小沢捜査から見えてきた「検察の正義」
「政治腐敗防止法案」だった政治資金規正法

 小沢問題がとうとう佳境に入ってきた。先週23日(土)、東京地検特捜部が民主党の小沢一郎幹事長を事情聴取したのだ。当日の事情聴取後、小沢氏は記者会見を開いて、陸山会への4億円の原資について細かく説明。裏献金はないとしたものの、陸山会の経理などの具体的な話は分からないと、自身の関与を否定した。

 真相がヤブの中にある以上、これらについて賛否両論がでている。小沢氏の発言を信じる意見、検察のリーク・マスコミの対応を批判する意見、小沢発言の信憑性を疑問視する意見、小沢氏の政治的道義的責任を追及する意見など百家争鳴である。

 傍目で見れば、識者の意見の中にはもろに民主党や自民党との距離感がでているようなものも見受けられるのは、それはそれで興味深い。

「政治資金規正法」制定の趣旨

 興味深い論点として、政治主導を目指す小沢氏と検察の官僚組織との対決がある。

 たしかに、小沢氏は疑いもなく民主党の実力者である。検察人事への政治的影響力を行使しないとも限らない。ただし、民主党にとっては、検察と戦っても、参議院選挙には何の得にもならない。

 それに、検察官僚は他の霞ヶ関官僚とは少し違う。基本的には法曹資格をもった有資格者だから、退職後、組織に天下りの世話になる心配はあまりない。となると、他の霞ヶ関官僚のように、天下り先を確保し続けるというインセンティブより、検察官僚は自らの「正義」を追求するという話になるだろう。もっとも、その場合でも最終的には「司法」によって「正義」が決められることになる。

 私は、検察が正義をどのように追求するかに関心をもっている。

 いわゆる政治とカネの問題というと、世間やマスコミでは贈収賄を念頭に置いている。しかし実際には、贈収賄事件は収賄側の職務権限との関係を立証するなど、立件が困難な場合が多い。特に政権交代をした場合、野党時代の政治家には職務権限がなく、カネを出す側は将来への投資(または現在への保険、つまり嫌がらせを避けるためのみかじめ料)になるわけで、立証が困難になる。

 となると、政治家の収支決算書を義務付けている政治資金規正法が、より重要になるだろう。

 政治資金規正法は1948年に制定された。「規正」とは広辞苑によれば「悪いところを正しく直すこと」であり、「おきて。きまり。また、規律を立てて制限すること」の「規制」ではない。法制定時の提案理由説明によれば、「政党、協会その他の團体、公職の候補者及び第三者の政治活動に伴う資金の收支を公の機関に報告させ、もつてこれらの資金の全貌を一般國民の前に公開する措置」とされ、政治腐敗防止法案という名称も考えられたが、政治資金規正法という名称になった。

 今では、政治事件というと贈収賄を連想してしまい、政治資金規正法は形式要件の法律だという印象である。しかし、単純収賄が懲役5年以下であるが、政治資金規正の虚偽記載も懲役5年以下で同じだ。

 政治資金規正法の制定当初の経緯を振り返ると、これこそ政治腐敗を防止する基本法であったことがわかる。

 今回の事件の流れをみていくと、今後、検察が政治とカネの問題に取り組む際に、政治資金規正法違反を形式犯とはとらえず、厳罰でのぞんでいく方向にあると考えられる。

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