金融・投資・マーケット
ちまちました節約術や、運用で一攫千金なんて発想を捨てよう
不況下での経済生活を改善するための
山崎流「三原則」

 近年の不況のせいだろうと思うが、筆者は最近、経済生活全般をどう改善したらいいかというテーマの取材を受けることが多い。経済政策をどうしたらいいかという議論は重要だが、現実問題として、適切な経済政策が迅速に実行される可能性は限りなく小さい(最近は、特に、G20の後の野田財務大臣、白川日銀総裁らの談話を聞いて脱力した)。

 そこで今回は、それを前提としながらも、個人の経済生活全般の改善について、大まかな考え方を述べてみたい

 このテーマの場合、取材に来る側が事前にイメージしている内容は、大まかに二通りに分かれる。

 一つは、日々の食材の買い出しや、日用品の買い物、あるいは夫婦の場合に夫の昼食費をどう節約するかといった、「チリも積もれば山となる」という感じの節約術だ。もう一つは、給料・ボーナスともに減少傾向にある厳しい状況を跳ね返すために、いわば資産運用で「減ったお金を取り返そう」(あるいは、一攫千金!)といったメッセージを基調とするものである。

 しかし、筆者の好みを言わせてもらうと、先ず、細かな節約をたえず考えるのは気が滅入るし、いかにも貧乏臭い感じがして、やりたくない。それに、スーパーのチラシを読み比べて割安なものをまとめ買いする、といったことを心掛けても、十分大きな効果が上がらないことが多いように思う。節約が趣味ならともかく、もっと効率のいい方法を考えたい。

 また資産運用についても、いつの時代でも、「運用を上手くやって、損を取り返す」という考え方こそが、小さく済んだはずの損から、決定的な大損に至る道筋であり、マネー運用にあって最も警戒すべき危険思想だ。

 若者向けの雑誌などで、たとえば、FX(外国為替証拠金取引)で不況による減収を取り返そうという趣旨の特集記事を見かけることがあるのだが、こうした記事を見るたびに、「罪作りだ」、「止めた方がいいのに」という感想を禁じ得ない。

 それでは、経済生活の改善を行うには、どこから手を着けて、何に気をつけたらいいのだろうか。

 筆者が強調したい原則は、以下の三つだ。

具体的には、

(一)大きな項目から先入観を持たずに考える(ちまちま節約しない!)、
(二)無駄なコストに気をつける(コストは確実なマイナスリターン!)、
(三)他人を頼らない(特に金融マンには気をつけろ!)、

である。

 一般的なサラリーマン家計をマネー運用として捉えると、ポートフォリオの中で一番大きな「資産」は、稼ぎ手の将来の稼ぎを現在価値で評価した「人的資本」だろう。諺に曰く、「稼ぎに追いつく貧乏無し」。先ずは、稼ぎを増やすことの効果が一番大きいことが多い。あるいは、防衛的に見るとして、稼ぎを守る方策を考えることが重要な場合が多々ある。

 若いサラリーマンであれば、自分自身のスキルや経験、人脈形成などに時間とお金を投資することが重要な場合が多い。資金運用でも国際投資を考える世の中なので、成長機会が主に外国にある現在、自分も国際的に働く、あるいはその準備をするといった、「人的資本の国際化」を考えたい。

家賃利回り5%ならREITのほうが有利

 ある程度以上の年齢のサラリーマンの場合は、副業の可能性を追求することの価値が大きいと思う。直ちに始められなくても、可能性を考えておくべきだし、当初は小さくても副業は、定年後などの将来の本業に育つ可能性がある。

 問題は、建前上社員の副業を禁止している会社が多いことだ。しかし、本業に悪影響がなければ認められる場合が増えてきているし、判例的には社員が勝てる(本当は、法的に明確に副業の自由を確立すべきだが)。何れにせよ、あっさり諦めるのはもったいない。

 あるいは、結婚した家計であれば、共稼ぎの収入をいかに大きく保つか、という点の工夫が重要な場合が多い。

 後者の場合、妻が出産を機にこれまでの職場を離れてしまって、出産後しばらく経って復職しようとした場合に、好条件の就業機会がない場合が多い。

 先般、国税庁が発表した、民間給与実態調査を見ると、平均値で見て、男性の年収は五〇代前半くらいまで増加しているのに、女性の収入は、三〇代前半で頭打ちとなって、その後、緩やかに下落している。これは、結婚・出産等を機に離職した女性が、好条件の職に就けないことが多いことを反映している。

 ここで、女性が、離職せずにすんで、産休後に復職できるような生活条件を備えておくと、基本的には男性と似た形の「年収-年齢曲線」になるはずであって、三〇代の前半で収入が頭打ちになるケースは少ないだろう。

 しかし、そうするためには、産休制度を備えた会社を選び、母親が働く間に子どもを預かる保育園等を見つけて、加えて、母親に残業が必要な場合に保育園の「お迎え」を代行してくれて子どもの安全を確保してくれる協力者(多くの場合、夫か妻の両親だ)を確保する必要がある。

 こうした問題を考えると、家計にも経営戦略が必要であることに思い至るし、そうした戦略の価値は大きい。夫側の両親と近くに住んだり、二世代住宅を作ったりすると、「嫁・姑の関係」という大問題が発生する可能性はあるが、「緩やかな大家族」とでもいうべき、協力関係は、両方の家族にメリットがあり、模索する価値がある。

 人的資本の次に大きな項目は、多くの場合(特に日本では)住居のコストだろう。住居に関して、賃貸の方が得なのか、家やマンションを買った方が得なのか、という判断が出来るか出来ないかの差は極めて大きい。

 これは、不動産物件の価格と、家賃と、金融環境によって決まり、数字で答えを出すことが出来る問題だ。典型的な失敗は、こうした計算をせずに「家賃は払っても家が自分の物にならないけれども、ローンを組んで家を買ったら最終的には自分のものになる」といった理由をつけて、割高な家を買って、ローンの重みに苦しむケースだ。

 家賃の下落傾向が続いている現在、好立地のマンションの価格などは、まだまだ割高な場合が多い。グロスの家賃利回りで年間5%といった価格であれば、REITの総資産利回り(買い入れを含む資産の利回り)とたいして変わらない。REITは、多くの物件に分散投資されていて、流動性も高く、仲介手数料も掛からないのだから、こうした値付けでは、明らかに、マンション価格の方が高い。

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