100兆円をつぎ込む外為特会をしっかり事業仕分けすべし
G20をくぐり抜けて財務省は一息次いでいる

 我が国の通貨当局にとって、先週の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は冷や汗ものであっただろう。

 G20共同声明では、「経済の基礎的条件を反映し、より市場が決める為替相場制度に移行して、通貨安競争を回避」との文言になった。これは、10月11日付け本コラムで指摘した「国内対策として金融政策によって結果として通貨安になるのはいいが、為替介入によって通貨安にしてはいけない」と同じことである。

 つまり、例えば、先進国の変動相場制のように市場が決める為替相場であれば、その制度の下で国内対策として金融緩和をしても、その結果は市場で決まった為替相場なのだからいい。ところが、政府・通貨当局が介入すると、それは市場が決める為替相場だからいけないという話だ。

 「市場が決める」の英文は、determined であり、6月のトロント・サミットの時に合意された「市場指向」(oriented)より一段階進展した表現だった。それだけ、市場を歪めてまで通貨安を招く為替介入はG20で嫌われた。

 もちろん、これは中国を念頭としているのは間違いない。ところが、日本も一歩間違えば、為替介入国のレッテルを貼られるところだった。

 為替介入の結果は、外貨準備の結果となる。日本は最近はあまりやっていないが、世界二位で、先進国の中では為替介入国だ。 

 しかも、野田佳彦財務相は、為替介入を信じているというか、効果があると所管の財務省に丸め込められているというか、必死に日本の立場を説明した。

「(介入は)過度な変動を抑えるのが目的で、大規模かつ長期に水準を是正するものではない」と。

 おそらくこれは先進国からは奇異に映っただろう。というのは、日本はデフレなのだから、金融緩和する口実が山のようにあるに関わらず、先進国に比して十分な金融緩和を行わずに、為替介入という的外れな話をするものだから。ひょっとして、日本はここで途上国に恩を売りたいのかと邪推する者が出てきてもおかしくない。ところが、どうもそうした戦略的な話ではなく、単に為替介入の国内における権益を守りたいだけなのだと、すぐにわかったであろうが。

 これまでも本コラムで指摘したが、今の為替相場の円高は、日本が先進国に比較して不十分な金融緩和しか行われていないために、8~9割方は説明できる。ここで、「先進国に比較して」という意味は、日本ではせいぜい数兆円の量的緩和を「緩和」といっているが、先進国では、一桁、二桁違う量的緩和を「緩和」ということだ。また、為替介入の効果はもってせいぜい1,2週間の話だ。日本は、金融緩和をせずに、為替介入に理解を求めるとは、なんと国際会議をムダに使うのだろうか。

 本来であれば、先進国としてもう少し変動相場制のメリットを前面に押し出し、国際通貨基金(IMF)を通じる政策をリードするなどすれば、対途上国との関係でも有利な立ち位置だっただろう。

 米国が、途中で、米国国内雇用対策の本音をさらけ出し、経常収支対GDPの数値目標の話をしてきたので、一時目くらましをくらったようになったが、結局のところ、日本を含めて介入は許されない状況になった。

民主党若手が解き明かせなかった外為特会

 一方、国内では、日銀の「金融緩和」という言葉にマスコミはころりといって、円高不可避論が跋扈している。日本がデフレを放置すれば、円高になるのは、経済理論通りの話だ。円高やむなしというのは、現在の状態をそのままでもいいということである。

 今の失業率を長期均衡状態であるという論者もいる。これは、今の失業者が失業しているのは、主として本人の問題であり、景気のせいではないといっていることと同義だ。その状態ならば、もちろん景気対策も必要ないが、これは現状認識としては誤っている。需給ギャップが30兆円程度あり、それでデフレになって、失業者が増えているのが現状だ。

 貴重な国際会議の場を使ってまでも、財務相に擁護させた為替介入は、国内では事業仕分けの対象になりそうであったが、これも財務官僚の巻き返しで、処刑台送りを免れた。

 その国内向け言い訳がふるっている。為替介入は外為特会で行われているわけだが、今の外為特会を時価評価すると、債務超過であり、埋蔵金どころか、「埋蔵借金」の状態というのだ。

 蓮舫行政刷新相と菅直人総理が同時に、「埋蔵借金」と言い出したので、ピンときた。これは「埋蔵金」に期待しないでといっているわけであるが、同時に、外為特会はやるだけムダと財務省がいっているのである。

 かつて、民主党の若手議員は必死になって、外為特会を解き明かそうとした。しかしできなかったようだ。たしかに、今の時価で見れば含み損があるだろう。しかし、どうしてそうなったのかである。

 外為特会の役目は、為替の急激な変動を抑えることである。日本の場合、急激な円高を防ぐのであるから、介入すれば円安になるはずだ。そうであれば、基本的には、外為特会に損失はでないはずだ。ところが、損失があるとはどういうことなのか。

 蓮舫行政刷新相がいうように、事業仕分けは埋蔵金を掘り出すだけではなく、不要な事業かどうかを見極めることが重要だ。本来の役割であれば、外為特会は儲かっていいはずだ。それが損失というのであれば、そのメカニズムを徹底的に洗うことも事業仕分けの役割だろう。なにしろ、外為特会は、国民から借金をして外貨債を買っているわけだから、その損失は国民に対して説明してもらわなければいけない。借金をして、損失がでて、効果がないというのであれば、止めるのが筋であろう。

 為替介入には、経済理論からも、実態からも、長期的には効果がないことが明らかになっている。だから、変動相場制の先進国では、制度は形式的にあっても、残高はほとんどない。それなのに、日本はなぜ100兆円も借金してまでも続けているのか。

 こうした巨額の公的事業の陰には、しばしば役人の癒着や天下りが見られるが、そうした邪推を払拭するためにも、しっかりと事業仕分けを行う必要がある。
 

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら