「築地移転」を強行突破する石原都知事の狙いは4選出馬
都議会第一党の民主党の反対を強行突破

〔PHOTO〕gettyimages

「移転を決断しました」

 石原慎太郎都知事は、10月22日の定例記者会見で、揺れ続ける築地市場問題について、こう言明した。

 7日に閉会した都議会の定例会で「審議継続」が決まったばかり。予算執行権を持つのは知事だが、最大派閥の民主党には知事に裏切られたという思いが強い。

 都議会民主党の大沢昇幹事長は、「大変、憤りを覚える。知事が移転に前のめりであれば、全力で現在地再整備に車輪を回さなければならない」と、コメントを発表した。

 築地市場内には反対派も多い。

 なかでも市場内約750の仲卸業者でつくる「東京魚市場卸協同組合(東卸)」は、推進派と反対派が拮抗、昨年の理事長選では、4回の同数投票を経て、推進派理事長が誕生した経緯がある。

 それだけに、石原知事も気を使ったのだろう。発表の翌日、都の幹部が東卸を訪れて、知事の署名が入った「築地市場事業者の皆様」と題する文書を持ち込み、組合を通じて各事業者に配布された。

 時候の挨拶の後、「さて、この度、私は東京都知事として、築地市場の豊洲移転を進めていくことを決断しました」と続く文書は、知事の決意表明だ。しかし、長くこの問題にかかわり、ごまかしの多い都知事と都の姿勢に不信を感じている反対派の面々は、改めて神経を逆撫でされたのだという。

「老朽化しているから建て替えるというのですが、そんなことは10年も20年も前からわかっています。問題は、なぜ観光資源となり、業者だけでなく都民の愛着もある築地を離れ、高濃度の発がん物質などで汚染された豊洲に移転しなければならないのかということ。それには答えず、議会や反対事業者を無視して強行突破しよういうのですから許せません」(反対派組合員)

 例えば、次の一文である。

「現在地再整備が選択肢たり得ないことは明白ですが、議会は結論を先送りし、今後の見通しも示しておりません」

 現在地再整備の検討は、今年度、1281億円の移転費用を予算化する際の付帯決議であり、都議会の特別委員会は、今春以降、再整備4案を作成した。都の試算で、工期は12年から17年、工費1400億円から1800億円と見積もられた。

 これに対し、移転なら2014年度中にオープンできて、整備費3900億円ながら現在地売却費用が見込まれる。そこで「移転案の方が優位」と、知事は結論を下したのだが、本格的な比較検討にはほど遠く、「選択肢たり得ない、とまで言うのはあまりに強引」と、反対派は口をそろえる。

 また、最大の懸案事項である豊洲の汚染問題については、「ごまかしばかりで、腹立たしいというレベルを超えている」という。

 それは次のようなくだりだ。

「移転予定地の土壌汚染対策については、我が国最高権威の学者の方々の英知もお借りして、日本の優れた先端技術を活用した汚染除去手法を編みだし、現地での実験も済ませております」

 この「最高権威の学者の方々」とは、都が委託した「技術会議(座長・原島文雄首都大学東京学長)」のこと。ここが「すべての処理技術について有効性を確認」と、今夏、報告書をまとめたことが安全性の根拠になっているのだが、会議の中身などは非公開。

 ようやく明らかになった7人のメンバーは、座長の原島氏がロボット工学の専門家。座長代理の矢木修身氏が唯一の土壌専門家で、他は土木、システム工学などのプロ。「議論のできない御前会議」と批判された。

 要は、石原知事はなにがなんでも移転させたい。それも任期中に。それは一期目の2001年、東京ガス跡地を購入して築地を再開発する、という方針を打ち出した時から揺るぎない。都知事周辺は「もう多くの人を巻き込んだ事業になっているから、石原さんも今更、引くに引けない」と、断言する。

「最大の誤算は、民主党が第一党になって移転反対に回ったこと。自分の手で仕上げるしかなく、石原さんはここで花火を打ち上げ、築地移転を来年4月の都知事選の争点にして、4選出馬する考えだ」(同)

 多選批判は承知のうえだが、自民党幹事長の長男・伸晃氏はまだまだ頼りなく、落選中の三男・宏高氏の問題もあって、石原家のためには、もうひと踏ん張りしなければならない。

長男・伸晃自民党幹事長が「援護射撃」

 後押しするように伸晃氏は、10月20日、都内の講演で、新党改革の荒井広幸幹事長から聞いた話だとして、「舛添(要一代表)出馬」を暴露した。

「荒井さんが電話してきて、『舛添さんは間違いなく都知事選に出る』と言った」

 舛添氏は、「根も葉もない話で、たいへん迷惑している」と、憤慨して見せたが、舛添氏が出馬意欲満々なのは周知の事実。前回の出馬の時から「石原の次は俺」という気持ちが強く、新党の立ち上げも、都知事選を睨んで自民党色を消したかったからだという。

 半年前のこの時期、あえて伸晃氏が舛添氏の名前を出したのは、先に話題になった方が負け、という都知事選のジンクスに沿ったものではないか。一方で、同じ講演会で「自民党都連会長の立場としては、困ったら(父に)もう一回やってもらいた」と、述べるなど4選出馬に"含み"を持たせた。

 現在、知事は78歳。任期中に80を超え、老齢批判は免れず、それが利権とセットで語られたのでは晩節を汚す。そうであってはなるまい。

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