雑誌
『ホットスポット』となった「柏と那須の現実」
表土の除去作業中の那須町立黒田原小学校校庭。削り取った放射性物質を含む表土が校庭脇に積まれている

 軒並み高い放射線量を記録する関東の二つのエリア。本誌は小・中学校をはじめ126ヵ所の放射線量を独自調査した。市民の怒りに、国はどう応えるのか

「再三報道されていますから、この辺りの放射線の数値が高いことは柏市民の皆さんが知っていますよ。テレビのコメンテーターの話を聞いても、安全だという人もいれば、そうでないという人もいます。何を信じれば良いのかまったく分かりません。私たちは〝人体実験〟に使われているような気さえしています」

 7月23日、千葉県柏市で犬を散歩させていた40代の女性は、本誌の記者に対し、不安な胸の内を明かした。

 東京電力・福島第一原発の事故により局所的に放射線量が高くなる地域は『ホットスポット』と呼称されている。本誌はほぼ1ヵ月にわたり、独自の放射線量調査を続けてきたが、千葉県柏市を含む東葛地域と栃木県北部にある那須地域が極端に高い放射線量を示した。

 これまで本誌では、測定した放射線量を列挙することで警告を発してきた。だが、その異常とも言える数値を自治体が把握し、何らかの対策を講じない限り、事態に進展はない。

 そこで今回は、千葉県柏市、栃木県那須塩原市・那須町の3市町について、自治体内の各所に設置されている小・中学校と、夏を迎え人出が増えているプール施設の放射線量を計測した上で、自治体及び政府に放射能汚染に対する対策があるのかを聞いた。計測方法はこれまでの例にならい、地表1mの放射線量を5回連続で測定、誤差を補正するためにその平均値を求めている。また、本誌では以前より『毎時0.16マイクロシーベルト』という基準値を設け、それ以上の数値を危険としてきた。しかし、ホットスポットとなった両地域では、今回の調査でも軒並みこの数値を超える結果となった。その結果は4ページの表の通りだ。

那須町が抱えるジレンマ

那須塩原市役所内に設置された放射線量を記録したホワイトボード。「ハロープラザ」の放射線量が高数値だ〔PHOTO〕池田栄次

 まずは那須方面に向かい、那須塩原市の南部にある旧西那須野町地区で測定を開始。西小学校と槻沢(つきのきざわ)小学校で毎時0.52マイクロシーベルトを記録するなど、やはり高い数値であった。

 北上しながら計測を続ける中で、那須町の那須小学校に子供を通わせる男性に話を聞いた。

「数値が公表されていますから、那須の放射線量が高いことは知っています。しかし、子供の保護者としては数値を公表するだけでなく、それが子供の身体にどんな影響を及ぼすのかを知りたいですね。子供の通っている那須小は校庭の土を入れ替えたんですが、それまでは普通に遊ばせておいて、急に危険だから遊ばせるなと言われても国や町に対して不信感が増すばかりです」

那須町住民生活課の高内環境整備係長。放射能汚染という未経験の災害に対し前線で立ち向かっている〔PHOTO〕池田栄次

 人口3万人弱の町は不安に包まれている。那須町住民生活課の高内章環境整備係長に話を聞いた。

---那須町は放射線量が高いようだが。

「(『週刊現代』を取り出して)このように雑誌に載ると、読者はそれが町全体であるかのように受け取るんです。

 確かに(同じ栃木の)宇都宮などと比べたら高いかもしれませんが、平均的には雑誌に載っているよりも低いんですよ」

---那須町では6ヵ所の校庭で1マイクロシーベルトを超えているが(1マイクロシーベルトの基準値を超えると、校庭の表土除去に補助金が出される)。

「現在、線量が低かったところも含め、町内にあるすべての学校・保育園の表土を除去しています。合計27ヵ所で、補助金を差し引いても7375万円が持ち出しです。町の一般会計予算が100億円余りなので、痛い出費ではあります。さらに、表土を除去することで、住民の方が『やっぱり危険だったんだ。だから土を削るんだ』と不安がってしまうこともあり、このあたりがジレンマですね」

---国に対して要望は。

「表土の除去について、県の調査では基準値を超えたので補助金が出るのですが、国の調査では基準値を下回りました。そのため国からの補助金は出ていません。那須町は地震の被害も出ており、その修繕費用もあるので、せめて放射能関連の補助金は国に負担していただきたいですね。あとは、町民からの放射線に関する問い合わせに対して、安全か危険かを回答できる明確な基準を示して欲しいです」

柏市の秋山市長。ホットスポットの首長として、市民の生活は彼の双肩にかかっている〔PHOTO〕樋口晶子

 話を進めるにつれて住民とともに最前線にいる不安をこぼし始めた。

 放射線に関する国の情報公開が自分たちの生活の不安を取り除くレベルに達していないという不満も感じているようだ。

 また、旧塩原町地区の金沢小学校で0.9マイクロシーベルトを計測した那須塩原市にも同じように取材を申し込んだが、市の環境対策課からは

「信頼の置ける情報を国から出してもらわないと、末端の自治体は困ってしまいます。それが国に対する要望です」と、答えるのみだった。

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