもない。しかし、私はアメリカは簡単に衰退しないと思う。それは「知のインフラ」が他国を圧倒するからだ。

 簡単に言えば、アメリカは「知のデベロッパー」になっている。そう「場貸し」業を営んでいるのだ。世界の叡智を集めて、自国のために働いてもらう仕組みをうまく作り上げている。それが高等教育であり、シンクタンクであろう。

 私はこの連載を通じて、“アメリカの知力”のすごさを紹介していきたい。在籍してきたエールやハーバード、そして今度移籍するランド研究所での経験を含めて、自分なりにアメリカの知力を紹介していく。

 一回目は教育について書く。国会議員時代から、「日本再生のためには教育改革から始めるしかない」との議論をよく聞いた。賛同はしていたが、「日本にはそんな時間ないだろう。それより経済・財政改革だ」と心の底では思っていた。しかし、日本を離れ、アメリカの教育機関に在籍し、今日本の政財界を眺めていると、「時間はかかるが、教育から変えるしかない」との結論に達した。

 専門的に理論を学んだわけでない。そういう意味では門外漢だ。しかし、教育の国際比較について論じるための多少の経験はあるかもしれない。日米欧そしてアジアで教育を受け、教育機関に在籍してきた経験だけを頼りにこれから連載の持論を展開させていただく。教育と言っても幅は非常に広いので、「高等教育」つまり大学以上の教育を中心に書いていく。そして、日米欧アジアでも、最も比較するに有意だと筆者が考える、日米の比較について中心に述べていく。

 第一回の結論としては、「アメリカの高等教育は日本の60倍の魅力にあふれる」としておく。

「日本はなぜ停滞するのか」リークワンユーの指摘

 昨夏、一年ぶりにシンガポールでリークワンユー顧問相(当時:今は前顧問相)にお会いする機会を得た。私は二つだけ質問した。「なぜ日本は20年に渡る経済停滞から抜け出せないと思うか?」「欧米も中国もこれから深刻な課題山積だか、危ないのではないか?」

 氏の答えは、「日本人は皆きわめて優秀であり、問題も答えもわかっているはずだ。しかし、実行する人がいない」「欧米や中国の問題は深刻だ。社会不安になりかねない。しかし、私は乗り越えられると思う。なぜなら指導者教育をしっかり行っているから」と簡潔であった。

私はリークワンユーに二つだけ質問した    【photo】Bloomberg via Getty Images

 




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田村 耕太郎

(たむら・こうたろう) 前参議院議員。エール大学上席研究員、ハーバード大学研究員などを経て、世界で最も多くのノーベル賞受賞者を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で唯一の日本人研究員を務めた。
国立シンガポール大学公共政策大学院名誉顧問、新日本海新聞社取締役東京支社長。
1963年生まれ。早稲田大学卒業、慶応義塾大学大学院修了(MBA取得)。デューク大学ロースクール修了(法学修士)、エール大学大学院修了(経済学修士)、オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了、ハーバード大学ケネディスクール危機管理プログラム修了、スタンフォード大学ビジネススクールEコマースプログラム修了、東京大学EMP修了。
2002年から10年まで参議院議員を務めた間、内閣府大臣政務官(経済財政、金融、再チャレンジ担当)、参議院国土交通委員長などを歴任。
シンガポールの国父リー・クアンユー氏との親交を始め、欧米やインドの政治家、富豪、グローバル企業経営者たちに幅広い人脈を持つ。世界の政治、金融、研究の第一線で戦い続けてきた数少ない日本人の一人。
2014年8月、シンガポールにアジアの地政学リスクを分析するシンクタンク「日本戦略情報機構(JII)」を設立。また、国立シンガポール大学(NUS)リー・クワンユー公共政策大学院の兼任教授に就任し、日本の政府関係者やビジネスリーダーに向けたアジア地政学研修を同校教授陣とともに実施する。
著書に『君に、世界との戦い方を教えよう 「グローバルの覇者をめざす教育」の最前線から』などがある。