米国放送行政とグーグル・テレビの不思議な関係 [第1回]

米テレビ業界との対立
Google TVのデモンストレーションは大きな人気を集めている(2010年インテル開発者会議で筆者撮影)

 米国では、10月18日から家電量販店ベストバイ(BestBuy)などでGoogle TVが発売された。しかし、テレビや雑誌の広告もなく、静かなスタートを切っている。原因は、大手テレビ局から番組の供給が受けられず予想した魅力的なサービスが提供できないからだ。

 グーグルがインターネットと商業放送を融合するGoogle TVプロジェクトを発表したのは2010年5月。以来、インターネット広告で覇権を握る同社は「Google TVでテレビをスマートにする」と豪語してきた。Google TVは、米テレビ業界の抵抗を押し切って成功するのだろうか。その鍵を握るのは、どうやら米国の放送行政政策にありそうだ。今週からGoogle TVを通じて、米国が目指すブローバンド時代の放送行政を追ってみよう。

Google TVはテレビとネットを結ぶサービス

 まず、Google TVとはどんなものか、簡単に説明したい。Googleによるテレビ業界進出の噂は2009年からメディアなどに流れ、同社は2010年5月20日の開発者会議で"Google TV"を正式に発表した。パートナーにはソニー、ロジテック(Logitech、パソコン周辺機器)、ディッシュ・ネットワーク(Dish Network、米衛星放送大手)が顔をそろえ、Google TV用チップにはIntel社製品が採用された。

 ロジテック社から発売*1 されたGoogle TV "Revue"(商品名)は、テレビとSTB/チューナーの間に設置し、ブロードバンドにも接続する。そうするとテレビを観ながらブラウザーが利用できるようになる。

 これはアップル社のApple TV と同じだが、同製品の場合は基本的にアップル社のiTunes Store に接続して、映画やビデオをダウンロードする。一方、Google TV は、基本的に衛星放送などのライブ番組と、大手テレビ局やスポーツ・リーグなどのブロードバンド放送が対象だ。

 ソニー製の"Sony Internet TV"(商品名)はテレビと一体型になっているため、ブロードバンドに接続するだけだ。どちらにも、キーボードがついた大型リモコンが付属している。

 もちろん、市場にはインターネットも楽しめるテレビが多く出回っている。こうしたネット・テレビとGoogle TVは、どこが違うのだろうか。ネット・テレビは、ブラウザーを搭載してホームページを閲覧したり、メーカーが用意した専用コンテンツを楽む。一方、Google TVは専用の検索サービスが特徴となる。ユーザーの希望や過去の履歴などを検索技術でまとめて、より使いやすい知的なサービスにしようとしている。

*1 Logitechの製品は、予約を受付中で、実際の製品発送は11月から。
〔PHOTO〕gettyimages

 また、Google TVは大雑把に"オーバーレイ"、"ユニバーサル検索"、"ブロードバンド・ビデオ(OTT)"、"ネット・アプリケーション"という特徴を持っている。

 オーバーレイ(重ね合わせ)とは、既存のコンテンツやインフラに新サービスを付け加えて、利用価値を高めるビジネス・モデルを指す。グーグルが提供する電話サービスGoogle Voiceは、その典型例だろう。同サービスは、既存の電話網(固定と携帯電話)に無料VoIP通話や留守録、転送、テキスト変換などの付加価値を提供する。

 グーグルは、このようなオーバーレイ戦略を得意としている。Google TVでも既存のCATVや衛星放送、地上波テレビの番組に、グーグルの検索サービスを重ね合わせて、グーグルの広告を視聴者に届けることが狙いだ。

 たとえば、普通のテレビで番組案内を見ると、放送時間とチャンネルだけが出てくる。しかし、Google TVのユニバーサル検索*2 では、ネット・コンテンツを含めた幅広い検索ができる。つまり、番組名を検索画面に入力すると、放映時間やチャンネルだけでなく、インターネットのレンタル・ビデオ、関連する投稿ビデオ、関連グッツのサイト、関連ブログなどが一気にリストアップされる。同時に、グーグルの広告が掲載される。

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