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 明治四十一年四月、迪宮は、学習院に入学した。
早速、乃木から薫陶を受けた。
東宮御所から歩いて通う。
雨でも傘をささない・・・。

 乃木さんの話では、あの時分のことで相撲をとったりされて御洋服の膝や靴下に穴があくんですが、それをいちいち取り替えていたんです。ところが、ある日、お帰りになって「院長閣下が、着物の穴の開いているのを着ちゃいけないが、つぎの当たったのを着るのはちっとも恥じゃない、とおっしゃるから、穴の開いているのにつぎを当てろ」とおっしゃられて、私どもは穴のあいている御洋服や靴下につぎを当てました。(略)つぎを当てますと、「これでいいんだ。院長閣下がおっしゃったんだから、これでいいんだ」とおっしゃってました。

(鈴木孝「天皇・運命の誕生」)

 たかは、戦後、復興した後も、昭和天皇が女官につぎを当てさせた外套を着ていると聞いて、「ああ、乃木さんが一生懸命御教育遊ばしたことは、今でも陛下の中に生きていらっしゃるんだな」と思ったという。

以降 vol.9 へ。

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